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中小企業診断士の仕事

理系大学内診断士現れる!

文:谷口 忠大

【第6回】京都の未来も見過ごせない!~京都・自転車街角セッション~

私は生まれも育ちも現住所も京都市民である。京都市民は往々にしてやたら京都にプライドを持っている。そして、自転車に乗っている。

「まちづくり」とモータリゼーションによる「まちつぶし」

自転車

中小企業診断士試験の試験範囲の中に「まちづくり」についてのものがある。試験範囲的には「まちづくり三法」を覚えたり、中小企業政策の中での商店街の支援や、都市計画の変遷などを学ぶのだが、つまりは中小企業診断士に期待されている事の一つに「まちづくり」、「界隈の活性化」があるのだろう。過去には商店街の高度化事業の受託は中小企業診断士の典型的なお仕事だったらしいし、現在進行形では地域資源を用いた中小企業の育成など「地域をもり立てていくべし」との方向性は日本国民が願ってはいる方向性のようなのだ(注1)。ちなみに、日本国民や国土交通省の思惑はさておき、私は少なくとも日本の未来の為にも地方経済の活性化を願っている。

さてさて、現在、どうして多くの街は賑わいを無くしているのだろうか?私はまだまだ若いが、それでも私の子供のころは道路でドッジボールをして遊んだし、路地は子供が鬼ごっこをする空間だった。学校が終われば急いで近所の商店街の駄菓子屋にビックリマンチョコを買いに行った。商店街とそこに棲まう正確の悪いオバチャンは小学生の会話に欠かせない存在である。完全に昭和の世界である。ところが、現在、その商店街はガレージとシャッター街に変わり、地元スーパーは建て売り住戸になった。ドッジボールをしている子供など見ない。よく分かっていない大人はこういう。「最近の子はゲームばっかりして外で遊ばない。」この無理解は哀しいし、現実はそんなに簡単じゃない。外で遊べないのだ。なぜなら、街路は既にクルマのためのものだから。

三浦展は地方が「ファスト風土化」しているという。半分ダジャレだが、どこに行ってもあるファーストフードのように、地方に個性が無くなり浅はかな消費社会が形成されているのだ。その根本にあるのがモータリゼーションである。自動車社会は地球温暖化問題への負の貢献もさることながら、空間効率が悪く、また、長距離移動をものともしないので、都市の低密度化を招き、それが街の郊外化に拍車をかける。少年犯罪の発生とも関係があるという話もある。自動車依存症の社会からの脱却はオランダやドイツなどヨーロッパ各国は既に動き出しているが、日本は後進国であるとさえいわれる。

では、もし自動車から脱却せよというのなら、日本人は一体何に乗れというのか?それは人間が生み出した驚異のテクノロジーの産物、そう「自転車」であるッ(注2)!!

京都には自転車が多い。首都圏や他の主要都市に比べて街の密度が高いのが京都の特性の一つだった。また、景観規制により高層マンションや高層ビルの建設が禁じられているために、独特の都市を形成している。また、景観保護された山々に囲まれた盆地であることが、京都市街地の必要以上の拡大、低密度化を防いでいる。京都市は自転車が便利なコンパクトな百万人都市なのである。しかし、自転車が便利なのだが、走りやすい道があるかと言えばそうでもなく、駐輪場も少ないので撤去されてしまうリスクもある。自転車ユーザは自動車にのらず地球環境にも都市にも優しい自転車に乗っているのに、道路の中でいじめられるという問題に晒されているのだ。

京都・自転車街角セッション

セッション風景

京都の自転車利用を改善するため、自転車ユーザや市職員とのディスカッションを通して問題点を共有し解決策を探していこうと「京都・自転車街角セッション」を開催した。これはH20年の6月から12月にかけて京都市役所前の地下街ZEST御池にて全7回に渡って開催した自転車にネタを限った公開型の市民会議である(注3)。仕掛け人は京都市の副市長Y氏なのだが、私もコアメンバーとして加わった(注4)。毎回、コアメンバーを中心に二名ずつプレゼンターがZEST御池の大画面を用いて30分~40分のプレゼンテーションを行い、それを話題の中心にして議論を交わすというものだ。トピックは都心の違法駐輪問題や、走行空間の問題、自転車とファッションについてや、駐輪場問題、はたまた観光利用の促進など多岐に渡っていった。決して今まで交通の主役とは見てもらえなかったがために、まともな制度整備、走行環境整備もしてもらえなかった自転車がどれだけの苦境に立たされているのかが次第と明らかになり、そして共有されていった。詳細を書き出すと、それだけで一つの文章になってしまうので今回は詳細は省くが、議論の結果は早晩、京都市長に対する提言として取りまとめる方向である。

さてさて、ショッピング街の真ん中での公開セッションで難しいのは、やってきた聴衆をどれだけ巻き込むかという点だ。いわばストリートライブ。聴衆にマイクを渡してしまうと、何が起きるのか本当に分からないし、最初から最後まで居てもらえるとは限らないので、議論の文脈を共有するのが難しい。ホールなどでやる公開討論会やパネルディスカッションでは最初から最後まで聴衆が聞いていることを前提に質疑応答の時間を設けることができるが、路上でやる公開討論会はその前提が崩れるためにナカナカ難しい面があるのだ(注5)。

「まちづくり」の問題を考えるときに都市の血管としての交通は重要な問題である。個別商店のミクロな経営は都市のマクロな構造の影響をうけてしまう。自動車の通行を許してしまい、国道の迂回路にされてしまった商店街の行く末など明々白々だろう。まちが変化していくとき、その主要なダイナミクスは行政のトップダウンな都市計画ではなく、各経営体や行動主体の投資意思決定である。これによりシャッター通りが生まれ、店舗はコインパーキングに変わっていく。つまり、町並みは一人一人の「経営」の連鎖で変化していくのだ。経営目線に立つ中小企業診断士の「視点」は理想論にとどまらず現実解を見いだすステップにも生きていくのだ。

自転車街角セッション自体は終わったが、京都の自転車政策はこれからである。実に喫緊の課題だから、今回御縁をいただいたコアメンバーの皆さんと共に進んでいきたいと思う(注6)。

注1:
地方=中小企業という図式も余りに偏見的だとは思うが・・。大都市の大企業による地方の収奪という構造は現代社会の大きな問題として無視できない。
注2:
自動車より自転車の方が新しい発明だと言うことは意外に知られていない。
注3:
http://d.hatena.ne.jp/chari-kyoto/
注4:
開催にあたっては京都市自転車政策課の皆様の多大なご支援をいただいた。
注5:
会場にマイクを渡すと、行政に対して一方的に言いたい要求だけを喋って、議論に参加せぬままプリプリと帰って行かれて、その場の空気が白けてしまうというような事もあった。ファシリテーション、参加型イベントのデザインは難しいものである。
注6:
京都市は「歩くまち京都推進室」を設け、歩行者優先のまちづくりを目指し出した。私も審議会の末席に加えていただいているが、問題は多く、また、自転車の活用を如何に位置づけるかについての理解はまだまだ乏しい。正念場は続く。

(つづく)