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中小企業診断士の仕事

林業に専門特化し、日本の林業再生に取り組む日々

レポート:坪野 克彦(中小企業診断士)

【第1回】なぜ、いま、林業再生なのか

私が、経営支援専門家、あるいは中小企業診断士として、林業に関わってから約5年が過ぎようとしています。以前にもこのページでレポートしていただいたように、そのきっかけは、1回の講演でした。その講演が縁で私は林業再生という国家的な事業に関わることになりました。
  今回は、現在、私が林業経営支援というカテゴリーの中で、どういった仕事を具体的にやっているのか、その事例紹介をしたいと思っています。

日本の森林の概況

我が国の国土面積の67%は森林です。先進国の中ではフィンランドの68%と並んでもっとも森林率が高くなっています。そして、その森林面積の約4割に相当する約1,000万haが人工林です。人工林とは1950年代から始まった「拡大造林」によって植林されたスギ、ヒノキなどの森林のことです。これが、今、40年~50年生に育ってきており収穫期を迎えているのです。これらの立木(山に生育している樹木)の総蓄積量は、40億立方メートルで、毎年9,000万立方メートル成長しているといわれています。

一方、日本の木材需要量は、年間1億2,000万立方メートルですが、その80%は外国産材でまかなわれていて、国産材はわずかに20%しか利用されていません。ヨーロッパの林業先進国では、成長量の範囲で木材需要をまかなっていて、森林の多面的機能(水土保全機能、防災機能、保健・文化機能等)を持続的に維持していくという仕組みが確立していますが、日本の場合は国産材の利用率が著しく低いために適正な森林整備が進まず、立木が森林内に密生して、前述の多面的機能が損なわれて国民資産ともいえる森林が崩壊の危機を迎えています。

森林整備の担い手である森林組合の経営支援

我が国の森林は、国有林(31%)、公有林(都道府県・市町村有林等、11%)、私有林(58%)で構成されていて、私有林が6割を占めます。そして、もっとも整備が遅れているのがこの私有林(民有林)です。私有林は約1,444万haあって、所有者は102万人ほどいます。小規模所有者が多いのが特徴です。

私が現在関わっているのが、この私有林の森林整備に関係する案件です。かつては、所有者自身が森林整備を行い、山から木材を伐りだして市場や製材所等に販売し、生活の糧を得ていました。しかし、木材の価格(材価という)は、昭和55年をピークに下がり続け、当時、たとえばスギの中丸太が、38,700円/立方メートルだったのが、現在では13,000円と3分の1程度になっており、コストが合わないので林業で生計を立てる所有者はほとんどいません。

こういった所有者の代わりに、森林整備をしていく「担い手」として期待をされているのが、森林組合です。森林組合は全国に720組合くらいあります。1995年には1,492組合あったのですが、町村合併と平行して森林組合の合併も進み、10年余りで半分になってしまいました。

私が林業と関わって最初に取り組んだのが、森林組合の経営診断でした。現在でも年間5件~10件くらいの経営診断と改善提案などを行っています。工程は通常2泊3日で、関係者ヒアリングと林産や加工等の現場視察を行います。診断の結果を1ヵ月くらいでまとめて報告書を作成した上で、関係者を集めて報告会を実施しています。これをせずに報告書だけ提出しても効果がないことを経験的に知っているからです。

実は、従来、森林組合の経営診断には、中小企業診断士も多く関わっています。都道府県庁などが予算をつけて、合併などの際に経営診断を実施しました。ただ、従来の経営診断は、財務諸表の計数を分析しただけの「数値分析」+αに過ぎず、専門的知識をもって現場を精査したり、関係者にヒアリングしない「踏み込みの浅い内容」だったので、林業関係者の評価は低かったようです。

私の場合は、数値分析は最低限にして、リーダーシップや組織力、経営資源のバランス、各事業のポートフォリオの妥当性等に主眼を置いた経営診断を行っています。森林整備の現場や加工などの現場にも足を運んで、そこで使用されている機械や作業システム等にも目配りをし、現場にいる作業班の人にも話を聞きます。また、ヒアリングについては、経営トップの組合長や理事、参事等の管理職、課長などの中間管理職、一般職員、作業班、組合員(森林所有者)に個別にヒアリングをして、向いている方向やモチベーションの持ち方等をチェックします。その上で、「組合員への奉仕」という森林組合の原点に立脚して、しかも「経営体」として向かうべき経営の方向性というものを示した経営診断報告書を作成するのです。この仕事は私の林業経営支援におけるベーシックな部分と言えるでしょう。

(つづく)