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中小企業診断士の仕事

「中小企業経営診断シンポジウム」プロジェクトチーム奮戦記

レポート:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第3回】地域資源活用と中小企業診断士への期待

いよいよシンポジウムの開催

会長挨拶

平成19年11月16日(金)の午前10時、平成19年度「中小企業経営診断シンポジウム」がスタートしました。メイン会場に300ほど用意した席は、立ち見が出たために、後から追加したほどでした。かつてない熱気の中で、司会を担当した高重和枝氏(中小企業診断士)の開会のアナウンスによって、シンポジウムがスタートしました。まずは、米村紀幸・中小企業診断協会会長の開催挨拶が行われました。次に、長尾尚人・中小企業庁経営支援部長より来賓挨拶を頂戴しました。長尾部長様からは、中小企業診断士が今求められている役割についてのお話がありました。

大原一郎氏の基調講演に学ぶ

続いて、本日のシンポジウムの目玉であるフードコーディネーター・大原一郎氏による「地域資源を『宝物』にする秘訣」と題した基調講演が始まりました。大原氏は、地域資源を活用した地域活性化に1993年から取り組み、愛媛県四国中央市新宮町のみで販売される「霧の森大福」の商品開発や、高知県窪川町「あぐり窪川」の豚まんの商品開発、いちご生産農家によるケーキショップ高知県中土佐町の「風工房」の立ち上げ等の実績を上げています。「霧の森大福」は、インターネット通販サイトの楽天で瞬間お取り寄せNO.1商品となったり、テレビでも再三取り上げられているヒット商品です。基調講演では、この3事例について、地域資源の活用の経緯や方法について紹介されました。

大原一郎氏

基調講演によってわかったのですが、大原氏は最初から地域や行政から地域資源の企画・商品化を依頼されていたわけではありません。3つの事例とも最初は、新たな施設を作るにともない、その施設内のレストランのメニュー作りをしてほしいと依頼されただけでした。しかし、大原氏はメニュー提案をきっかけに、その施設が抱える本質的な問題点がどこにあるのかを指摘するとともに、どのようにすればその問題点を解決できるのかを提案することで、最終的にはその施設の集客力を高める商品開発を受託しているのです。大原氏はこう言っています。「依頼主の望んでいることの安易さを否定する。そこから問題の本質的な解決につながるのだ。」依頼されたことを言われたとおりに遂行することに満足しない。仕事は自らいくらでも広げられる。そんな大原氏の仕事に対する姿勢を、講演から学ぶことができました。

もう1つ大原氏の講演から学んだことは、自らのやり方に信念を持つことの大切さです。大原氏の商品開発のポイントは、次のとおりです。

  • 平均点の物づくりでは生き残れない。
  • 多数派より少数派の意見に耳を傾ける。
  • マニアを作れば、ファン化は進む。

大原氏はこの信念に基づき商品開発に取り組みます。その結果、何が起こるかといいますと、開発した商品の試食会でマイナスの意見が大半を占めるそうです。そして、その意見を聞いた依頼主である行政関係者は不安になります。「大原さん、ちょっと極端すぎるのでは」と。その時に、多数派や行政のプレッシャーに負けない自信を持ち続けられるかどうかで、商品開発の成否は決まると大原氏は断言します。そこで、妥協して万人からそこそこの評価を得られる商品に転換した瞬間、その商品は死んでしまうそうです。なぜならば、万人からそこそこの評価を得られる商品づくりは、大手企業が最も得意とするところだからです。同じ土俵で大企業と戦って、地方の一施設が勝てるはずがないのです。行政は、行政が持っていない民間の感覚を期待しています。だからこそ、途中で不安になるのは当たり前だと言います。その不安に対してノーが言えるか、そこに大原氏はプロとしての価値観を置いているように感じました。

パネルディスカッションで中小企業診断士への期待を知る

基調講演の後は、「地域資源パワーアップ!地域発提案」と題したパネルディスカッションが行われました。コーディネーターおよびパネラーは、次のとおりです。

■コーディネーター 
・(株)クリエイティブ・ワイズ代表取締役  三宅 曜子 氏
■パネラー
・中小企業庁経営支援課長   岸本 吉生 氏
・フードコーディネーター      大原 一郎 氏
・岡本亀太郎本店専務取締役  岡本 良知 氏
・中小企業診断士・地域中小企業サポーター  平野 陽子 氏

三宅コーディネーターの進行の下、岸本経営支援課長から地域資源活用プログラムの概要や取り組み状況についてご説明いただきました。また、地域資源活用において中小企業診断士には、後ろから押すのではなく中小企業者と並んで走ってほしい、360万社ある中小企業全体を中小企業庁が見ることは不可能であるので、企業の前向きな取り組みをフィードバックしてほしい、といったお話がありました。

続いて、地域資源活用に取り組む中小企業者の代表として岡本氏から、自社商品である保命酒の紹介と、その保命酒が地域資源としての認定を受けるまでの過程についてご紹介いただきました。日本にはまだまだ認定されていない地域資源はたくさんあり、中小企業診断士にはその掘り起こしを期待したいとのことでした。

基調講演をされた大原氏には、現在感じておられる地域資源活用における課題についてお話ししていただきました。それは、生産者、加工者、物流者の3者をつなぐ情報網がないために、大量の農産物が捨てられているという事実でした。日本の食品自給率を上げるためにも、この3者をつなぐコーディネーターの存在やネットワークの仕組みが求められているとのことです。

パネルディスカッション

中小企業診断士の代表として参加していただいた平野氏には、現在平野氏が地域社会の輪づくりにどのように関わっておられるかをご紹介していただきました。特に地域資源活用において、何社かで連携して取り組むことの有効性については、参考になるお話でした。

コーディネーターとして参加された三宅氏も、多くの地域資源活用支援を実践している専門家のお一人です。山陰地域を中心に活動されることで関わっている地域資源の紹介と、地域資源活用におけるマーケティングの重要性とその実践事例についてお話をいただきました。

シンポジウムの参加者である中小企業診断士の方々は、中小企業診断士以外の地域資源活用支援専門家がどのような活動を行っているのか、その姿を中小企業者や行政はどのように見ているのかを知ることができたのではないでしょうか。

(つづく)