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中小企業診断士の新たな活動領域を拓く-歯科医院支援

取材・文:宮崎 洋一

【第1回】歯科医院支援と中小企業診断士―今瀬勇二さんに聞く

中小企業診断士の活動領域は多岐にわたりますが、まだ未開拓の活動領域も存在します。今回は、新たな活動領域へ挑戦している中小企業診断士の方々を取り上げます。ここでは4回にわけて、代表者へのヒアリング、具体的な支援事例の紹介、今後の可能性などをレポートしていきます。

歯科医院支援をはじめた経緯

今瀬勇二さん― 本コーナーでは、毎回、中小企業診断士の仕事の現場をレポートしていますが、今回は「歯科医院支援」というまったく新しい分野への挑戦のお話をお聞きできるということで、とても楽しみです。まず、この新事業を思い立った経緯、今瀬さんの中小企業診断士としてのこれまでの活動から簡単にお話しいただければと思います。

わたしが中小企業診断士資格を取得したのは3年前、平成16年3月の登録です。企業での十分な経験がありましたから、当初は資格をとらずにコンサルタント業務をやろうと思っていたのです。それがなぜ資格を取ろうと思うようになったかといいますと、1つには、外資系の企業にいたためMBAを持つ連中への対抗心が強くあったこと。それからもう1つは、理論的に学んでいない自己流のコンサルティングでは、お客さんに対して失礼だと思ったこと。そういう2つの観点から診断士を取ることにしたのです。

診断士として活動をはじめて、最初に感じたのは、非常に仕事が少ないということ。それから中小企業診断士に対しての社会的な認知度がまだまだ低いということです。これから入ってくる若くて優秀な診断士にこういうことを味あわせてはいかん、と思いました。最近の若い診断士は、ものすごく優秀です。ということは診断士の資格というものが前向きな若い人たちにとって、1つのあこがれになってきているのです。非常にいい傾向ですね。あこがれになってきているからこそ、診断士になった時に活躍できるフィールドを作ってあげたい。そのようなことからNPO法人をつくって若い診断士の実践の場を提供しよう、ということを思いついたわけです。それが、わたしの診断士としてのスタートです。

― NPO法人というのは『ビジネス駅伝ネットワーク』ですね。そうしますと、歯科医院支援というのも、若手の実践の場を探されていたなかで何かきっかけがあって始められた、ということでしょうか。

はい、まさにそうです。ただ、いきなり歯科医院を思いついたわけではないんです。中小企業診断士としてネットワークを広げるために入った中小企業家同友会の神奈川県支部の会合で、歯科技工会社の社長さんにたまたま会ったことがきっかけになりました。

いろいろと話しているうちに、歯科医院の経営がいま非常に難しいんだ、という話をお聞きして、調べてみると歯科医院は全国で6万6千軒ぐらいある。ものすごい過当競争なのです。過当競争下では、どこか差別化して生き残っていかなければならない、というのはわれわれにとっての常識です。診断士が活躍する場がかなりあるな、と感じました。

そこでまず、その歯科技工会社と組んで、セミナーをやったり、歯科医院を紹介してもらって訪問したり、ということから始めたのです。それから地元の湘南地域でも歯科医院を対象にDMを出しました。それがセミナー開催や3件ほどの経営診断につながったのです。また、そのうちの1つは顧問という形で1年間ほど支援させていただいております。

やはり自分でやってみないと人に「これやってみろ」とはなかなかいえないですから、ある程度、知識と経験を蓄積してからNPOのほうへ話を持っていったわけです。それが1年半くらい前のことです。その後のNPOとしての歯科医院支援の実績は、診断が12件ぐらい。それからセミナーについては随時行ってきましたので、かなりの数になります。

歯科医院共通の問題点と収益をあげる方策

― 診断あるいはコンサルティングに入って、とくに印象に残っていること、また歯科医院共通の問題点等がありましたらお聞きできますか。

具体的なケースは次回以降で詳しくご紹介するので、ここではポイントを絞ってお話ししようと思います。

まず、歯科医院共通の特徴として歯科医師は大学を出た職人だということ。したがって経営者ではない。ここにすべての問題点が集約されると思います。

職人ですから技術を持っています。その技術をいかに収益につなげていけるか、それが1つのポイントです。もう1つは、歯科医院はサービス産業であるということ。院長自身もスタッフも、そういう意識をもって患者さんと接する必要があります。良好な人間関係が保てないと患者満足は得られません。いかに患者満足を得ながら収益を上げていくかということがポイントになります。

