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地方「元気」企業ランキング第1位 (株)明屋(はるや)書店代表取締役社長 小島俊一さん

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第1回】従業員はコストですか? それとも…

2017年5月30日更新(取材日:2017年3月15日)

今回は、『週刊ダイヤモンド』2015年12月26日号(ダイヤモンド社)で、地方「元気」企業ランキング第1位に輝いた(株)明屋(はるや)書店代表取締役社長の小島俊一さんにお話を伺います。

大切にしている3つのこと

―地方「元気」企業ランキング(『週刊ダイヤモンド』2015年12月26日号)で、明屋書店が第1位に選ばれたそうですね。おめでとうございます。まずは小島さんの簡単なプロフィールと、明屋書店での取組みについて教えてください。

(株)トーハン(出版取次業)の執行役員近畿支社長等を経て、2013年9月に明屋書店の社長に就任しました。当社は愛媛県に本社があり、四国・中国・九州地方を中心に80店舗以上を展開する書店チェーンです。しかし私が就任した当時は、経営不振に陥っていました。

―経営再建を期待されて、社長に就任されたのですね。

経営再建には2つの方法があります。1つは、従業員を解雇するリストラ型です。人件費を削減し、事業を整理しながら企業を再生していきます。もう1つの方法は、従業員を大切にするやり方です。私は後者でありたい。正社員を1人も解雇せずに経営を再建しようと考えました。
また、経営再建には3つの柱があります。ファイナンス、コミュニケーション、マネジメントです。多くの場合、ファイナンスに偏った経営再建が行われてしまいますが、「企業は人なり」です。従業員とコミュニケーションをとり、しっかりとグリップしなければ経営はうまくいきません。さらにマネジメント――業務自体を見直していくことで、企業は再生していきます。

―具体的には、どのようなことに取り組まれたのですか。

まずは経営者として、自分自身の考えである“3つの大切”を伝えました。「従業員を大切にします」、「顧客視点を大切にします」、「地域貢献を大切にします」の3つです。最初は従業員からも信用してもらえませんでしたが、正社員を解雇しないことを決め、逆に賃金が上がっていく仕組みを作りました。賃金カーブを作り、働いて頑張れば賃金が上がります。結果的に、正社員の賃金は1人1万円/月程度上がりました。
労働環境の改善も行いました。従業員の要望を聞いて、対応できるものは改善していく。たとえば「父の介護が必要なので、転勤は勘弁してください」とか、「トイレが汚いからきれいにしてほしい」とか。従業員とコミュニケーションをとりながら、労働環境の改善に努めました。

がんになるよりもつらいこと

―社員研修にも力を入れていらっしゃるそうですね。

四国地区と山口地区と九州地区の3ヵ所に分けて、さまざまな社員研修を実施しています。私自身が講師を務めることもあれば、外部講師にお願いして研修を行うこともあります。最近では、がん研修を実施しました。仕事とがん治療を両立させるための社員研修です。これは、あるテレビ番組を見たことがきっかけでした。

―どのような番組ですか?

乳がんになった女性が登場し、勤めていた会社にがんであることを報告しました。すると翌日、彼女の机・ロッカーにあった荷物が段ボールに入れられていたんです。「がんになったことはつらい。でも、会社の対応はもっとつらかった」と彼女は話していました。
それを見て、「自分の会社はそんなふうにしたくない」と思いました。そこで、四国がんセンターの先生にご協力をいただき、社員研修をやってもらうことにしました。
 日本人の2人に1人ががんになる時代です。最近は勤労年齢でがんになる人も多いですし、他人事ではありません。これは、先ほど申し上げた“3つの大切”にもつながっています。「従業員を大切にします」ということであれば、従業員ががんを発症しても、働き続けられる職場でなければなりません。
  これは、単なるヒューマニズムで言っているのではありません。企業経営者としても、がん対策は意味のあることなんです。「がんになった人にどう対応するか」については、他の従業員も見ています。がん患者を守るか守らないかで、従業員全体のモチベーションが変わるのです。これは、ピーター・ドラッカーのマネジメントにもつながります。「従業員はコストですか? 財産ですか?」というドラッカーからの問いかけです。「従業員は財産だ」と考えるからこそ、がんになっても働き続けられる環境を作ろうと思うわけです。

(つづく)

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プロフィール

小島 俊一(こじま しゅんいち)
1957年福岡県生まれ。明治大学卒業後、(株)トーハンに入社し、執行役員近畿支社長・同九州支社長等を歴任。2013年、(株)明屋書店代表取締役に就任。『週刊ダイヤモンド』2015年12月26日号「地方『元気』企業ランキング」で、300万社中第1位に輝く。2016年に初の小説『崖っぷち社員たちの逆襲―お金と客を引き寄せる革命「セレンディップ思考」』(WAVE出版)を出版。