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中小企業診断士の仕事

ライフワークとして林業経営支援に取り組む

取材・構成:宮崎 洋一

【第2回】「林業再生」の国家的プロジェクトへの参画

林業経営支援の第一人者として林野庁から招聘される

前回お話ししたように、わたしは林業の経営支援を2003年からやっているのですが、これまでにも、診断士を含めて多くの専門家が森林組合や林業の経営支援に取り組んできました。しかし、いわゆる財務分析だけではなく、もっと踏み込んで、森林組合の経営体質を本当に改善して健全化していくという手法は、わたしがはじめて取り組んだといえるような状況でした。

定性分析を持ち込んで、そこで働いている人の人間関係やモチベーション。あるいは経営者のリーダーシップや組織の風土。そこまで踏み込んでいって分析して、問題点を抽出するという手法は、これまでにはなかったのです。

現在は、森林の再生の担い手として国からも市場からも期待されている森林組合の経営の現状を経営診断して改善提案をする。また、それに付随する人材育成を行うというのが、林業関係ではメインの仕事になっています。

【「林業再生」を経営面から支援】

また「林業再生」のためにこれからやっていかなければいけない、所有者に利益還元ができる「間伐」というものを面的に、全国的に進めるためのプロジェクトのメンバーとして、それの普及活動などでも全国をまわっています。

このプロジェクトは林野庁の事業です。今年から始まっている5年間の事業のなかの「全国提案型施業促進部会」というもので、「全国国産材安定供給協議会」という組織の実働部隊という位置づけになります。その委員をやっています。

メンバーは、富士通総研の主任研究員・梶山恵司さんという方。元々ドイツ経済研究の専門家ですが、ドイツなど欧州の林業先進国を調査して、日本でも林業がビジネスとして成立することを提案した、この業界のオピニオンリーダーです。それから京都府日吉町森林組合の参事で湯浅勲さん。この方は、提案型施業(所有者に提案をして、小規模な所有者を取りまとめて、生産性の高い高性能林業機械の作業道をつくり低コストでの間伐を可能にする)の仕組みを作って成果を挙げている実務家です。それから森林生態学の権威である藤森隆郎さんがいらっしゃって、わたしが経営面の担当ということで、この4人を核に改革チームが組織されています。梶山さんと湯浅さんとは、今年3月に一緒にドイツに行き、南ドイツの林業事情をつぶさに視察してきました。二人とも林業再生に情熱を燃やしていて、人間的にもすばらしい方々です。

まず、全国12地区のモデル組合で成功モデルを作っていって、そこを拠点にして面的に広めていこうというサポートをこの5月からはじめたところです。

坪野克彦さん
写真1
ハーベスターで木材を伐採する風景、
写真2

【体験を支援に生かす"現場主義"】



写真1は、日吉町の現場で撮ったものです。作業服の色が良いでしょう。そこの組合さんの制服の色ですけれど...。この日は、終日、山を歩きました。作業道の設計をするために事前にずっと歩くのです。それに同行してどんなふうに道をつくって機械を入れるのか、というのを一緒に体験したのです。

木材を伐採するのに、ハーベスタという多機能の高性能林業機械を使います(写真2)。この機械を使うと伐採だけでなく、枝払いや玉切りなどの造材、集材もワンマンでできてしまうので、生産性がかなり向上されるのです。3メートルぐらいの幅員の作業道をつくって、伐採したい木のところまで機械が入っていくイメージです。ある意味、作業道が全てで、道が入っていないと生産性が上がってこないということになります。

小規模な所有者を取りまとめた上で、そこに作業道を設計し、高性能林業機械の最適な組み合わせによって、低コストの施業を行っていく、「森林施業プランナー」というプロを、森林組合の職員のなかから、3年間で1,000人養成しようというプロジェクトが動いていて、その一環で、わたしも日吉町(現京都府南丹市)まで体験しに行ったのです。4泊5日で、非常に勉強になりました。機械にも乗せてもらって、操作方法などを一通り教えてもらいました。自分が体験して、それを自分なりに解釈して現場での支援に生かすというのが、一番分かりやすいと思うのです。



