経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

中小企業診断士の仕事

地域に活力を 若手診断士が駆け巡る

取材:村橋保春

【第1回】私の一日 地域を駆け巡る

取材日:2009年1月30日

地域発展の基盤は産業振興にあります。地域生活をより豊かにするためには、まちづくりが大切です。新産業都市に指定され大きく成長した大分市において中小企業診断士として活躍されている、大分商工会議所の穴井 壯志さんにお話を伺いました。

穴井さんの仕事 ―地域に入り込む― 

― 穴井さんは大分商工会議所の中で、若手の中小企業診断士として、企業経営者の方々に相談指導をされています。まずは、穴井さんのご活躍のご様子をお聞かせいただけますか。

穴井さん

まず、私も今はやりのアラフォーということで、果たして若手を名乗っていいのかと少し感じます。ただし、これからお話しするとおり、私がお相手するのは企業経営者や経営陣ですので、私よりお年が上の先輩の方々が中心となりますから、一応若手ということにさせていただきます。

私は、大分商工会議所で経営指導員として働いています。経営支援の業務が中心です。その中でも特に金融、資金繰りに関わるご相談とその対応業務に追われる毎日といえます。

相談をいただくと、まずはご相談いただいた会社に出向きます。製造であったり、販売であったり、経営や企業活動の現場を見ることがもっとも大切と考えています。ご相談者のお話を理解することはもちろんですが、日々現場にいると見落としがちのことがあります。小さな変化は変化の渦中にいると感じないことがあります。まず現場に出向いて、しっかりと現状を自分自身の目で確認することが大切だと思います。

最近、経営環境が非常に厳しくなってきました。金融相談をいただく件数も割合も多くなりました。金融相談として、すでに経営上かなり厳しい状況に至っている内容もあります。そうしたときには、倒産避難を念頭にご相談者とともに、危機の脱し方を考えます。

もちろん、前向きの指導をさせていただくこともあります。金融相談をいただくうえで、会社の財務内容に関わるご説明を受けます。そうすると、新製品開発など新たな発展の可能性が見えてくる場合もあります。そんなときには、次の投資についていっしょに考えます。経営革新です。会社に元気を持ってもらうことも、私たちの大切な役割です。

経営革新はそうした方向性の指導にとどまりません。商工会議所のネットワークには、弁理士、弁護士、会計士などのしっかりしたノウハウスキルを提供できるスタッフを用意しており、特許相談や法務相談などにも対応し、経営革新を具体的な事業実施へと後押しします。

このように、私の業務はいろんな内容を伴っており、典型的な一日の仕事といったものがありません。ご相談者に役立つことを目指して活動しており、あっという間に一日が終了する、そんな毎日を送っています。

― 大分市は昭和39年に新産業都市に指定され、大企業の誘致に成功しています。地元企業にとって恵まれた環境といえますね。

確かに、企業誘致に伴い雇用環境は好転しました。一方地元企業にとって下請け業務は増えますが、自立した会社として育っていない場合も見受けられます。地域産業の振興は、地元企業の自立、成長を欠くことができません。

恵まれた経営環境は将来にわたって続くことはないと考えます。大分市らしい、独自の産業発展のあり方を今後とも考えていきたいと思います。

― 穴井さんのお仕事には多くの思い出があると思います。経営のヒントにつながるエピソードを1つ聞かせていただけますか。

大分中心市街地

我々の仕事は「経営ヨロズ相談所」です。いろんな相談を通じて、その事業所の長所、短所が見えます。日々の業務に追われ、しょうがないのかもしれませんが、経営者は自分ひとりで問題解決しようとして、見えない落とし穴はもちろん、チャンスも見逃していることが多いですね。先ほども申しましたように、資金繰りの相談から経営革新計画に繋がることは、そう珍しいことではありません。マイナスからプラスへの大転換ですが、社長さんや役員の皆さんとの、ちょっとした話し合いの中から、改善や飛躍のヒントがどんどん出てきます。企業経営を客観的に見られる方が身近にいるといいですね。顧問の税理士や、銀行の担当者などにも、事業についてよく話をしてみると良いと思います。

大分商工会議所の話

― 穴井さんが所属されている大分商工会議所に関して、どのような活動をされているかお教えください。その中で、中小企業相談部の業務に関してもお話を伺いたいと思います。

<大分商工会議所の概要>

商工会議所は、明治11年に東京は渋沢栄一、大阪は五代友厚など、実業界の実力者たちによって設立されました。当時は文明開化、殖産興業を旗印に国の歩みを進めはじめたころで、諸外国との不平等条約改正を求める声が国内に起こりはじめていました。伊藤博文らが折衝に当たる中、英国公使パークスから「国会も商工会議所もない日本が世論をまとめることなどできない」と言われたことから、日本経済発展のための公的組織として官民協働のもと設立されたのが始まりと聞いています。(http://www.oita-cci.or.jp/

現在は全国に516か所設けられており、そのなかのひとつが大分商工会議所です。

商工業者の会員組織による地域総合経済団体として昭和4年10月に創立されて以来、地元経済の振興発展のため活動しています。

<中小企業相談部の業務>

経営のホームドクターというべき経営指導員が、経営または技術の改善発達を支援する「経営改善普及事業」として小規模事業者の金融、税務、労働、取引など経営上の諸問題解決を支援しています。また、大分商工会議所では、法律や特許などについて、それぞれ弁護士や弁理士などが無料で対応する相談窓口を設置しているほか、国の地域力連携拠点として、幅広い分野から専門家の派遣も行っています。

(つづく)

穴井 壯志:大分商工会議所中小企業相談部 専門指導課 課長補佐

穴井 壯志(あない つよし)/1964年生まれ。1989年大分商工会議所入所。90年大分地域商業近代化ローリング事業事務局担当。92年~93年テキサス州オースティン広域商業会議所にてインターンシップ。衰退するダウンタウンを活性化するためのLRT(ライトレール)導入事業などを研修。2006年より中心市街地活性化を担当し、行政をはじめ、各関係機関と活性化基本計画策定のための事務レベル協議を開始。2008年4月大分市中心市街地活性化協議会事務局。商都復活に向けたまちなか開業や個店の魅力アップに日々取り組んでいる。