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活躍中の独立診断士へインタビュー

最前線の診断士

株式会社経営技術研究所代表取締役 藤井春雄さん 自らを磨き続けることで企業の改革・改善に大きく貢献し、中小企業診断士の可能性を示し続ける

文:岩倉 光隆(中小企業診断士)

【第1回】不可能を可能にするコンサルティング

取材日:2013年12月10日

平成25年11月に開催された平成25年度「中小企業経営診断シンポジウム」において、中小企業庁長官賞を受賞した論文「中堅企業D社での"ものづくり改革・意識改革"カイゼンの基本(IE)徹底による生産リードタイムの大幅短縮⇒1/15」は衝撃的な内容でした。107日かかっていた生産リードタイムをわずか7日にしたというもので、一見不可能とも思われることを可能にするコンサルティングの極致に近い内容でした。
 今回は、発表者の藤井さんにその真髄を伺いました。

くり返し、気づきを促すサイクルを作る

― 受賞論文の対象となる会社を指導したきっかけをお聞かせください。

藤井春雄さん

リーマンショックの影響による、補助金活用の研修依頼がきっかけで、最初は1年で終了する予定でしたが、景気回復の遅れで2年になりました。その中で研修を聞いていた会社の幹部が、改善を本格的にやらなければならないと思い始め、引き続き改善の本格指導を依頼されました。改善は自信のある分野でしたので、お引き受けして改善活動を始めました。

― 改善は、どのように進めていかれたのですか。

まずは、幹部社員に「銭になる(付加価値のある)仕事をどれだけやっているのですか?」と問いかけます。それと同時に現場に立ってもらい、「ムダとは何か」を教えます。

たとえば、機械の段取り替えでもすべてムダと見て、ネジを締める位置も標準化する。「ここまで締めなさい」と、最初はテープで印をつけておいて、最適なねじ締めの位置に傷で印をつける。そういうことを続けていくと、ムダがわかってきます。

それから、ヒントは言っても、答えはわざと言わずに自分たちで考えてもらいます。すると、彼らは自分たちが楽にできる方法を一生懸命に考える。そして、できたらほめる。これをくり返していくのです。

― 気をつけることは何でしょうか。

ケチをつけては絶対にいけません。50点でも良いから、できたらほめる。ほめられると嬉しくなり、さらに頑張るのが人間で、次はさらに上の60点を目指す。これをくり返します。

けなすとやる気を失ってしまいますから、コンサルタントはそこに気をつけるべきだと思います。

それから、先生として偉そうにするのもいけません。私たちコンサルタントが指導を終了し、会社を去った後に、その会社の社員が自分たちでできるようになることが大切です。

成果が出てほめられると、あまり仕事ができていなかった人でも自信を持つようになります。これが、人間のやる気を引き出す秘訣です。私たちが指示ばかりしていると、相手のやる気をつぶし、"指示待ち人間"を作ってしまいます。

徹底的に気づかせ、その過程でほめる。3つほめて、2つはアドバイスをするくらいの感覚です。私たちは、基本をわかりやすく教えること、それだけでいいのです。

信念を持って目標を立て、実行してもらう

― 気づいた後は、どのようにしていくのでしょうか。

藤井春雄さん

工程において、加工と運搬、検査と停滞のうち、多くの会社で90%以上の時間を停滞が占めています。私は幹部社員にあえて、「工程全体で107日のうち、付加価値を生む加工の仕事は2日か、長くても3日。残りはほとんど停滞です。おたくは倉庫なのですか?」と言いました。

社員側も最初はカチンとくるようですが、だんだんと、「自分たちはムダばかりしていると嫌味を言われたけれど、こういうことか」と気づいてきます。「『生産管理担当は特急乱発で、現場の邪魔をしている』と言われたけど、何もせずに自動的に動く仕組みはないか」などと考えさせ、「あるべき姿」や「ベンチマーク」を明確にするのです。「1年では無理で、2~3年はかかる」、「富士山に登るのに、どの登り口にしようか? 御殿場口から登ろう」などと決めるのが方針ですね。その次が目標設定(いつまでに、何日で)で、それさえ決まればあとは現場にやってもらうだけです。

― 今回の生産工程改善によるリードタイム短縮は、一見不可能を可能にしたようにも見えますが、秘訣は何ですか。

決して、不可能を可能にしたわけではありません。むしろ、「あるべき姿を絶対に達成する」と皆が信念を持つことが重要で、「無理じゃないかな」と思うと、できることもできなくなります。

たとえば、現場の役職者数人が「無理だ」と思うと、これが活動の足を引っ張ります。しかし、トップの旗振り役の「絶対にやり遂げるんだ」という信念が腹落ちしてくると、不思議なことに改善ができてくる。良い結果が出て、だんだんと「やれそうだな」、「やるぞ」となったときに、信念が固まってくるのです。ですから、私たちコンサルタントは「大丈夫だよ」と従業員の不安を取り除いてあげなくてはいけません。

実現のためには、コンサルタント自身が信念を持たなければいけませんし、会社の皆さんにも信念を持ってもらうことが大切です。そのうえで、皆さんにお願いしてやっていただくだけです。

とは言え、ついつい言い訳やできない理由を先に考えたくなるものです。そのようなときは、「言い訳を考えるのではなく、できる方法を考えましょう。言い訳を考え始めたら、時間のムダをしていると思い、どうすればできるかを考えてください」と現場でも伝えています。

経営上の課題と問題点は、改善目標がわずかだと見えてきません。私が大事にしているのは、「2分の1、0、2」という考え方です。「おい、半分にできないか?」、「おい、0にできないか?」、「おい、2倍にできないか?」という大きな目標を投げかけて考えさせるのです。

このように現場の社員に考えさせ、私たちはその内容を聞きながら、改善のための叩き台を作っていきます。

その過程で大切なのは、管理者のウソを見抜くことです。管理者が立派なことを言っていても、実は信念がなかったり、方針管理ができていなかったりすることも多くあります。それを見抜きながら、全体を把握して重点を絞り込み、その中から本当に重要なことを見分けます。そして、3年程度の大日程計画、1~2ヵ月程度の小日程計画などの実行計画を作るのです。あるべき姿を自分たちで考えさせることも、大変大切なことです。

(つづく)

【参考ホームページ】

藤井 春雄(ふじい はるお)
中小企業診断士。昭和46年3月、神奈川大学工学部卒業後、大同製鋼(株)[現:大同特殊鋼(株)]入社。生産管理、生産技術改善(IE、VE、QC)、全社システム開発プロジェクト(物流)リーダーを歴任し、平成7年に独立。独立後は、経営改善指導[経営指導、改善、TPS(トヨタ生産方式)、TPM、コストダウン指導]やISOの指導など、多分野での指導と数多くの海外指導実績もある。その他大学講師、講演など手がけるとともに、多数の著書を執筆。代表作に『よくわかる「IE 7つ道具」の本』『よくわかる「ジャスト・イン・タイム」の本』『よくわかる「ポカヨケ」の本』(日刊工業新聞社)などがある。

会社名 株式会社経営技術研究所
設立 1997年2月
所在地 〒464-0075 名古屋市千種区内山3-28-2 KS千種303
ホームページ http://www.keieigijyutu.com/
TEL 052-744-0697
FAX 052-744-0698