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活躍中の独立診断士へインタビュー

最前線の診断士

中小企業診断士 田淵秀樹さん 舞台は世界へ――国際派診断士への道

文:岩倉 光隆(中小企業診断士)

【第1回】予想外に早くスタートした海外業務

取材日:2014年2月20日

少子高齢化に伴って国内市場が縮小する中、中小企業も海外進出を避けて通れなくなりつつあります。私たち中小企業診断士自身の海外進出についても、言葉や環境の面で、誰もが容易に選べる道ではありませんが、それを望む人は少なからず存在します。
 そこで今回は、独立とほぼ時を同じくして、海外での国際協力業務に取り組む田淵秀樹さんに、その業務内容を伺いました。

独立と同時に海外へ

― 独立までの経緯をお聞かせください。

田淵秀樹さん
田淵秀樹さん

実は、独立はかなり前から考えていました。その過程で、妻にはさまざまな提案をしていましたが、却下され続けていました。安定性をもっとも重視する妻の基準を満たせなかったのです。

2004年からは、ドイツの自動車部品工場に出向していたのですが、日本に帰ることになった2009年がリーマンショックによる不況と重なり、自動車部門ではなく、10年前に自ら飛び出した事業部に戻ることになったのです。でも、そこはやはり居心地が良くありませんでした。

とりあえずは、自身の力をわかりやすく示そうと、情報処理やQC検定などの資格を取得し、次に中小企業診断士の勉強を始めました。診断士資格は、合格時に社内で支給される報奨金が高かったのです(笑)。

その後、中小の外資系製造業の会社に転職しました。その会社は当時、約240名の社員の約半数が営業で、生産部門は外注作業者を含めて数十名の規模でした。生産に関しては決まりごとが少なく、やりたいことをかなり自由にできる環境でした。私はその会社で、生産工程を受入から出荷まで担当し、作業改善や人員管理についてもいろいろと経験することができました。

2013年1月には関西本社への異動で、単身赴任となります。そして、家賃や自宅へ帰る交通費もかさみ、家計も苦しくなってきたのを機会に妻を説得し、とうとう2013年4月に会社を辞め、独立することにしたのです。

― 海外での業務に取り組むようになったきっかけは何ですか。

提案書
提案書

退職前年の12月に、株式会社日本開発サービスという会社へ面接に行ったことです。そこはODA案件を主に担当していて、転職や独立の可能性を模索する中、自分に合いそうだと思って面接に出向いた会社でした。

担当者からは面接時に、「半年~1年間、提案書を出し続ければ、いつか競合のない案件に当たって受注できるかもしれません。経験を重視するため、最初の1件を取るのが難しいのです」と聞きました。その時点では思い切ることができませんでしたが、退職を決めた際に再度、その会社を訪ねました。

― 海外業務を最初に受注するまでの経緯をお聞かせください。

退職翌日の5月1日に、最初の提案書を出しました。カザフスタンの案件で、結果は7社中5位でしたが、会社の人からは「万が一、カザフスタンの案件が取れなくても、次にカンボジアの案件がありますから」と、なぜか「取れて当たり前」といった雰囲気でなぐさめられました。でも、その思い込みのおかげか、本当にカンボジアの案件を受注できてしまったのです。独立から1ヵ月も経っていない、5月27日のことでした。

カンボジアの案件を受注できた理由と現地での苦労

― なぜ、カンボジアの案件を受注できたのでしょうか。

カンボジアでの講義の様子
カンボジアでの講義の様子
カンボジアの食品会社
カンボジアの食品会社

国内の実績を高く評価していただいたためだと思います。前々職での品質保証の経験に加え、前職ではラインの責任者として工程全体を経験しており、自ら改善活動を計画・実施していたことが良かったのでしょう。QC検定の資格も、意外と高評価につながったようです。

― 内容についてもう少し教えてください。

カンボジアの現地中小企業経営者向けに、日本の生産方式、特に5S・カイゼンを教える案件でした。8月と1月、計2回の渡航がセットになっており、それぞれ3週間でセミナー研修を5本ずつ行い、内容は5S、カイゼンともに1日2時間の研修を5日間と、そのほかに週末の1日間・2日間コースを行うものでした。講義は、プノンペン王立大学の敷地内にある日本人材開発センターで行いました。

講義内容については、研修後のアンケートで「それは日本の話ですよね? カンボジアでも適用できるのですか?」と書かれたこともありました。実際にカンボジアの企業を訪問すると、たとえば200キロの生姜の山を前に、子どもたちがせっせと皮を剥いています。全部剥き終わるには丸2日もかかるそうで、そういった場所で1秒、2秒の無駄を省くIE(Industrial Engineering:生産工学)の話をしてもまったくピンと来ないのです。

ただ、受講生はトヨタレベルのカイゼンではなくても、少しでも良くなるヒントを求めて研修に来ています。輸出やASEAN統合後の市場を見据え、HACCPやISOに取り組む企業も増えています。そうした受講生の要求に応えるため、現地で活用できるように内容を調整する必要があります。環境も価値観も異なる中、日本の考え方だけで研修を行っても伝わらないのです。

また5Sについては、現地のセンターでも取り組んでおり、経験もそれなりに蓄積されていますが、現地のスタッフからは「日本人だから受講生を呼べますが、私たちがやってもこんなには集められません」と言われました。戦後、著しい発展を遂げた日本と日本人は、"ブランド"と認識されているようです。

― カンボジアではどのように過ごされましたか。

プノンペンでは帰国日を含め、土日もほぼ毎日、講義を行っていました。そのため、せっかくカンボジアに2回も行ったのに、アンコールワットには行けていないのです。わずかな自由時間は、市場に行ったり、トンレサップ川で釣りをしている人々を見たりしていました。現地では、日本よりもゆっくりと時間が流れているように感じましたね。

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(つづく)

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プロフィール・団体概要

田淵 秀樹(たぶち ひでき)
田淵コンサルティングオフィス代表、中小企業診断士。1965年兵庫県生まれ。明石工業高等専門学校卒業後、総合電機メーカーに入社して品質保証業務に従事。2013年に独立・開業し、現在は途上国での産業振興支援を中心に、受験校講師、執筆も行う。カンボジア、モンゴル、エチオピアでは、製造業経営者向けに生産管理などの講義と実地支援に従事。

会社名 田淵コンサルティングオフィス
設立 2013年5月
所在地 神奈川県横浜市戸塚区
ホームページ http://tabuchi-smec.com/
TEL 080-7012-5437