「林業再生」は、ここ5年以内が勝負

ここで「林業再生」について、簡単に触れておきましょう。林業再生というのは、もうかなり前から、いろいろなところで言われていることなのですが、要するに戦後、国策として住宅需要などにしたがい植林をしたのです。これを拡大造林というのですが、それがもう50年近くなってきて密生している。

植林された木は年々成長しているのですが、定期的にきちんと間引きしていかないと森林が生育しない。間伐と言って整備の一環として間引きをして、出てきた木材は、木材市場や製材所などに売るのです。つまり木材としては収穫期にきているのですが、これまでは価格の問題があったりして、林業側も間伐材を売るということをあまりやってこなかったのです。日本の現状として今まで外材が8割を占めていたわけですから...。

【深刻な環境問題を未然に防ぐチャンスは今】

ところが昨今の国際事情で、原油が高騰したり、木材輸出国が環境保護のために木材を伐採しなくなったり、中国の需要拡大などもあって、外材が入ってこなくなってきているのです。それで相対的に国産材の存在価値が上がり、合板用や集成材用のものを中心に現状としては国産材が足らないのです。当然、価格も上がってきました。

片や森林が多くなって、収穫期の太い木が育ってきている。片や市場のほうはそれを求めている。あとは仕組みを作って市場に流せば、今は製材所や合板工場などがいくらでも買ってくれるというような状況なのです。この状況はおそらく当分変わらないでしょう。

そういう経済的な需給の要因が1つ。それから今間伐をしないと、専門家の方も言っておられるのですが、いずれ密生した立木が倒れて、森林自体が崩壊する危険性がある。また、太い木が密生すると森林の多面的機能が果たせなくなって、森林崩壊という環境問題が発生してしまうのです。

こういう2つの要因から、どうしても今この時期に(あと5年以内ぐらいで)面的な間伐をして、売れる木はきちんと売って所有者に還元するということをやる必要性が強まっているのです。手元にお金が戻ってくるとなると、所有者も積極的に森林整備をやるようになります。材が高いうちにやれば利益が出る。「今、チャンスなのでやりましょう」と所有者に提案するわけです。

【集約化で生産性を向上】

日本の森林は1ヘクタール、2ヘクタールという小規模所有者が多く、大規模に持っている人は少ないのです。集約化というのですが、まずそれをまとめます。30ヘクタール・100ヘクタールなどとまとめて施業すると作業の効率がいいからです。作業道をつくって林業機械を入れて、生産性を上げてコストダウンして、どんどん大量に材を出す。

それにより市場価格に十分適合するだけの価格で材を出しても利益が出るような、低コストの間伐が可能になります。それを実現すれば安定的な供給が確保されるというのが、林業再生という取り組みの骨子なのです。

これは国策でやっているものです。林野庁もいろいろなプロジェクトを仕掛けてやっています。前述したように、その中でわたしも、中小企業診断士として、林業経営の専門家として、参画をしているというのが大きな流れです。

坪野 克彦:(株)メディア・ミッション代表取締役

坪野 克彦(つぼの かつひこ)/1957年生まれ。(株)近畿放送から独立し、1994年(株)メディア・ミッション設立、1997年(株)京都経済新聞社設立、取締役副社長に就任、1999年中小企業診断士登録、2000年より和歌山県中小企業支援センター、マーケティング・マネージャー。2003年から和歌山大学地域共同研究センター客員教授。2005年から全国森林組合連合会と契約、森林組合の経営支援に取り組む。2007年林野庁全国提案型施業促進部会委員、神戸と東京に拠点を置き活動中。(社)中小企業診断協会兵庫県支部理事。 E-mail:tsubono@mmission.co.jp
  (株)メディア・ミッション ホームページ(http://www.mmission.co.jp/)
  坪野克彦のページ (http://homepage3.nifty.com/k-tsubono/)