収益を上げるためのポイントは自費で行う自由診療です。保険診療との比率で最低20%、できれば30%は欲しい。ふつうの町の歯科医院ですと5~6%ですから、そこを指摘してあげるだけで経営的にはグンとよくなるのです。

しかし、多くの歯科医院では、自由診療でこれだけのことをしているというのを患者さんに向けて知らせることすらもしていない、というのが現状なのです。

― それを知らせるために具体的にはどのよう方策がありますか。

看板を工夫したり、待合室をショールーム化したり、ということでかなりの効果が期待できます。

看板は、「○○医院」だけでなく、技術をアピールするものにします。たとえば、「インプラントが得意である」とか、「ホワイトニングが得意である」というのを、バシッと看板に出して患者さんに知らせてあげる。また、そのように看板を出すことで、院長自身もご自分の持っている技術を再認識でき、それを磨いていくようになります。すると結果として技術力がアップしていく。そういう効果もあります。

それから待合室のショールーム化も効果があります。単に椅子を置いておくだけでなく、歯型を展示したガラスケースを置いて説明するとか、ポスターを貼って知らせるとか、そうすることで患者さんに選んでもらえるようにするのです。興味を持って医師やスタッフに聞いてくるようならしめたものです。

患者さんが自分で選ぶというのが自由診療の基本です。高いものであっても満足して納得して選んでいるわけです。そうすると必然的に自由診療の比率が上がってきます。

― 自由診療の比率をあげるためには、スタッフも重要な役割を持っているのですね。

そうです。ですから順調に行っている歯科医院はスタッフの定着率が高いのです。それだけでもわかるのです。スタッフ自身が、ある意味、アドバイザーとして患者さんとのつながりを持っていますから、定着率の悪いところはなかなかうまくいかないのです。

また、定着率が悪いと保険事務もおろそかになり悪循環におちいります。保険診療の請求が100%もらえないというのでは、保険料率が下がっている状況下で非常に厳しいものがあります。そうした視点からもスタッフ教育は非常に大切なのです。

歯科医院支援の全国的な展開に向けて

― 最近、『歯科医院経営診断全国ネットワーク』という全国組織を立ち上げたとおききしました。どのような理由からですか。

いままでは自分の経験をNPOの中だけで公開して若い診断士とともに取り組んできたのですが、中小企業診断士全体としての活躍の場を広げるという視点に立って全国展開することにしたのです。全国で「やりたい」と手を挙げた診断士の方々に、われわれが培ってきたノウハウを公開して一緒にやっていこう、ということです。その結果として、東京、神奈川だけでなく全国的に中小企業診断士というものが歯科医院に対して浸透していくでしょう。それが重要なのです。

基本的な考え方としては、歯科医院支援に限らず、中小企業診断士が仕事を持ててそれが広がっていけばいいと思うのです。社会的な認知度も高まるし、全体的なレベルも上がっていく。

― 最後に、中小企業診断士にとっての歯科医院支援事業の可能性について、あらためておまとめいただけますか。

可能性は無限にあると思いますね。中小企業診断士は、どうやって経営診断をし、どうやって経営改善のアドバイスをし、どうやってそこの企業(この場合は歯科医院ですが)をいい状態に持っていくか、いい状態に持っていったら、さらにそこからどう展開するか、これをすべて知っているわけです。

歯科医院のコンサルタントを名乗る人は大勢いますが、診断ができないから指摘するポイントが部分的なのです。だからよくならない。逆に、部分ではなく全体を見てどこがボトルネックになっているかを指摘して改善してあげる、それが診断士の役割ですから、仕事は無限にあると思います。極論すると、歯科医院の支援は診断士にしかできない、といえるかもしれません。もちろん常に勉強して腕を磨いていなければいけませんが...。

― ありがとうございました。それでは次回からは、これまで取り組まれてきた歯科医院支援のケース紹介をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

今瀬勇二さん:非営利活動法人ビジネス駅伝ネットワーク代表理事/
           歯科医院経営診断全国ネットワーク代表

外資系企業の社長として、海外の事業を経験後、中小企業診断士として独立。平成17年に非営利活動法人ビジネス駅伝ネットワークを設立、代表理事に就任。平成18年に歯科医院経営診断全国ネットワーク設立、代表に就任。

団体名 特定非営利活動法人 ビジネス駅伝ネットワーク
設 立 平成16年10月
会員数 34名
所在地 神奈川県平塚市四之宮1丁目5番14号
ホームページ http://www.npo-be.net/
E-Mail yuji@imase-annei.com