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事業承継支援のために中小企業診断士4名が手を組んだ「事業承継センター株式会社」

取材・文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第1回】中小企業診断士4名が設立した事業承継センター株式会社とは[2]

取材日:2013年1月12日

後継者の意識を変える後継者塾

― 事業承継センターは、具体的にはどのような事業承継支援をしているのでしょうか。

後継者塾
後継者塾では考えさせることに重点を置く

1つ目は、「後継者塾」の開催です。中小企業診断士が得意とする能力に、「教育する力」があります。この力を事業承継の分野でどう活かすかを考えたときに、後継者塾に行き着きました。平成25年2月で、2期目が終了します。経営者塾では東條さんが塾頭で、東條さんが企画して、10回シリーズのカリキュラムを作りました。その中には合宿があったり、ビジネスゲームが入っていたり、ケーススタディがあったりします。座学だけではない、中小企業診断士ならではの幅広い知識を提供するカリキュラムにしました。

塾の素晴らしい点は、参加者が仲間を作れることです。後継者は、経営者でも創業者でもなく、独特のジャンルの存在です。自分の周りにはすでに経営資源がありますが、それは自分が作ったものではない。すでにあるものを身にまとって、社長になります。運命と言うか、生まれたときからその宿命を背負った人、それが後継者なのです。

いままでは、後継者同士が、似たような境遇を語り合う場がありませんでした。皆さん、後継者ならではの共通の悩みがあり、共通項でくくると8割は同じ悩みで苦しんでいます。その仲間とともに、切磋琢磨しながら勉強するから、成長が早いんです。

塾が進むと、後継者の顔つきが変わって、引き締まってきます。そうすると、塾の進行途中に実際の事業承継が進み始めます。急に父親の体調が悪くなることもあれば、後継者自身が変わってきたことで、代表交代を始めてしまおう、となることもあります。事業承継を支援する私たち専門家が側にいるという安心感も、要因かもしれません。塾生から、「父がその気になったので、先生、事業承継のコンサルティングをしてください」と依頼されることもあります。

後継者塾は、東京では平成25年5月から第3期がスタートします。また、九州の2ヵ所でも開催されます。九州では、地域の税理士さんが後継者塾を主催し、当社はコンテンツと講師を派遣します。同様に、全国の税理士さんや中小企業支援者から、後継者塾を開催したいという依頼を受けていますので、今後はどんどん全国に拡がっていくでしょう。

具体的な事業承継支援の手法

― 事業承継コンサルティングは、具体的にはどのように行っているのでしょう。

内藤博さん
自らの技術も承継している内藤さん

私たち4人は、年齢がちょうど10歳刻みなんです。私は60歳を超え、東條さんが50歳近く、金子さんが40歳、山口さんが30歳代。事業承継のコンサルティングをする場合には、必ず2人で担当することにしています。たとえば、私が現経営者<譲る側>と話をして、山口さんは後継者<受け取る側>と話をするというように、年齢の近い各々が、双方のケアをするためです。当然、コストはかかります。利潤のみを追求するうえでは敬遠するこのやり方を、当社はあえて採用します。なぜなら、事業承継センターの設立目的は、「私たちのノウハウを若手の診断士に承継すること」にもあるからです。若手の中小企業診断士もこのやり方なら、現場でのOJTで勘所を吸収し、半年もすればノウハウを取得できるでしょう。世代の異なる中小企業診断士が方向性を共有し、現経営者と後継者双方の立場に立ってコンサルティングをしていきます。そして、何と言ってもこのやり方に、お客様にはとても満足していただいているのです。

事業承継を円滑に進めるためのノウハウを、常に帳票などのツールに落とし込んでいるのも当社の強みです。ツールがあると、事業承継でやるべきことと、その進捗が「見える化」します。たとえば、中小企業経営承継円滑化法があります。これは、事業承継にとても効果的な法律であることは間違いありませんが、実際に活用するには、きちんとした説明が必要です。現状では、公的に提供される説明資料や実務に必要なツールが、不足していると感じています。

たとえば、「家族会議が必要」とあります。しかし、家族会議の開催方法、中身、議事録については、説明が不足しています。ですから、私たちは関係機関にその都度確認しながら、試行錯誤で経験を重ねてきました。いまでは、社長が最初に話す台詞から、決まっている進行シナリオ、最終的に作成する合意書のフォーマットなども持っています。そういったものがないと、家族会議をやっても、いつもの食事をしながらの会合と同じになってしまい、決めるべきことが決まりません。事業承継と財産分与がごちゃ混ぜとなって、ケンカになることも少なくないのです。

家族会議の目的は、現経営者の資産の中から、自社株式の後継者への集中移管、つまり経営権の承継さえ確定すればいいのです。目的が明確になっているから、決めるべきことが決まり、中小企業経営承継円滑化法活用の準備が進むのです。そこは、税務の問題の前段階です。タイムスケジュールも長期になりますから、顧問契約をしていただいたうえで、時間をかけて関与させていただけないと、事業承継の支援はできません。「成功報酬で、中小企業経営承継円滑化法適用だけのコンサルティングをやってくれないか」というお話をいただくこともありますが、このような場合は、お引き受けしていません。

私たちの事業の特徴として挙げられるのは、信用金庫さんとの連携です。信用金庫さんはリージョナルバンクとして、地域の中小・小規模企業を支援していますが、その支援テーマの中で、事業承継が占める割合が大きくなっています。

当然、信用金庫や会計事務所、支援組織の内部で実務にあたる「自前の事業承継の専門家」が必要になります。そうした支援機関のニーズに応えて、職員さんへの研修・OJT教育も行っています。これは、経済産業省のネットワークアドバイザー業務の理念にも合致しています。

私たち4人は、それぞれ信用金庫さんと連携し、職員さんと一緒に現場を歩いています。そうすることで、OJTと同時に、各信用金庫さんのお客様の中で、事業承継に悩みを抱えている方がいらっしゃったら、私たちに直接相談をしてくれるようになっています。

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(つづく)

【参考】

内藤 博(ないとう ひろし)
2002年中小企業診断士として独立。2011年事業承継センター株式会社を創業、より広範な事業承継の支援にあたる。次世代の専門家育成こそが、残されたミッションであると確信し、事業承継セミナー、事業承継専門家育成の研修・OJT教育に多くの時間を費やしている。

著作 「いちばん優しい事業承継の本」(共著)税務経理協会、「事業承継ノート・自分で作れる未来予想図」多摩信用金庫ウインセンター
参加組織 (一社)東京都中小企業診断士協会城西支部、事業承継研究会、BCP/CSR研究会
役職 「事業承継センター株式会社」代表取締役、関東経済産業局中小企業支援ネットワークアドバイザー、東京商工会議所中小企業相談センターコーディネーター、多摩信用金庫事業承継支援コーディネーター、農商工連携農業6次化専門指導員、高千穂大学経営学部事業承継コース非常勤講師、東京ノスタルジックカーショー広報委員長
E-MAIL hnaito@jigyousyoukei.co.jp

会社名 事業承継センター株式会社
設立 2011年12月
所在地 東京都豊島区北大塚2-3-12-702
ホームページ http://www.jigyousyoukei.co.jp
E-MAIL info@jigyousyoukei.co.jp
TEL 03-6903-7186
FAX 03-6903-7271