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中小企業診断士の仕事

理系大学内診断士現れる!

文:谷口 忠大

【第4回】起業は身近で起こるものである(1)

憧れのシリコンバレー

「日本の大学とアメリカの大学の違いは何だろう?」

シリコンバレー

いや、あまり漠然としすぎた質問は良くない。話を絞ろう。日本の大学の閉鎖性や国際競争力の低さを指摘するとき、アメリカの大学が比較対象として挙げられる。とはいえ、正直アメリカの大学もピンキリのはずである。理工系、情報系の人間が「アメリカの大学」というときは無意識にMIT(注1)、UCLA(注2)、スタンフォード大学などをイメージしている。他にもカーネギーメロン大学など国際的にすごい大学はあるが、情報系の学生・教員のハートを掴むのはやはり、シリコンバレーの震源地スタンフォード大学であろう(注3)。梅田の著書「シリコンバレー精神」(注4)などにもシリコンバレーという土地の持つチャレンジ精神、ポジティブさは良く物語られている。西海岸のシリコンバレーはグーグルやヒューレット・パッカードなど多くのベンチャー企業を生み出した場所であるが、そのすぐ傍にあるのがスタンフォード大学である。

梅田によればスタンフォード大学とシリコンバレーの間にあるのは「産学協同」といった生やさしいものではなく、「産学一体」とでも言うべき混沌とした関係である。日本の企業が大学と連携をするときに、企業はその文化や目的の違いに面くらい辟易とする事があるという。大学に壁があるのである。その心理的な壁の前に企業はイライラするし、大学にとっても企業側が分ってくれない点にイライラを募らせるのだ。その一方で、スタンフォード大学には壁がない。......というか、実際に物理的に壁が無いらしいのである。スタンフォード大学は連続的に街と繋がっているのだ。学生が起業したいときは、どのどこからどこまでがキャンパスかわからない街の一角に小さな部屋を借りて開発をスタートするという。その一体っぷりがシリコンバレーの原動力なのだろう。

さてさて、日本では学生や大学教員、研究者が起業することは、まだまだ少ない。大学生、大学院生の進路ももっぱら「大企業への就職」が頂点である。教員は大学以外の世界を普通あんまり知らないし、会計もわからない。どれだけの教員がビジネスプランや財務諸表を見ながら学生の考えに耳を傾けられるのだろうか。わからないからとりあえず「世の中そんなに甘くない。」「それ以前に卒業研究の○○は進んでるの?そんなことも出来ない人間が起業なんて出来るわけ無いだろ。」などと火消しに躍起になる(注5)。ここで、「資金計画は大丈夫なのか?」「法律的にはそのビジネスモデルは大丈夫?」「競争優位を何年維持できる?」などと尋ねれば学生も「おっ」と思うはずだ。たぶん、そう返されてしまうと、学生や研究者の多くは現実に立ち返り「勉強しなければ!」と思うだろう。とにもかくにも、日本の大学にはそういう人材も居なければ、風土もない(注6)。シリコンバレーのように技術発ベンチャーが大学から出てくるためには、「起業は自然である」「起業は身近である」風土をつくる事が大切だ。起業家が少ない日本のマクロな情勢を嘆いても仕方ない。だが、かくいう私も、起業を一時志したが結局達成していない経緯を持つので、これまた偉そうな事は言えない。学生のアントレプレナーシップ精神をとやかく言う前に、まずは教員だ。大学教員のどれだけが起業を身近におもっているだろうか?学生とて身近な大人の背中を見て育つ。ええいッ!「先ず隗より始めよ」だ!

日本の通常の大学職員・教員は学生の就職先として大企業を想定し、就職担当は大企業の推薦をもらったりとか、つながりを保ったりとか、学生を「立派な」大企業に送り込むために努力するだろう。しかし、大学内中小企業診断士は違う。まずは、街の起業家達と繋がり、ボトムアップな経済ダイナミクスに触れ続けることから始めるのである。

注1:
マサチューセッツ工科大学
注2:
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
注3:
大いに著者の偏見であるが。
注4:
梅田望夫「シリコンバレー精神 ~グーグルを生むビジネス風土~」ちくま文庫
注5:
まぁ、リスクのある道を勧めて失敗したら「責任問題になる」などと言うのだが、大卒の学生は成人でありその人生選択は本人が責を負うべきだという事ぐらい日本の常識としてほしいものだが。
注6:
ちなみに、私は上記質問をかえす「変な教員」である。

(つづく)