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被災事業者の復旧・復興支援に貢献する「岩手県中小企業診断士協会」

取材・文:松林 栄一(中小企業診断士)

【第1回】経済産業大臣賞に輝く「中小企業等グループ補助金」の計画策定支援

取材日:2012年4月6日

今回から3回にわたって、一般社団法人岩手県中小企業診断士協会(以下、「岩手県協会」)を取り上げます。岩手県協会の前身「社団法人中小企業診断協会岩手県支部」は、平成24年3月、東日本大震災における「被災中小企業の復旧復興支援に係る貢献者」として、経済産業大臣賞を受賞しました。
 津波により、沿岸部に甚大な被害を受けた岩手県。地元の中小企業診断士は、被災事業者の復旧・復興に向け、どう行動してきたのか、そしてその中で見えたものは何かをお伝えしていきます。
第1回は、震災後の被災事業者支援の様子と、経済産業大臣賞の受賞理由となった「中小企業等グループ補助金」の復興事業計画策定を中心に、岩手県協会の宮健会長と猿川裕巳理事にお話を伺います。

復旧・復興支援活動はこうして始まった

― まず、岩手県協会の構成について教えてください。

宮健・岩手県協会会長
宮健・岩手県協会会長

宮:岩手県協会には中小企業診断士39名が所属しており、そのうちいわゆるプロコンは10名強です。

― 昨年3月11日の震災直後の状況はいかがでしたか?

宮:私は盛岡市内に住んでいますが、震災から数日間は市内でも停電や断水になり、自分を守ることで精一杯でした。その後、建物流失など深刻な被害が出ている沿岸部に行こうと思いましたが、ガソリンが入手できず、なかなか行けませんでした。

― その後、県商工会議所連合会と県商工会連合会に、協会として協力を申し出て、支援がスタートするわけですね。

仮設住宅で開催された青空相談会
仮設住宅で開催された青空相談会
(釜石市、2011年8月)

宮:はい、各連合会を訪問したのは3月下旬、初めて沿岸の被災地に赴いたのは4月初旬でした。被災地のためにできることとして、5月から9月まで、弁護士・税理士など他の士業と協力して、「ワンストップなんでも相談会」を延べ9回開催しました。毎回、40人前後の相談者が訪れました。

― 相談内容はどのようなものが多かったですか? また、時間の経過につれて内容は変わりましたか?

宮:3~5月頃は、「すべてを流され、今後どうしたらよいかわからない」という、先の見えない不安を訴える相談が主でした。やがて、相続などの具体的な法律問題や、債務免除・二重ローン問題など資金面の相談が多くなりました。

「中小企業等グループ補助金」の計画策定支援に取り組む

猿川裕巳・岩手県協会理事
猿川裕巳・岩手県協会理事

― 今回の経済産業大臣賞受賞につながった、「中小企業等グループ補助金」についてお聞きします。まず、この事業のスキームはどのようなものですか?

猿川:被災地域の中小企業等のグループが復興事業計画を作成し、地域経済・雇用に重要な役割を果たすものとして県から認定を受けた場合に、施設・設備の復旧・整備に対して国から1/2、県から1/4、合わせて3/4が補助されます。

― では、中小企業診断士はそこにどのように関わっているのでしょうか?

宮:この補助金を受給するためには、書類審査とプレゼンテーションを通過しなければなりません。中小企業診断士は被災地に赴き、多くの事業者の強みを活かしながら、全体としてまとまりのある計画書ができるようにサポートしています。その他に、協会事業として、県からこの事業の審査委員を委託されています。

― 受賞理由にある宮古市・山田町での復興事業計画策定は、どのように始まったのでしょうか?

宮:この地域では、基幹産業である水産加工業及び関連事業者の、ほぼすべての工場・設備が全壊・流出しました。宮古市の佐藤産業振興部長からお電話があり、「『中小企業等グループ補助金』のグループを5つ立ち上げたいので、計画作りを手伝ってほしい」と依頼されたのが始まりです。

すべてが流失した状態からスタートし、認定を取り付ける

大津波の爪痕が痛々しい
大津波の爪痕が痛々しい
(大船渡市、2011年4月)

― 実際に計画作りを支援する中では、どのようなご苦労がありましたか?

宮:さっそく、協会所属の中小企業診断士が現地に赴き、復興事業計画の策定支援に取りかかりましたが、被災事業者の決算書やパソコン等が流失し、計画を作るための基礎資料がない状態から始まりました。税務署や取引金融機関に決算書の提供をお願いし、その他の必要書類の作成にも迅速に対応することにより、県の認定を取り付けることができました。

― 表彰について、どこかの機関から推薦があったのでしょうか?

宮:東北経済産業局からの推薦でしたが、宮古市の産業振興部長が診断協会を信頼してくださったのが発端となり、被災者の立場に立った親身な対応が関係者に評価されたものと思います。中小企業診断士に対する信頼と期待の高さを、ひしひしと感じました。

経済産業大臣賞の表彰状と宮会長
経済産業大臣賞の表彰状と宮会長

― 宮古市・山田町での復興事業計画策定は水産加工業でしたが、「中小企業等グループ補助金」はその他の産業にも利用されていますか?

猿川:岩手県固有の事情として、昨年3月に津波の被害を受け、「まずは秋のサンマと冬場のサケに間に合わせたい」というのがありました。そのためには漁船と採れた魚を冷凍冷蔵する施設が必要なので、まず造船と水産加工業を中心にグループ補助金が認定されました。続いて、水産加工以外の製造業、旅館・ホテルなど観光関連産業でも、認定実績が出ています。平成24年3月末の時点で、累計300社以上がこの補助金の恩恵を受けています。

― なるほど、よくわかりました。それ以外のアプローチで、中小企業診断士の復旧復興への貢献というと、どのような形があるのでしょうか?

宮:総合的なワンポイントアドバイスや二重債務問題への対応のために設置された、「岩手県産業復興相談センター」への人的協力が挙げられます。次に、そのお話をいたしましょう。

(つづく)

【参考URL】

※ 岩手県協会の取り組みは、P6で紹介されています。

プロフィール

宮 健(みや けん)
早稲田大学商学部卒業後、岩手銀行入行。昭和40年診断士登録。金融支援を中心に、経営計画書作成支援等を行う。講演活動、新聞のコラム執筆、岩手ケーブルテレビジョンへの出演等に加え、『二足のわらじ~元銀行員の逆説的人生論~』(文芸社)、『新・ズバリ寸評~東日本大震災編~』(日刊岩手建設工業新聞社)など11冊の著書がある。平成13年から診断協会岩手県支部長、現在岩手県協会の会長及び日本経営診断学会理事・東北部会長を務める。
・宮経営コンサルタント事務所 http://www.ictnet.ne.jp/~miyamiya/

猿川 裕巳(さるかわ ひろみ)
岩手県中小企業団体中央会に勤務し、中小企業組合支援、高度化事業診断等を担当。平成8年診断士登録後は、観光関連産業支援ポータルサイト開発、地域資源活性化コーディネート事業等に従事する一方、旅館・ホテル業等の企業再生支援に取り組む。平成22年税理士資格取得、「猿川裕巳税理士事務所」を開設。岩手県協会の理事を務める。