経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

活躍中の独立診断士へインタビュー

最前線の診断士

事業承継のトップランナーを追う(1)内藤 博さん

取材・文:森本 哲哉(中小企業診断士)錦織 芳樹(中小企業診断士)

【第1回】中小企業診断士だからこそできる事業承継支援

2018年1月16日(取材日:2017年10月6日)

昨今、オーナー社長の平均年齢は70歳前後となり、事業承継が国家的な課題になっています。そこで今回から、積極的に事業承継に取り組む3名の中小企業診断士の方に、その活動内容や中小企業診断士に求められていることなどを伺います。
まずご登場いただくのは、事業承継センター株式会社(以下、事業承継センター)の代表取締役CEOである内藤博さんです。内藤さんは、2013年1月にも本コーナーの「事業承継支援のために中小企業診断士4名が手を組んだ『事業承継センター株式会社』」という記事で取り上げた事業承継の専門家です。今回は、当時から今日までの内外情勢の変化や活動内容について伺いました。

事業承継を促進する流れ

―2013年以降の事業承継に関する特徴的な出来事には、どのようなものがありますか?

大きく4つありますが、いずれも事業承継を促進する流れです。
1つ目は、2015年1月から相続税が増税されたことです。増税前の課税対象者は全国平均で4%程度だったものが8%に、東京都では15.7%に上昇しました。この結果、事業承継や相続に対する関心が一気に高まりました。
2つ目は、金融庁が2つのR、すなわち地域を示すリージョナル・バンキングと、世代や関係性を示すリレーショナル・バンキングを推奨してきたことです。金融機関が地域に密着して、2世代、3世代にわたってきちんと資金提供を行うという意味であり、2つのRとも事業承継を金融面から支える仕組みです。
3つ目は、専業農家にも事業承継のニーズが出てきたことです。これまで法規制が厳しかった農地においても、規制緩和により転用や貸借がやりやすくなったことが背景にあります。
4つ目は、2016年4月の経営承継円滑化法の改正です。親族内承継が減少し、親族外承継が増加するのに対応し、経営承継円滑化法を親族外にも適用することで、後継者への株式集中が図られ、安定した経営がやりやすくなりました。

―最近では「大廃業時代」という言葉もメディアに登場するようになりました。

時代がようやく、私に追いついてきたのかもしれません(笑)。
2011年12月に事業承継センターを設立したのは、東日本大震災が直接のきっかけです。実際に被災地へ支援に行き、自分がこれまで中小企業診断士として学んだ知見や経験を、どのように具体的な形にして次世代に引き継いでいけば良いのか、といったことを考えながら、今日まで事業承継センターの経営にも活かしてきました。

―熊本地震(2016年4月)の支援にも熱心に取り組まれていますね。

震災支援は私の人生のテーマの1つですので、熊本にも行きました。
実は、震災支援と事業承継は表裏一体なのです。どういうことかというと、被災した企業で経営者が高齢の場合は、立て直すのはなかなか難しいのが現実です。事業の再建、資金の借入・返済繰り延べ、家計の再建などの難題に対して、気力と体力がついていかず、廃業に至るケースが多いのです。
しかし、子どもでも従業員でも後継者がいる場合は、再建が比較的スムーズに進みます。震災があると、その地域の人たちは否が応でも事業承継を意識せざるを得なくなるわけです。私と仲間の中小企業診断士たちは、そうした地域に入り、経営の再建や人々の暮らしの再建、金融機関との関係の再構築などをお手伝いしています。

中小企業診断士だからできる「伴走型支援」

―中小企業診断士が行う事業承継の支援には、どのような特徴がありますか?

一般的に経営者は孤独といわれますが、経営者に寄り添って事業承継を支援できる人はなかなかいません。顧問税理士や金融機関は身近にいますが、税や金融といったそれぞれの専門に特化した面があります。
しかし、事業承継は単に相続税の問題だけでなく、事業全体、さらに家族の問題までを1つひとつ解決していかなければなりません。それには、幅広い知見を持った中小企業診断士が適任だと思います。
もちろん、法規制の関係から中小企業診断士にはできない業務もありますので、それぞれの専門家と協働することは非常に重要です。つまり、中小企業診断士は経営者に寄り添いながら、全体のコーディネーターとして、後継者、家族、社員、金融機関、支援機関、行政、各種専門家などをまとめていくわけです。
最近になって、一般的にも「伴走型支援」という言葉が使われるようになりましたが、私が事業承継センターを設立以来、ずっと行ってきたのは、まさにこの「伴走型支援」です。さらにいえば、事業承継を支援するということは、承継するタイミングの1~2年だけを考えれば良いわけではありません。親(経営者)と子(後継者)で事業承継の準備を行う10年間、事業を引き継いだ子の時代の10年間、そして孫の時代の10年間、合計30年間のことを考えて行うのが、本来の事業承継だと私は考えています。

(つづく)

【お役立ち情報】

【関連情報】

プロフィール

内藤 博(ないとう ひろし)

1996年、中小企業診断士登録。2011年、事業承継センター株式会社を創業。実家の廃業清算を目の当たりにし、事業承継支援を天職と考え、自身の獲得したノウハウと知識を後進に伝えることをミッションとする。全国での事業承継士講演会や出張事業承継相談会にも積極的に取り組んでいる。著書は、「3人の事業承継士が現場で見つけた秘訣集 これから事業承継に取り組むためのABC」(税務経理協会)、「会社の“終活”読本―社長のリタイア<売却・廃業>ガイド」(日刊工業新聞社)など。