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中小企業診断士の仕事

ライフワークとして林業経営支援に取り組む

取材・構成:宮崎 洋一

【第1回】中小企業の経営診断・林業の経営診断

取材日:2007年5月22日

「社会貢献業」としての中小企業診断士を提案し、「中小企業の経営再生支援」と「林業経営支援」という2つの事業領域を両輪として活躍されている坪野克彦さん。  今回は、後者の「林業経営支援」の仕事についてお話をうかがいました。この仕事に取り組むようになった経緯にはじまり、「林業再生」の国レベルのプロジェクトへの招聘、林業に特化した新会社の設立構想など...中小企業診断士としての使命感に燃える、熱い想いを交えながら存分に語っていただきました。

「林業経営支援」事始め――森林組合との出会い

坪野克彦さん

【講演依頼がきっかけに】

まず、わたしが「林業経営支援」に取り組むようになったきっかけからお話ししたいと思います。

今から4年前、2003年のことです。わたしは和歌山県中小企業支援センターに2年間、マーケティング・マネージャーとして行っていたのですが、その時に知り合った、中小企業支援センターの職員の方から、「講演に来てくれないか」という依頼があったのです。「労務管理について2時間ぐらいしゃべってほしい」と。退任した1年後のことです。

それがたまたま、和歌山県の森林組合連合会からの依頼だったのです。わたしはその時、森林組合という名前は知っていたのですが、それが具体的に何をするところか分かりませんでした。とりあえず実態が分からないと話ができないので、和歌山市の近郊にある、森林組合に半日ほど行かせてもらい、職員さんに話を聞きました。いわゆる業界研究ですね。

その実態を聞いて話をさせてもらったのです。結果的に、「これからの森林組合の生き残りについて」というようなテーマになりました。これからは公共事業や補助金等をあてにせずに、自分の力で事業を切り開いていくなど自助努力をしていかなければならないということを中心にお話ししたところ、講演が終わってから3、4人の方が名刺交換に来られました。「今日の話には非常に感銘を受けたから、これからも情報交換したい」ということでした。

【最初の経営診断から全国展開へ】

その後、半年ぐらいしてその連合会から、「期末の予算ができた。県内2組合の経営診断をお願いできないか」というオファーが来たのです。2泊3日で2件回ったのですが、それが森林組合に対する最初の経営診断になりました。自分なりに一生懸命やらせてもらって、具体的な改善提案もしました。その後さらに和歌山県内で、自分の出身地という縁もあったのですが、2つの組合の経営診断や林業経営者の経営支援をやらせてもらいました。

そういう活動が2005年、ちょうど2年前に、森林組合の上部組織であり、林野庁の事業の実施機関でもある全国森林組合連合会のアンテナに掛かったのです。ちょうど全国森林組合連合会では、2002年に策定した『森林組合改革プラン』というものが進行中でした。その中に経営体質を強化するとか、経営改善をするとか、専門家を入れて経営診断をするとかといった内容が盛り込まれていたのです。

私のそれまでの実績をみた全森連の職員が「この内容なら仕事を依頼できる」ということで、島根県や静岡県や愛媛県などで経営診断や研修の案件紹介をしてくれました。それから2年間で20件近い森林組合の経営診断や経営支援に取り組んできました。現在は、林業の川下産業である製材業も含めて、全国的に経営支援活動を行っています。

森林組合の現状――高まる健全経営への機運

【公共事業の減少で窮地に】

最近のデータをみると、約760ある森林組合のうち、約4割が事業損失を出しています。事業利益(営業損益)の段階で、もう赤字になってしまっている。これまでは都道府県の林業公社や緑資源機構等からの造林事業(国有林・公有林の伐採や整備や植林など)を受託していれば十分にやって来られたのですが、最近それが激減してきています。公共事業が減ってきたので、従来の固定費がまかなえなくなってきたわけです。

