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活躍中の独立診断士へインタビュー

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マーケティングの力で企業の売上を伸ばす! 松原和枝さん

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第2回】マーケティングで、ネットショップの売上が5倍に

取材日:2013年1月31日

三菱商事でマーケティングスキルを磨いた松原さんは、コンサルティング会社勤務を経て、合資会社インスティルを設立します。今回は、会社設立の経緯やコンサルティングの具体例についてお話しいただきます。

マーケティングを浸透させる

― 三菱商事には、どのくらい勤めていらしたのですか。

講演風景
講演風景

9年間勤務しました。仕事がルーティン化してきた中で、興味が出てきたのがコンサルティング分野でした。そこで知人の紹介を受け、独立系のコンサルティング会社に転職しました。その会社は、データベースマーケティングのコンサルに強みがあったのです。たとえば、お客様の属性データと購買履歴データを合わせることで、「どんな人が、いつ、何を、どのタイミングで買っているのか」が見えてきます。診断士試験のキーワードで言えば、FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)やCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)に関する分野ですね。

― なるほど。診断士試験を受ける前から、マーケティングコンサルを実践していたんですね。

はい。約1年間のコンサルティング会社勤務を経て、平成12(2000)年に合資会社インスティルを設立しました。勤務していたコンサルティング会社とは業務委託契約を結び、これまでやっていた仕事は引き続き受け持ちました。最初からお客様がいる、リスクが少ない形での独立でした。

― 会社を設立するとは、思い切りがいいですね。個人事業主での独立は考えなかったのですか。

個人事業主ですと、企業と取引する際に断られる可能性がありますので、最初から会社設立の意向を持っていました。コンサルティング会社は、多大な初期投資が必要な業種ではありません。当時の制度の中で、法人格があって最低資本金が少なくて済む合資会社を選びました。会社設立に関する書籍を買い、定款作成なども自分で行いました。

― インスティルという会社名の由来は何でしょうか。

当時、大学時代の友人であるスチュワード麻子さん(紅茶研究家)が、ロンドンで「インフューズ(Infuse)」という会社を経営していました。インフューズとは、「お茶などを浸出させる」という意味です。すごく心地良い響きだったので、「私もインフューズという名前を使ってもいい?」と訊いたら、それはちょっと待ってと(笑)。その代わり、「インスティル(instill)という名前はどう?」と提案されました。インスティルには、「考えを人に浸透させる」という意味があります。ジワジワと考えを吹き込んでいくというニュアンスです。

日本では、マーケティングの概念を持たずに活動している企業も少なくありません。そこに、マーケティングを少しずつ浸透させていく。私が作るマーケティングサービス会社にぴったりのイメージでしたので、社名をインスティルに決めました。

― 会社勤めと独立では、どのようなことが違いますか。

まず、責任の範囲が異なります。会社勤めですと、基本的には言われたことを遂行すればよいですが、独立すると、決断や実行すべての責任が自分にかかってきます。常に主体的に考え、行動を起こしていかねばなりません。一方で、会社勤めですと組織の一員として行動するため、理不尽な場面に遭遇することもあり、そのストレスは想像以上かとも思いますが、独立後はすべての決断を自分で行うため、トラブルが生じても納得して受け入れられます。理不尽なストレスが減ったというのは、あるかもしれません。

独立して大変なのは、自分が病気になったときと、仕事の量と質の管理です。独立当初、何でも仕事を受けてしまって、回らなくなってしまった時期がありました。仕事の質が落ちてしまい、顧客にご迷惑をかけ、リピート受注をいただけなくなったこともありましたね。来た仕事を何でも引き受けるのではなく、やらないことを決めることが大切だと、だいぶ後になってから気づきました。

売上が前年の5倍に

― 会社設立当初は、どのような仕事をしていらしたのですか。

松原和枝さん

最初は、POS分析や顧客データ分析、レポーティングを中心に行っていました。データ分析を行うと、見えないことが見えてきます。たとえば、百貨店での購買データ分析では、外商以外でも数百万円単位の買い物をする20代の女性のお客様がいらしたりして、驚いたことがありました。ブランドの嗜好にも当然ながら関連性があり、Aブランドが好きな人はBブランドも買うけれど、Cブランドはまったく買わないなどの傾向を把握できます。

― お客様の傾向がわかると、販促に役立つわけですね。

ターゲット選びや品揃えに活用できます。たとえば、DMを打つのであれば、購買する確率が高い人に発送したほうが効果的・効率的です。データ分析の結果でDM発送先を選定すれば、高い成果が期待できるわけです。平成17(2005)年以降、ネット販売が盛んになるにつれ、ネットショップからのマーケティング分析依頼も増えていきました。

― どのような分析をされるのでしょう。

最初に手がけたのは、花のネットショップの分析です。何と言っても、母の日向け商品の売上が、年間で圧倒的に高い割合を占めます。手始めに前年の販売データを分析してみたところ、母の日の7週間前から売上が上がってくることがわかりました。しかし、1品あたり販売単価は、母の日が近づくにつれて下がっていくんです。

― どういうことでしょうか。

早い段階から購入するお客様は、お母様のためにこだわりの商品を選びたい方たちだという仮説を立てました。商品を吟味して、良い品を母親にプレゼントしたい。一方、母の日直前になると、「何でもいいから、とにかく何かお母さんに贈らなければ」という男性の駆け込み客が多い(笑)。

― なるほど。顧客とそのニーズが変わってくるんですね。

データを分析すれば、販売戦略が見えてきます。そこで、母の日よりかなり前の時期には、高価格帯でこだわりの商品を揃えました。一方で、母の日が近づくにつれて、徐々に廉価な商品の品揃えを厚めにしていったのです。色も、「女性に贈る花と言えばピンク」と考える男性客が多いことが前年実績からわかったので、ピンクを中心に変えていきました。駆け込み客向けの品揃えですね。結果的に、4月1日~母の日までの売上が前年同期の2倍、最終週の売上は前年同期の5倍になりました。

(つづく)

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松原 和枝(まつばら かずえ)
合資会社インスティル代表。中小企業診断士。日本女子大学文学部国文学科卒業後、PR会社、英国留学を経て、三菱商事(株)、(株)ジェリココンサルティングに勤務。平成12(2000)年に合資会社インスティルを設立。一貫して流通業のマーケティングデータ分析業務に携わり、かかわった流通業のデータ分析は150社以上。平成18(2006)年よりマーケティング・コンサルティング事業を開始。平成21(2009)年4月中小企業診断士登録。

会社名 合資会社インスティル
所在地 東京都中央区銀座6丁目6-1 銀座風月堂ビル5F
ホームページ http://www.go-instill.com/
TEL 03-5537-7563
FAX 03-5537-5281