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中小企業診断士の仕事

ライフワークとして林業経営支援に取り組む

取材・構成:宮崎 洋一

【第3回】林業専門の新会社設立への想い

高まる経営支援のニーズに対応

坪野克彦さん

前回お話しした「林業再生」という国策の大きな流れのなかで、『森林組合改革』というスキームが進展しており、現在、林業の経営支援のニーズは高まっています。林野庁にも県庁にも経営診断や研修の予算が設定されていますし、都道府県ごとの森林組合連合会も同様です。もちろん森林組合自体が、単体で依頼してくることもあります。だいたい2泊3日で全職員のヒアリング等を行い、経営診断を実施する。そういう仕事が最近増えてきています。また、組合長などの幹部に対する意識変革のための講演もよく頼まれるようになりました。

また、国の補助金とか予算では足りないので、民間企業のCSR事業として、民間企業と林業を結んで環境保護の立場で森林整備に事業協力していただく。たとえば、神戸の株式会社ノーリツという住宅設備の大手メーカーに協力してもらって丹波篠山のほうで森林整備を進めているというような事業も、わたしがコーディネーターとなってやっています。

このような大手企業の協力もいただいて、国民の共有資産ということで位置付けられている森林を守っていこうというようなことも、中小企業診断士として仕掛けてやっているのです。

診断士としてやりがいのある社会的貢献度が高い仕事

林業の経営支援というのは、今まで経営というような概念があまりなかったところに経営というものを持ち込んで、それを馴染ませていくことからはじめて、結果として経営の健全化や利益の創出といった成果を上げていく。そのことにおいて非常にやりがいがあるし、支援効果が大きい分野です。

その背景として危機感が強い、ということがいえます。赤字になった組合は組合員に対するサービスができません。職員さんに人件費をきちんと満足に払うこともできなくなる。赤字に何とか歯止めをかけて黒字化していかなければならない、という業界としての危機感はかなり強いのです。

ただし、黒字化のために何をしてもいいのではなく、森林組合という社会的使命に基づいた事業でないといけないわけですから、その中で適正な利益を創出するという、そういう仕組みづくりを提案して支援していくのが中小企業診断士の仕事なのです。

わたしは、中小企業診断士は「社会貢献業」だと思っているのですが、林業経営の支援もやはりそうした意味合いの強い分野だといえます。

社会貢献の意味合いの強い、もう1つの分野として「中小企業の経営再生支援」があります。既存の企業の雇用を守ったり、組織を守ったりする、たいへん社会的な貢献度が高い仕事です。坪野克彦さん

それとはまた違う意味で、林業再生、あるいは林業経営支援というのは、社会的貢献度が高い仕事です。地域振興はもちろん、環境保護や国土保全など非常に大きな意味を持っています。

こういうことから、わたしの現在の仕事は、この2つ「中小企業の経営再生支援」と「林業経営支援」の両輪を中心に動いています。社会的貢献度の高い仕事をやっていくと、中小企業診断士としての地位や評価も上がっていきます。それを実感として持っているところです。

今後の展開――林業専門の新会社設立へ

今後の展開としては、まず、林業専門のコンサルティング会社を近々設立しようと考えています。現在は、中小企業も林業も一緒の会社でやっているのですが、林業関係の仕事は新会社のほうで全部やっていこうと思っています。

いろいろな専門家の方々(大学の先生、林業の実務家の方、あるいはシンクタンクの方等々)と連携しながら、「日本の林業再生に寄与する会社」ということを前面に出して林業経営支援に特化してやっていこうということで、今計画して進行しているところです。

この会社設立には、林業経営支援をライフワークにしていきたいという思いもあります。

第1回でお話ししましたが、単なる講演で行ったご縁が、林業再生という国としての大きな流れのところに4年の期間でつながっているということは、大きなポイントだと思うのです。

誰にでも講演の機会はある。その機会ととらえて、そういうものに進化させるか、単に1回の講演で終わってしまうかというのは、その人の、その時あるいはその後の取り組みにかかっている。もし、読者のなかに若手の診断士の方がいらっしゃるなら、「日常の中にライフワークの種子が隠れている。それを見つけるか見つけないか、育てるか育てないかで、中小企業診断士としての人生はすごく変わるのですよ」ということを申し上げたい。

今わたしは50歳です。林業再生というのはこの10年間で面的に整備されます。5年間ぐらいで目鼻をつけて、10年間ぐらいかけて整備され、私が60歳になるころにそれが完了するでしょう。

ですからそれと一緒に同時代を生きていけるというのは幸せなことで、こういう大きなプロジェクトに関われて、ラッキーだなと思っていますし、そしてそういう機会を提供してくれた関係者の人たちに感謝しています。

一次産業こそ中小企業診断士の活躍の場は大きい

坪野克彦さん

農業もそうですし、林業も漁業も、一次産業の分野というのは、今までおそらく経営というものになじまず、コスト管理といったものがずいぶん遅れていた業界です。要するに補助金等によって官に守られていた産業です。このように、経営という仕組みが十分入っていない産業こそ、経営支援のプロである中小企業診断士が活躍する余地が大きい。

今までそういう仕組みがなかっただけに、つくれば成果が上がるという意味において、また社会的貢献度が高いという意味において、診断士としてはぜひとも取り組むべき分野であろうと思います。もちろん他にもそういう業種はありますけれども...。

中小企業診断士としての使命感を持ち、社会貢献度が高いということに価値観を持って活動する診断士の方に、ぜひこういうところに入ってきてほしいと思います。今度の新しい会社では、そういう人材の育成システムをつくって、林業診断士や林業支援のプロを少しでも発掘して育成していきたいと考えています。

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本シリーズは「事例編」(今秋以降に掲載予定)に続きます。また、林業経営支援の仕事に興味を持たれた方は、坪野さんのホームページに掲載されているブログ「坪野克彦のプロコン日誌」で逐次紹介されている活動報告等も参考にしていただくとよいでしょう。

坪野 克彦:(株)メディア・ミッション代表取締役

坪野 克彦(つぼの かつひこ)/1957年生まれ。(株)近畿放送から独立し、1994年(株)メディア・ミッション設立、1997年(株)京都経済新聞社設立、取締役副社長に就任、1999年中小企業診断士登録、2000年より和歌山県中小企業支援センター、マーケティング・マネージャー。2003年から和歌山大学地域共同研究センター客員教授。2005年から全国森林組合連合会と契約、森林組合の経営支援に取り組む。2007年林野庁全国提案型施業促進部会委員、神戸と東京に拠点を置き活動中。(社)中小企業診断協会兵庫県支部理事。 E-mail:tsubono@mmission.co.jp
  (株)メディア・ミッション ホームページ(http://www.mmission.co.jp/)
  坪野克彦のページ (http://homepage3.nifty.com/k-tsubono/)