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地方「元気」企業ランキング第1位 (株)明屋(はるや)書店代表取締役社長 小島俊一さん

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第2回】とても大変で、とても楽しい仕事

2017年6月6日更新(取材日:2017年3月15日)

(株)明屋(はるや)書店を再建に導かれた小島俊一さん。第2回は、中小企業診断士との出会いを中心にお話しいただきます。

厳しくも温かい恩師

―中小企業診断士資格を取得されたのは、どのようなきっかけですか?

資格を取得したのは、いまから15年以上前です。勤務していたトーハンの推奨資格になっており、社外から講師を呼んで、中小企業診断士講座を開いていました。そこで勉強をして、中小企業診断士試験に合格しました。

―中小企業診断士になられて、どのような活動をされましたか?

中小企業診断協会に入り、さまざまな勉強会に参加しました。特にお世話になったのが、中小企業診断協会の副会長も務められた故・野村廣治先生です。中小企業診断士になりたての頃から、野村先生が主催していた勉強会に参加し、ご指導いただきました。
野村先生は、決して甘いことはおっしゃいませんでした。先生いわく、「中小企業の経営者は、家・屋敷を風呂敷に入れて、塀の上を全速力で走っているようなものなんだ」と。中小企業の経営者は、それくらいギリギリのところでやっています。
そして先生は、「中小企業診断士たる者、そうした中小企業の経営者を本気で支える覚悟が求められる。覚悟はあるのか? 小島君!」と私に問いかけました。ギリギリでやっている中小企業の経営者に対し、生半可な気持ちでフィーをもらって、「中小企業診断士でござい」と言っている場合ではない。資格を取得してからも、もっと勉強しなさいということです。

―厳しいですね。

でも、野村先生がおっしゃったことは、すぐに痛感しました。2005年頃、私はトーハンから石川県金沢市の書店に出向し、経営不振に陥っていたその書店を、経営企画室長という立場で再建しようとしたのですが、うまくいきませんでした。当時の私はまだまだ、経営の勉強が不足していたのです。
そうして私が落ち込んでいると、野村先生は東京から激励に来てくれました。「旅行に来たよ」と笑顔でおっしゃって、奥様と私の3人で食事をしたのですが、先生の温かい心遣いが本当に嬉しかったです。

本屋が売っているものは何か?

―金沢で書店再建に苦しまれた経験が、現在の活動につながっていらっしゃるのですね。最近は新しい形の書店をオープンされたと伺いました。

松山市(愛媛県)と周南市(山口県)に、「SerenDip(セレンディップ)店」という新しい形のお店をオープンしました。一般的な街の書店とは、ひと味違う書店です。「セレンディピティ(偶然の幸運をつかむ能力)」をキーワードに、本だけでなく、雑貨やコスメなども取り揃えた楽しいお店です。

―どのようなきっかけで、新しい形の書店を作ろうと思われたのですか?

スタートは、ピーター・ドラッカーの「あなたの会社は何を売っているのですか?」という問いです。たとえば、コンビニエンスストアは便利を、ドラッグストアは健康を売っています。では、本屋は何を売っているのか? もちろん、「本屋は本を売っています」と言ってしまってはおしまいで、本そのものは紙の塊にすぎません。
そうではなく、「お客様が本を買った先に何があるのか?」を意識しなければ、本屋の未来はありません。抽象度を高めると、私たちの役割が見えてきます。たとえば答えの1つは、「お客様の明日を豊かにすること」。答えは、社員1人ひとりで違っても構いません。
そうやって私たちの役割を考えると、本だけを売っている場合ではないことに気づきます。たとえば料理の本があったら、食器が置いてあっても良い。お酒の本の隣に、おつまみがあっても良い。本屋側の都合ではなく、お客様の側に立って商品が並んでいる書店。それが「SerenDip店」です。

―楽しそうな書店ですね。

書店に置かれている本は通常、トーハン等の取次会社のプレパッケージが多いんです。でもSerenDip店では、並べる本を私たちが選んでいます。「育む」というコーナーに何を置くかを、社員自身が考えるのです。1つの書店に7~8万冊の本があり、とても大変な仕事ですが、楽しくもあります。
たとえば、「男を磨く」というコーナーがあります。そこにどのような本を置くかとなると、書店員のセンスが問われます。これは、当社の女子社員が選定しました。白洲次郎の本、伊集院静の本、さらに池波正太郎の本が置かれていたりすると、「やるな!」という感じがします。そんな書店員の知恵やセンスが、さまざまなコーナーに散りばめられているのです。
書店員は皆、本が好きです。単なる作業をしたくて書店員になったわけではありません。「SerenDip店」は、書店員にとって楽しく、やりがいのある書店です。

(つづく)

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プロフィール

小島 俊一(こじま しゅんいち)
1957年福岡県生まれ。明治大学卒業後、(株)トーハンに入社し、執行役員近畿支社長・同九州支社長等を歴任。2013年、(株)明屋書店代表取締役に就任。『週刊ダイヤモンド』2015年12月26日号「地方『元気』企業ランキング」で、300万社中第1位に輝く。2016年に初の小説『崖っぷち社員たちの逆襲―お金と客を引き寄せる革命「セレンディップ思考」』(WAVE出版)を出版。