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中小企業診断士としての創業支援とのかかわり方とは

レポート:大森 啓司(中小企業診断士)

【第2回】創業者のタイプとその対応策

創業予備軍3つのタイプ

中小企業診断士としての活動を始めて、来年で10年になろうとしています。当初、創業支援は自分にとっては大きな柱になると思っていなかったのですが、気がついたら年間で20件弱のお手伝いをさせていただき、毎年積み重なるその経験は私にとっては何にも代えがたいものになってきたと思っています。

大森啓司さん

創業塾・セミナー等の参加者の年齢層を見ますと、若い世代では学生ベンチャー(最年少は17歳、高校2年生です)、女性起業家、年配ですとシルバー人材センターさん(最高は71歳の方)主催とまさに広範囲です。起業の内容を見ますと、ターゲットや業種などさまざまな切り口からご支援をさせていただきました。例えばコミュニティビジネスや飲食店に特化した創業支援などもあります。

創業支援は正直とっても難しいです。なぜならば、本当にさまざまなタイプの方がこられるからです。その多様な参加者の皆さんに同等に講義の内容やグループワークに興味をもってもらうのは至難の技です。まず、創業される方にはどんなタイプがあるのかを見ていきます。

【全く勉強モードの方】

具体的に何をしたいのかが明確でない方。参加者の中では1~2割程度の方がこの分野にはいります。創業に向けての基本的な手順が知りたいもしくは、基本的な知識を得たいという方です。学生さんもしくは定年を迎えた年配の方に多いパターンです。

こういうタイプは実は意外とやりにくいと思っています。なぜならば創業は他人事(?)という姿勢がどこかにあるからです。

「勉強」目的で参加していただくのはありがたいのですが、批判的であったり、何も意見を言わないという方もおられます。そして創業塾の中でだんだんと欠席されるのが(来なくなってしまうのが)一番多いタイプでもあります。

【事業の概要がぼや~んとしている方】

やりたいことは決まっているが、どう進めたらよいのかがわからない方。創業支援セミナーの中で最も参加者の多いパターンです。勉強モードの方に比べますと具体的になっています。例えば自分の得意とする分野(例えばマーケティングや商品知識)については非常に詳細に検討しお話が始まると止まらず、創業への熱意はひしひしと感じられます。しかし、ご自身の苦手な分野の話(例えば税金や数値計画)になりますと明確なスタンスはありません。

本人の課題もしくは留意すべき点について気がついていただければ、次の具体的な一歩が踏み出せるものと考えます。

【事業が具体的で創業に向けての課題も明確になっている方】

すでに事業が始まる直前で資金調達に苦慮している、もしくはすでに創業されている方で顧客がいなくて(売り上げが当初の予定したほど上がらなくて)苦労をしているなど課題が明確になっている方。少しですが、こういう方もそれなりにこられます。例を挙げますと業績20年、3つの会社を経営している社長さんが身分を隠して来られました。これには驚きました。何を目的に来られたのか? その真意をお聞きしますと、自分の創業時の気持ちをもう一度見つめなおしてみたいとのことです。自己紹介の際にも全く自分の立場をお話しされずに人の話をだまって聞かれていました。

創業とは奥の深いものです。こういう方に接する、その重みに身がひきしまる思いがします。

3つのタイプ全ての満足度を高める工夫(セミナー企画の成功例)

残念ながら、これら3つのタイプの受講生を同等に満足させる画期的なセミナーはありません。しかし、この3つのタイプの人たちを満足させるために以下のような企画を試み、うまくいったと思っています。

    現在、某商工会議所ではグループ別に身近な題材(ケーキ屋さんやパン屋さん)で事業計画を作成してもらうステップを学んでいただくようにしています。
  • 『まず、グループが有している経営資源を確認する』
     ある人は数字に強い、ある人はアイデアを出すのが好きな人。
  • 『自己資金は抽選で300万から4,000万円まで』
     一人一枚のカードを取ります。カードは100万円から3,000万円まであり、合計金額が自己資金です。セミナーが一気に盛り上がる瞬間でもあります。
  • 『物件は実際の店舗情報を不動産屋さんから収集しておく』
     「駅前商店型」「ロードサイド型」「商業集積型」の3つの物件及びその近隣の写真などの情報を"大森不動産"が提供します。
    工事中の写真 貸店舗の写真
  • 『近隣の人口情報や競合店情報も事前に準備をしておく』
     これも事前に市役所から、もしくはインターネットから情報収集しておき、市場分析及び売上予測の基礎情報として提供します。
  • 『店舗コンセプトから収支計画まで途中に講義を交えながら』
     グループでまとめていきます。
     特に収支計画はグループに1台PCを用意し、表計算ソフトで借入金の利息計算や減価償却を具体的に行ってもらい、返済可能な計画、市場調査から売上の実現可能な計画作りに注力してもらいます。

これらの条件を随時提示しながら、最後は魅力ある事業計画をまとめ発表をしていただき、最優秀チームを決定します。

今までの経験から申しまして、勉強モードの方と、事業の概要がぼやっとしている方には、楽しんでいただけます。 大森啓司さま

この企画の課題は「事業が具体的な方」には少し物足りないかもしれません。「ケーキ屋の事業計画を検討しにきたのではない。私は自分の計画をブラッシュアップして、実現性を高めるために来たのだ」と言う方も当然おられます。

実はこの企画、ケーキ屋の事業計画を作成する合間に、自分の事業計画の発表をしたい人を募っています。創業塾の初日に発表。塾が開催している期間内に2~3度個別相談を行いブラッシュアップを図っていきます。

そして、最終日にはもう一度発表していただき、個別相談で何が良くなったか、何が気づいたかを発表してもらうようにしています。これにより、3つのパターンの受講生全ての満足度の向上を図るようにしています。

(つづく)