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事業承継のトップランナーを追う(2)大島 康義さん

取材・文:鱧谷 友樹(中小企業診断士)齊藤 直子(中小企業診断士)

【第1回】事業承継とは後継者による「超友好的なM&A」である

2018年1月23日(取材日:2017年9月26日)

本シリーズでは、積極的に事業承継に取り組む3名の中小企業診断士の方に、その活動内容や中小企業診断士に求められていることなどを伺っています。今回は、株式会社後継者BC研究所の代表取締役であり、一般社団法人軍師アカデミー専務理事の大島康義さんにお話を伺いました。

三代目後継社長としての挫折経験が原点に

―大島さんは、事業承継のポイントはどこにあるとお考えですか?

「事業承継は超友好的なM&Aである」という考えに基づいて、支援の体系を作っているところです。事業承継は相続と同じだと思われがちですが、これは根本的に間違っていると考えています。なぜなら、相続は2歳の子どもでもできますが、事業承継はそうはいかないからです。後継者が力をつけ、従業員、お客様、技術、ノウハウを、表現は過激ですが、先代社長から“奪って”いかなくてはいけない。社長の子どもだから継ぐのではなく、次の社長になるべくして継ぐのだと、後継者本人だけでなく周りも納得する必要があります。
そう考えると、事業承継支援は、先代社長の支援ではなく後継者の支援でなければいけませんし、ここ2~3年の売上を上げるのではなく、10年後、20年後に良い会社となるような未来最適の支援でなければいけません。

―大島さんがそのような考えに至ったのはなぜでしょうか?

私は宝塚グランドホテルという老舗の温泉ホテルの三代目でした。阪神・淡路大震災で大きな被害が出て、借金が100億円にもなった後、何とかホテルは営業再開したのですが、父がある日、実印を持ってきて言ったのです。「お前に任せる」、と。それが入社して2年目、27歳のときでした。同族会社による弊害から建物の雨漏りまで、問題だらけでした。
その後8年間、七転八倒して会社を立て直そうとしましたが、結局2003年に倒産。肩書きも収入も家も、すべてを失いました。そこで初めて、自分のキャリアというものを考え始めたんです。それまでは親の跡を継ぐのが当然だと思っていましたからね。
しかし、自由で何をしても良いけれど、専門分野もない自分には何もできず、2年間引きこもって過去のことばかりを考えていました。そのような中で、ホテルが普通の経営状況だったら得られなかった自身の体験と気づきを、何とか活かせないものかと思い、あるとき「後継者や!」と思ったんです。
自分は後継者としてすごく頑張ったけれど、正しい頑張り方がわかっていなかった。専門家の方は皆、よくしてくれたけれど、後継者が本当に必要とする支援をしてくれる人はいなかった。だから、自分なら同じような状況に陥った後継者の支援ができるかもしれない、やりたい――。そう思い、何もない状態から後継者支援を立ち上げました。
支援内容には、職業選択の意思決定のプロセスを後継者に当てはめた体系を盛り込みました。「社長になって本当にやっていけるのか」、あるいは「そもそも自分は跡を継ぎたいのか」といった、人生レベルの話でモヤモヤしている後継者が多く、経営の話だけをしてもしっくりこないからです。
とはいえ、中小企業を支援する際にトップが間違っていたら、下の人がいくら頑張ってもうまくはいきません。だから、中小企業支援=社長支援で、つまりいまの時代は、中小企業支援=後継者支援になってきているんです。後継社長を支援する考え方やスキルがないと、本当の中小企業支援にはならないという仮説でやってきましたが、やってみてやはりそうだったと確信しています。

考えを共有する仲間を作る

―自らが後継者支援を行うだけでなく、軍師アカデミーを立ち上げられたのはなぜでしょうか?

後継者支援を始めた頃、恩師である京都大学・下谷政弘教授の還暦祝いパーティで、後輩の神崎充さんと再会しました。すると、私の名刺には「後継者アカデミー」、彼が出した名刺には「事業継承ドットコム」と書いてあったんです。やりたいことがバチッと合って、2人で後継者支援の研究を行うことにしました。そして、「事業承継は超友好的なM&Aである」との考えをベースに、事業承継を行う中で新たに価値を生み出していく過程を支援する、世の中にない体系ができたのです。
一方で、当初から他士業や中小企業診断士との連携がうまくいかないという問題もありました。ほとんどの専門家は、事業承継は後継者が主体だと思っていないからです。そこで、我々2人の考え方を自分たちだけで独占せずに、ライバルのコンサルタントや他士業にも理解し、使ってもらおうと軍師アカデミーを立ち上げました。それから7年ほど経ちましたが、軍師アカデミーで学び、考えを共有する専門家の仲間が増えて、連携が本当にやりやすくなったと感じます。

(つづく)

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プロフィール

大島 康義(おおしま やすよし)

1968年兵庫県宝塚市生まれ。京都大学経済学部、ボストン大学メトロポリタンカレッジ卒業。老舗ホテルの3代目として父の会社に入社するが、震災で100億円もの借金を背負い、10年間悪戦苦闘の経営を経験する。2003年に会社が倒産後は、自身の経験を活かし、後継者が本当に必要とする支援を行いたいと株式会社後継者BC研究所を設立。キャリアとビジネスの両面から体系を作り上げ、本質を突いた後継者支援・事業承継支援に全身全霊を捧げる。