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活躍中の独立診断士へインタビュー

最前線の診断士

最前線で活躍する中小企業診断士が語る「私の3か条」(3)井上 岳久さん

取材・文:神田 憲司(中小企業診断士)水田 昌志(中小企業診断士)

【第1回】高みを目指して常にチャレンジ

2018年8月28日(取材日:2018年7月11日)

本シリーズでは、最前線で活躍する3名の中小企業診断士の方に、試行錯誤の末にたどり着いた中小企業診断士としての信条やルールを伺います。
今回は、マーケティングPRに特化した日本では数少ないコンサルタントとして、またカレー研究の第一人者としても知られる井上岳久さんに、診断士資格を取得したきっかけや独自のマーケティング手法を編み出すまでの経緯をお話しいただきました。

経営を基本から学ぶために再び大学へ

―診断士資格を取得された経緯を教えてください。

1996年、当時勤めていた会社で、横濱カレーミュージアムのマーケティング担当になったときに、経営知識の必要性を実感しました。
経営に関する情報を収集する中で、中小企業診断士という資格があることを知ったのですが、すぐに資格取得の勉強を始めたわけではなく、私は、再び大学に通い直すという選択をしました。それは、中小企業診断士の参考書を見たときに、資格を取得する以前に経営を基本から学ぶ必要があると感じたからです。働きながらの通学はとてもたいへんでしたが、経営を基本から学んでよかったと思います。その後、大学を卒業し、診断士資格を取得しました。

横濱カレーミュージアムを経営診断

―診断士資格は、仕事にどのように役立ちましたか。

横濱カレーミュージアムの入館者数が減少し、経営難に陥った2002年、私は同館のプロデューサーに就任し、立て直しを任されました。
診断士資格の取得過程で財務・会計を学習しており、財務諸表を読み解くことができましたので、財務上の問題点を明確にしたり、マーケティングの知識を現場で実践したりと、身に付けた知識をフルに活用しました。横濱カレーミュージアムを経営診断したようなものです。また、難関の試験に合格できたことも、自信につながりました。

広告から広報へ切り替えてV字回復

―井上さんはなぜ、広報を専門分野にされたのですか。

財務諸表を読み解くと、赤字の原因として売上高に対し広告費が過大であることがわかりました。広告費を抑えれば、黒字化する見込みがあったのです。しかし、単に広告費を抑えるだけでは、さらに客数が落ち込む懸念もあったため、集客策として広報を強化することに決めたというわけです。
私には、横濱カレーミュージアムのオープニング時に、リリースを1枚送ったことでさまざまなメディアに取り上げられ、たくさんのお客様にご来館いただいた経験がありました。広報の力を目の当たりにした体験です。当時は、広報関係の講座も少なかったため、学びの場を一生懸命に探しながら知識を身に付けました。

―具体的には、どのような広報手法を実施されたのですか。

当時は、『横浜ウォーカー』や『東京ウォーカー』(いずれもKADOKAWA)といった都市情報誌の全盛期でしたので、「同誌に毎月リリース記事を載せる」ことを目標にし、それを達成するために、「年間100回のイベントを行う」、「1回のイベントに対して3回のリリースを出す」ことを徹底しました。
その結果、私がプロデューサーに就任してわずか1年で、広告費は削減しながらも入館者数を復活させ、事業を黒字化することができたのです。そうした戦略的な広報活動の繰り返しが、今日の独自のマーケティング手法に結び付きました。

専門家として認められるためには著書が必要

―書籍も数多く出版されていますが、その経緯を教えてください。

横濱カレーミュージアムのプロデューサー職に就いていると、カレー専門家として取材を受けることがよくあります。その際に、「書籍は何冊出していますか?」と聞かれ、「出していません」と答えたところ、「書籍を出していないのに専門家なのですか?」とピシャリと言われたことがありました。そのとき、書籍を出版しないと専門家としては認められないことを痛感しました。
最初に出版したのはレシピ本でしたが、結構売れたんですよ(笑)。その後、カレーではさまざまな専門家と接することで、また広報では学びと実践を繰り返すことで知識やノウハウを蓄積し、多くの書籍を執筆してきました。広報に関する書籍は、横濱カレーミュージアム時代から積み上げてきた独自の理論で書いたものです。

―次回は、井上さんが大切にされている「中小企業診断士として仕事をするうえでの3か条」についてお聞きします。

(つづく)

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プロフィール

井上 岳久(いのうえ たかひさ)

井上戦略PRコンサルティング事務所代表、株式会社カレー総合研究所代表取締役。1968年生まれ。慶應義塾大学、法政大学卒業。商社などに勤務後、2002年横濱カレーミュージアム・プロデューサーに就任。入館者数減少に悩む同館を独自のマーケティング手法によって、わずか1年で復活に導く。2006年同館プロデューサーを退任後、現職。