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中小企業診断士の広場

中小企業診断士の仕事

理系大学内診断士現れる!

文:谷口 忠大

【第7回】世の中のことも考えつつ「やってみる」

コミュニティ・ベンチャーフォーラム2008

「いい弁護士さんや、いい税理士さんを見つけるにはどうしたらいいんですか?」

(うう、なんて率直で良い質問なんだ。)

フォーラム風景

H20年10月4日京都リサーチパークで開かれた「コミュニティ・ベンチャーフォーラム2008(注1)」のパネル討論「京都のコミュニティーベンチャーに期待されること」での質疑応答の一幕である。

珍しくも中小企業診断士らしい仕事(?)としてパネル討論の司会をお引き受けした。とはいえ、肩書きは相変わらず某R大学情報理工学部助教と中小企業診断士の併記なのでどちらの比重が大きい仕事なのかはよく分からない(注2)。

閑話休題。コミュニティビジネスとは地域コミュニティが抱える問題を「ビジネス」として解決して行こうというものである。よく似た言葉に社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)などがある。ボランティアでは世の中のためになることをやろうとしても、すぐに人手が尽きたり、資金が尽きたりする。自給できない活動は継続困難なのだ。コミュニティビジネスでは、しっかりビジネスにすることで「世のためになることに」に「持続可能性」を与えようというのだ。いわゆるひとつのゴーイングコンサーンを通した社会貢献。そのビジネスのところを、より尖ってベンチャーとしたのがコミュニティ・ベンチャーなのだ(注3)。そのパネル討論の司会を引き受ける事になった。

フォーラムが始まって最初の講演では同志社大学のY先生がコミュニティ・ベンチャーとは何かをわかりやすく解説。ビデオ映像をまじえながら上勝町の葉っぱビジネスやビッグイシュー、ベロタクシーの事例などを通して説明してくださった。

パネル討論では町屋再生に携わられているR社のNさんや、薪と炭の利用を促進し木と火のある暮らしを再びという活動をされているH社のNさんなど総勢五名がパネリストとして並んでくださった。パネルディスカッションということで、お題を出してはパネリストに振って意見を聞いていくのだが、初めに自社ビジネスの紹介などしていただいた後に、公共的な利益を目指すということで「行政とコミュニティビジネスはどう役割分担すべきか、どう協力すべきか」や、さらにこういうビジネスは非営利性だと認識される事もあるが「営利性はどのくらい求めるか?」といった、コミュニティビジネスのパネルっぽい議題でしばらく進めていった。サンデープロジェクトの田原総一朗ばりにとは行かなかったが、我ながらなかなかいい感じにパネルディスカッションが進んでいった。

しかし、会場と切り離されて進めるパネル・ディスカッションというのも多分聴衆にとってはツマラナイので、早めに会場にマイクを振ってみることにした。そのとき、いきなり飛び出したのが冒頭の質問だ。直球である。コミュニティビジネスもなにもあったもんじゃない(笑)。でも、それはすごく良いことだと、瞬間的に僕は思った。「ああ、そうか」と思ったのだ。現実はそうなのだ。つまり、まず動くことそこからビジネスが始まる(注4)。その為に何が必要か?逆にコミュニティビジネスとは何か?みたいな本に載っている事の様なことの方が「アタリマエ」なのかもしれない。

コミュニティ・ビジネスのパネルの議論の展開と先ほどの普通に「ビジネスを始めるため」の質問は食い違っているかというと、パネル討論自体、実はそうでもない方向に向っていった。ビジネスを始める気持ちは「○○したい!○○があったらみんな喜んでくれる!」という気持ちだ。実際、パネリストの中に自らの活動・事業を「コミュニティ・ビジネス」と捉えているパネリストなんて居なかった。実際、ビジネスを立ち上げる時に地域ニーズにマッチしないものは、生き残れない。それが公共財を喰い潰すビジネスであれば、それはコミュティビジネスとして失格だが、そうでないビジネスはそれ自体が世のため人のためになるのである。結局はコミュニティビジネスは小難しい言葉じゃない。自分の儲けに狂信的にならず「世の中のためを思って」とりあえずビジネスを起こす事なのだろう。パネリストのGさんがおっしゃっていたのだが「ベンチャーという言葉は『とりあえずやってみる』って意味らしい。だから私はたぶんベンチャー(笑)」。ベンチャービジネス論からすれば、これはものすごい極論であるが、確かにそういう思い切りも必要なのだ。大学発ベンチャーにこだわらず、地方自治体や行政が見えていない地域のニーズをくみ取り小さい規模でもお役所には無い機敏さで動く。そんな中小企業を育むダイナミズムこそ、今の京都、日本に求められている事なんだろう。私自身がそれにどう関わっていけるかは、まだまだ分からないが焦らず楽しく行きたいものだ。

 

中小企業診断士のフレームに囚われるな!

