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中小企業の「ひたむきさ」を実感―販路開拓支援の現場から

レポート:秋島 一雄(中小企業診断士)

【第4回】販路開拓支援を受ける企業様へ

販路開拓支援を受ける企業様へ

以上のように、小生の1年間の具体的な行動をご紹介しました。販路開拓事業は都道府県によってやり方も違いますし、またその担当員によっても左右されると思います。前記はあくまでひとつの実例として考えていただければ幸甚です。

しかし、第1回で支援しやすい企業と支援しにくい企業の例を挙げたように、本音で言わせていただくならば、「支援しやすい=支援したい」「支援しにくい=支援したくない」企業と読み替えることができます。それは、決して特殊なことではなく、ひとりの社会人として、常識的な対応ができるか・できないかということに尽きると思います。

さらに、マーケティングをひとことで言うならば「誰に・何を・どうやって」この3つの軸をどう考え、どのように対応するかにかかっています。中小企業基盤整備機構の「販路開拓のしおり」に書かれている項目に、簡単な補足を加えてご紹介したいと思います。

その1:お客さまの目線で考えてみる

~これはすばらしい技術だ!便利な商品だ!だから売れるはずだ~

*企業は当然自分の製品・商品を手塩にかけて育てたので、思い入れがあります。それ自体は非常に重要なことです。しかし、買うのはあくまでお客さまであり、必要のないものは買いません。また、同じような商品は巷に溢れています。「商品3割売り方7割」という格言があるように、あくまでユーザーの視点に立たないと商品は売れないことを強く意識しましょう。

その2:「売る」ために必要なことを整理する

~魚釣りをイメージして考えてみると次のようになる~

○その場所に魚はいるか:

...お客様の絞込み(エリア)・商品化(使用場面)

○狙った魚に合ったツールは:

...営業ツール(パンフレット、カタログ)

...販促手段(クチコミ、展示会、広告)

○潮の状態や船頭の経験は:

...見込まれる市場を調べる

...流通経路の選択(直販/代理店)

*これは非常に良い例です。もし釣りが趣味であれば、上記以外にも釣り場に行く日の天気を調べ、交通手段も調べ、釣りの上手な人のマネをして...など、いくらでも手段を考えるものです。しかし、単なる趣味ではなくビジネスの場面であるにもかかわらず「何もしない、的を絞らない、特に策を講じることなく、売れればいい」という企業が結構存在するのも事実です。いろいろと工夫をしてみましょう。

その3:ライバルを書き出してみる

~ウチの製品には「独自性」があるので、ライバルなんていない~

*意外なところにライバルが存在するものです。お客さまがその独自性のある製品が出てくるまでは、それなしで済ませていた。それはなぜでしょうか? こちらが思っているほど、相手は不便を感じていないのかもしれません。ライバルを書き出し、それに対しての製品の優位性を確認しましょう。また、自分や自社の社員だけでなく、全然関係のない人やいろいろな年齢層の人にも声をかけて、その声を拾ってみましょう。

その4:持ち駒(別提案)を多めに持つ

~説明してもお客が興味をもってくれない、今日は機嫌が悪いのかなぁ~

*お客さまはその商品を使うことでどんな便益があるのでしょうか? それに付随する商品も販売できないでしょうか? また、それを購入したときどんなサービスができるでしょうか? こちらの思っていることと先方のニーズには、思いのほか大きなギャップがあるものです。常にいろいろな視点から提案できるように、準備をしておきましょう。

その5:効果的な見込み客を探す

~買ってくれそうなトコロがたくさんあるなぁ、でもどこから行けばよいのか~

*新たな商品で、新たなお客さまに行くのはなかなか難しいものがあります。まずは既存のお客さまに新たな商品を同じ売り方で売ってみる、それが上手くいかない場合は売り方を変えてみる。そして最後に一番上手くいった方法で、新たなお客さまにチャレンジをしてください。成功事例を作るためには、まず的を思い切って絞ることからはじめてください。そして、徐々にエリアや年齢層などの属性を広げていくという対応をしてみましょう。

その6:営業体制を再確認する

~夜中にクレームでたたき起こされた...なぜだろう~

*売りっぱなしだけではリピーターは育ちません。また、話は前後しますが、新規顧客の開拓よりもリピーターの維持のほうがはるかに効率的です。そのためにはアフターサービスの充実が何よりも重要です。また、最近の大企業の不祥事もすべからく社内体制のほころびによるものばかりです。社内体制をきっちり作り、風通しのよい環境を整備しておきましょう。

むすびにかえて ~1人のBCCのつぶやき~

平成18年度を通じて、三重県産業支援センターの指揮の下、販路開拓事業に携わってきた行動記録が今回のレポートです。この仕事を通じて、多くの頑張っている中小企業の方々にお会いでき、逆に元気をもらった部分も少なくありません。皆さんに共通していることは「ひたむきさ」だったと思います。あとはそれを上手く世に問うような仕組みを作ることであり、そのお手伝いができればと思い、ご協力をさせていただきました。また、産業支援センターをはじめ三重県スタッフ各位の「地元活性化」への熱意にも、感銘を受けることがしばしばありました。もともと自分にとってゆかりがあまり無かった三重県も、今や九州の実家よりもはるかに多く訪問し活動する地となり、まるで「第二の故郷」のようであることもうれしく感じています。

『最も賢い種でもなく、最も強い種でもなく、最も変化に敏感な種だけが生き残る』

これは、ダーウィンの「種の起源」の中の一節です。つまり、人間である前に生物としてのDNAには「変化に対応するものだけが生き残る」という因子が組み込まれているわけです。ドッグイヤーと呼ばれるように、変化はとてつもなく激しく、私たちの周りを取り巻いています。失礼を承知で記せば、確かに大手企業よりは賢くも強くもないかもしれません。しかし、ひたむきな社長さんが引っ張る中小企業は、社長の考え方ひとつで機敏に変化に対応できることこそが強みなのです。

たとえば、経営革新もご自分の意識次第でいかようにも推進できるはずです。また、従業員の方々との距離も、大企業に比べれば雲泥の差があるほど近いのです。風通しのよい組織にして、従業員の発言を引き出すことで、より多くの成果も期待できるでしょう。知恵の勝利、実際行動したものが勝利を得ることができる、実感できるという時代になりました。

さらに、いまやインターネットでどんな情報も皆ほぼ平等に得ることができる、と言っても過言ではないでしょう。しかし、それだからこそ、インターネットの不特定多数を相手にした商売よりも、中小企業が身の丈にあったサイズで小回りを利かせ、足で稼いだ商売に逆にチャンスがあると思います。ネット社会だからこそ、触れ合いで仕事が取れる、そんな時代がやってきたと思っています。

中小企業を取り巻く環境は厳しいかもしれませんが、それは図体のでかい大企業でも同じです。変化に敏感でさえあれば、チャンスはいくらでもあります。ぜひとも皆さんの「ひたむきな情熱」で、チャンスを自ら創り出してビジネスを成功させていただきたいと切に願っています。