他の事業も手がけているのですが、そんなに儲からないのです。購買事業や販売事業や製材など、どれもそんなに儲かる商売ではない。やはり本来は、所有者の利益を守り、所有者に奉仕をするというのが森林組合の存在理由です。したがって、それをまずやっていこう。そして、その中できちんとしたビジネスとして、森林整備と木材生産をやっていこう。そのためにはまず、その木材生産をビジネスとして成立させていかなければならない。それで、コスト管理も含めた経営という視点が大事だということになってきたわけです。

【求められる経営支援の専門家】

林業は「補助金なしでは成立しえない」ともいわれます。それは森林の持つ多面的機能からすると当然かもしれません。しかし、それにしても補助金だけに頼らずに自分の力で何とか稼いでいって、組合員さんにサービスするために「経営体」としての組合を健全経営にするのだという機運は確かに生まれてきています。

そういうなかで、中小企業診断士というのは、林業のことを分かる分からないは別にして、まず体系的に経営をとらえて、そこから踏み込んでいって、赤字なら赤字の原因を究明して、その改善策というのを策定できる専門家です。人、モノ、金、情報という経営資源を総点検し、最適化する道筋を示すことができる。

それでどちらかというと、経営ということについては遅れていた業界ですから、中小企業診断士のような経営支援の専門家に対するニーズが潜在的に高かったわけです。

中小企業の経営支援に比べて難易度は高い?

坪野克彦さん

【経営というものに馴染まない世界】

林業の経営支援が、わたしたちが専門とする中小企業の経営支援と異なる点は、まず言葉です。林業の場合は独特の言葉を使っていて、まず一般の人には分からない。これをヒアリング等で共通言語として使えるようになるまでが、たいへんです。自分で勉強して、それでも現場へ行って知らないことがあったらすぐ調べる、というようなことでやっていくしかありませんでした。

それから中小企業は、ある程度経営という仕組みが入っていて、経営者もいるし、それを伝える組織もあり社員もいる。役割分担もはっきりしている。しかし、森林組合の場合は、経営者と呼べる人がいないことが多いのです。経営者がいないということは、経営というものが仕組みとしてなされていないということで、組織が経営組織になっていない。まず経営者は誰かということを明確にして、機能する組織を作っていかなければならないのです。そこが、全然違うところです。

【公益的機能と利益創出の二兎を追う】

それと、単に事業利益を出せばいいというものでもなくて、地域における公益的な機能を全うしながら、経営体としても利益を創出しなければならないという、両方を追わなければならない難しさがあります。多角化や新分野進出なども簡単にはできません。森林組合法という縛りもあります。ですから、中小企業の経営支援とはかなり違うのではないかと思うのです。

中小企業の経営支援よりも難易度が高いだろうという人もいます。ある意味、的を射ているでしょう。そういうことが分かった上で支援して成果を出さなければいけないので、やはり難しいのかなということは、わたしも感じています。

しかし森林サービス業というような位置付けをすれば、人にフォーカスして支援をするということについては、共通項があるとも考えています。ただ、専門性を身につけ、共通言語で話ができるまでに、かなり時間がかかってしまったな(それはどの業種も同じですが、特にこの業種は見えない部分が結構多かったので)というのが率直なところです。

坪野 克彦:(株)メディア・ミッション代表取締役

坪野 克彦(つぼの かつひこ)/1957年生まれ。(株)近畿放送から独立し、1994年(株)メディア・ミッション設立、1997年(株)京都経済新聞社設立、取締役副社長に就任、1999年中小企業診断士登録、2000年より和歌山県中小企業支援センター、マーケティング・マネージャー。2003年から和歌山大学地域共同研究センター客員教授。2005年から全国森林組合連合会と契約、森林組合の経営支援に取り組む。2007年林野庁全国提案型施業促進部会委員、神戸と東京に拠点を置き活動中。(社)中小企業診断協会兵庫県支部理事。 E-mail:tsubono@mmission.co.jp
  (株)メディア・ミッション ホームページ(http://www.mmission.co.jp/)
  坪野克彦のページ (http://homepage3.nifty.com/k-tsubono/)