この連載の話を頂いて、光栄な反面、少し戸惑った。「僕は果たして一人の中小企業診断士として参考になる存在なのだろうか?」と。う~ん(悩む)。中小企業診断士の資格取得を決心してから2年半、診断士登録から1年、このお話は自分の中小企業診断士っぷりを再度捉え直すにいい機会なのかもしれない。そう思って書いたのが、この全七回分の連載なのだ。初めは五回のお話だったが、勢いに任せて随分増やしてしまった。

正直に言って、この一年は久しぶりに濃密な1年だった(注5)。この連載でも述べてきたように、私は経営相談や診断業務とよばれる類の「独立系診断士」の仕事を全然やっていない(注6)。「だからあなたは中小企業診断士の資格を生かしていないんじゃない?」という質問はいい質問だろう。私も随分そんな焦りにも似た自問自答に悩まされた。だがしかし!そんな疑問文に対する答えは今や完全に「NO!」だ。

人は誰しも社会の中で(注7)自分の業種、職種に縛られてその範囲内でしか行動できなくなりやすい。しかし、それは自分の職種・業種のフレームで自分をはめ込んで、専門性だけに閉じたI字型人間になろうとしてしまっているのだ。中小企業診断士という資格は「経営」という社会におけるリアルな主体性を持った視点をその人に注入することで、私達をこのフレームから外してくれるような気がする(注8)。しかし、その後に古い中小企業診断士のフレームにはまってしまっては窮屈なだけだ。「独立系診断士」としての仕事も色々あるだろう。しかし、中小企業診断士資格の大半をしめる「企業内診断士」はむしろ中小企業診断士のフレームにとらわれる事無く動いていくべきだ。あんまりフレームにとらわれると「やってみる」事が出来なくなってしまう(注9)。これからの中小企業診断士は私なんかより、より個性的な専門性との組み合わせを持って行くだろう。医者×診断士、小学校教諭×診断士、市役所職員×診断士、ケアマネージャ×診断士etc。etc。・・・...、想像すると「面白い☆」と正直思う。

谷口さん

中小企業診断士に独占業務はない。それは中小企業診断士がフレームにはめ込まれない自由度を持っている事を意味する。それは「強み」なのだ。この連載のお話をいただいたときに「中小企業診断士に望むことなども・・・...」というお話もあったが。正直、あんまりない。むしろ、中小企業診断士でない人の内より多くの人が、中小企業診断士を目指し経営の勉強をしてもらえたらと思う。それが日本を変えていくと、正直思う。いつでも事業をおこせる立場の視点で、世の中の問題をみていると、不思議と主体性が現れ出る。僕みたいな大学内診断士も、もっと増えれば良いと思う。きっといろいろ変わってくる。

多分、いい方に♪

注1:
http://www.astem.or.jp/edu/cvf/
注2:
よく考えると、「こういう仕事をする上では意外とこの二つは近いのかもしれないなぁ」と思ったり。
注3:
とはいえ、コミュニティ・ベンチャーとは通常呼ばない。やはり、コミュニティビジネスが普通の呼び方。試しにコミュニティ・ベンチャーでGoogle検索してみるとH21/2/10現在で二番にこのフォーラムのサイトが、四番目に私のブログが出てくる。ちなみに、子の会のタイトルを誰がつけたのか。私も知らない。
注4:
ちなみに、この質問にはこのフォーラムの準備に当っていたS社のH社長が見事に答えてくださった。京都的と言われるかもしれないが、それは「つながりで見つけていく」なのだ。ちなみに質問した女性は早速、このH社長と「つながられた」ので問題ないだろう。
注5:
同時に大学教員としても一年目だった事もあるが。
注6:
正直、企業の経営相談などもやっていきたい気持ちはあるが、それが無いと中小企業診断士でないという考え方は既に過去のものとなるべきだろう。
注7:
特に私達日本人は
注8:
それが第2回で述べたT字型人間の横棒に相当するのだが。
注9:
もっとも、フレームにとらわれなくても、企業内診断士には兼業禁止規定が強敵として立ちはだかる事が多いのだが......。

(おわり)