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中小企業診断士の仕事

中小企業の「ひたむきさ」を実感―販路開拓支援の現場から

レポート:秋島 一雄(中小企業診断士)

【第2回】支援企業の事例紹介(1)

[事例1]地下防水工事施工業者が、自社のノウハウの詰まった工具販売に初挑戦!
  ―(有)沖藻 (地下防水工事の施工業者)

【沖藻 概要】

沖藻さんは奈良県に接する名張市に本拠を置く、正社員7名のマンホールの止水工事施工の会社です。その工事に対する技術と姿勢で匠のワザを持っており、安全・確実・迅速がモットーです。同社は高度な技術を持つとともに、社長自身がアイディアマンであり、工業用作業道具を発明して、特許や実用新案品を取得しています。今回の販路開拓支援でサポート委員会に提出されたのは、その中のひとつで特許を有する工具でした。これまでも施工工事の営業はできていたが、製品そのものを売るという営業行為は苦手であり、そのアドバイスを受けたいという目的のために参加されました。

【販促ツールをつくる】

BCCとして同社を訪問し、現物の商品を再度手にとりながらの質疑応答で、社長の思いを伺い、どんなお客さまに販売が可能であるか? また、そのための販促ツールには一体どんなものが考えられるかを打ち合わせました。さらに、第2回目には実際にパワーポイントを作成し、それを持ってどこのお客さまにアプローチをすればいいかという点も検討しました。プレゼンのために、あちこちで写真も撮影してもらいました。加えて、7月末に大阪で開催される「日本下水道展」に対してどのような展開をするか? そのための情報収集についても意見を出し合いました。また、展示会等を手がける企画会社にも相談を持ちかけ、ダイレクトメールのサンプルや出展時の予算などについても研究しました。

【具体的な行動】

社長の息子さんに東京に来ていただき、情報収集という意味で、日本下水道協会や下水道工事に詳しい中小企業診断士との面談を行い、さらに小生の顧問先経由で産業資材関連の商社との打ち合わせも実施しました。ご子息は、製品を売る営業は初めてだったので、小生が同行営業を行い、主に技術的側面での説明役をお願いしました。特に、社長の協会に対する認識が違うことが判明し、その部分をヒアリングで解消できたのは、特筆すべきことです。

また、メインと考えていた日本下水道展は、社長の知人がブース出展をしていたので、その一部をお借りして、製品を置かせていただきPRに努めました。さらに、有効と思われる企業数社に対して、その製品を持って具体的な商談も行いました。製品を取り扱っていただける可能性のある企業からはかなり手厳しいご指摘も頂戴しましたが、様々な視点からのご意見をお聞きする機会に恵まれ、今後の検討課題を得たことが最大の収穫でした。

[事例2]地元のお米と自家井戸水にこだわり、歴史とロマンの味が香る地酒が特徴!
 ―(株)大田酒造(酒造メーカー)

【大田酒造 概要】

大田酒造さんは忍者で有名な伊賀市に本拠を置く、明治25年創業の由緒ある清酒の蔵元です。日本酒はご存じのように焼酎ブームにその市場を食われ、わが国全体の消費量が減少する中、事業継承の問題もあり、全般的にはあまり芳しくない状況です。しかし、大田酒造さんはヤル気のあるご夫婦が老舗の暖簾(のれん)を守りながら、販路開拓を続けてきました。特徴ある商品でないと差別化が図れないという観点から、地元産のお米をわざわざプレミアムを払って購入し、いかにも伊賀らしいネーミングと特徴ある味に勝負を賭けています。

【ヒアリングと提案】

大田酒造さんを2度訪問し、どんなことができるかの提案をBCCとして提出し、それに基づいて打ち合わせをしました。同社の悩みは、百貨店等で催事を行っても、その場での「花火」は上がるが、その瞬間だけで持続性がないということでした。また、多角化として梅酒の製造も手がけ、それをどのように販売して行くかという点も検討中でした。これは、平成18年の酒税法改正により、清酒の製造免許を受けた者が、その製造場において自己が製造した清酒を原料としてリキュールを製造する場合について、最低製造数量基準が適用されなくなった、すなわち少量でも梅酒の製造が可能になったことを受けてのものです。

前者は、催事よりも個人客の囲い込みをどう図るか、少ない量で確実にリピーターとなる顧客を確保することの重要性をお話しました。あくまで百貨店の催事はその潜在顧客との接点の一つに過ぎない点を認識してもらうことに主眼を置きました。また後者は、差別化のためには高級化とターゲットを絞り、それに合わせた製品づくりをすることをアドバイスしました。さらに、小生の知人経由で、梅酒用に使う梅=差別化を狙うアイテムとしての南高梅(紀州産の高級梅)の仕入先を紹介することもできました。

【組合関係や地域物産展へのアプローチ】

日本酒業界のパイは小さくなっているものの、ヤル気のある若手経営者にとって、市場の縮小のみならず同業者の廃業は非常に残念なことであり、そこに活路を見出すヒントがあるかもしれないと考えました。そんな中、東京にある某組合を小生が訪問し、そこの実務担当者の方と打ち合わせを行いました。その方が指摘したことは、「経営者が若いか」「ヤル気があるか」の2点でした。幸い同社はそのいずれにも該当したので、次回に専務と同行して打合せを果たすことができました。

また、有楽町のとあるビルに入居している全国の商工会連合会がサポートする地域物産展のアンテナショップにも飛び込み営業をかけて、風味次第では日本酒の棚に置いていただける感触を得ました。最終的に専務と訪問し交渉の結果、納品が実現しました。蛇足ながら、棚に数ある日本酒の中で、この原稿執筆中も売れ筋の8位を確保していることは、その味覚が市場に評価されたものとBCCとしてうれしく思っています。

さらに、ホテルのテナントの和食割烹やレストラン、加えて、関東圏以外を地盤とする百貨店の東京営業所にも働きかけ、うち2箇所での催事開催が決定し、売上拡大と最終消費者との接点の場を確保することができました。(この項続く)