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目指せ! 中小企業診断士

私たちが中小企業診断士を目指した理由[製造業編]

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第1回】製造業経営に診断士資格を活かす―福田裕司さん

取材日:2015年11月12日

「目指せ! 中小企業診断士」の「私たちが中小企業診断士を目指した理由」では、これまでIT業界編(中村秀剛さん小早川渡さん)・金融業界編(椿山道正さん井上真伯さん)を掲載してきました。今回は製造業編として、製造業出身の2名の中小企業診断士にお話を伺います。
 第1回は旭化成カラーテック(株)代表取締役社長の福田裕司さんです。

コツコツと努力する

―福田さんは中小企業診断士でもあり、会社経営者でもあるのですね。

はい。名刺にも「中小企業診断士」と入れています。名刺交換をすると、「診断士資格をお持ちなのですか?」と少し驚いたような反応をいただくことがあります。会社経営者で中小企業診断士でもあることを珍しく思われるのかもしれません。

―これまで、どのようなお仕事をされてきたのですか。

1980年に同志社大学商学部を卒業し、旭化成工業株式会社(現・旭化成株式会社)に入社しました。合成樹脂(プラスチック)を製造・販売する事業部に所属し、主に企画管理を担当してきました。企業でいえば、経営企画室のような役割ですね。事業部長のもとで製造・販売・開発・品質管理など各部門の調整役を務め、事業部全体の運営に携わる役割です。

そのような中、1998年に汎用合成樹脂の合弁会社に出向したことが転機となりました。製造業の海外移転が進み、国内での需要が落ち込む中で自身の今後に不安を感じたのです。「何か強みを持たなければならない」と感じて取り組んだのが中小企業診断士の学習です。

―将来への不安から、診断士資格の学習を始められたのですね。

2004年秋から通信教育で学習を始め、2005年の1次試験に合格しましたが、2次試験は不合格でした。翌年、2次対策のために資格スクールに通学しましたが、そのときの担当講師の言葉をいまでも覚えています。「私は診断士試験に受かるための講義はしない。皆さんがよいコンサルタントになるための講義をする」と。単なる受験テクニックではなく、コンサルタントとしての心構え・視点、ロジカルシンキング、情熱などさまざまなことを学びました。

会社に通いながらの学習は大変でしたが、コツコツと努力し、愚直に取り組みました。このことは製造業の仕事にもつながります。ものづくりはコツコツと努力し、小さな改良を積み重ねていくことが大切です。中小企業診断士の学習と製造業の仕事はとても似ていると思います。

製造業経営に必要なこと

―2006年の2次試験に合格し、中小企業診断士になられたのですね。

その頃から「いつかグループ会社の経営に携わりたい」と考えるようになりました。中小企業診断士となり、自信がついたのかもしれません。とにかく学んだものを発揮したいとの思いで、2007年からは親会社の立場で、グループ会社である旭化成カラーテック株式会社の経営改善支援を行うようになりました。

―そちらでは、どのようなことを行われたのですか。

たとえば人事制度の確立です。職能資格制度の導入、賃金テーブルの作成、目標管理制度の導入などを行いました。もちろん私1人でできることではありませんので、人事部の専門家や人財開発研究会(東京都中小企業診断士協会の研究会)で出会ったコンサルタントの先生にご協力をいただきながら進めていきました。

経営理念の策定も行いました。100人を超える従業員がまとまっていくためには大きな柱が大切です。まさに2次試験で学ぶような内容をグループ会社の経営に活かしていったわけです。

―そして2014年10月に旭化成カラーテックの代表取締役社長に就任されたのですね。

就任から約1年が経過しました。これまで社員との懇談会を約20回開き、全社員とコミュニケーションをとってきました。
製造業は人材育成が大切です。社員1人ひとりの力をアップさせないと生き残れません。ですから1回あたり5人ほどのメンバーで懇談会を開き、社長として100人以上の社員と交流するわけです。

工場での社員研修も行っています。旭化成出身の中小企業診断士の先生に依頼して管理職向けの研修を行ったり、ものづくりの専門家を招いた製造力基盤強化「BASE6」研修を行ったりしています。

―なるほど。

2次試験の内容には製造業経営に必要なことがすべて揃っています。開発→営業→受注→生産計画→生産→検査→出荷というバリューチェーンの課題をすべて網羅していますので、中小企業診断士の学習は製造業の経営にも役立つと思います。

経営者として活動するためには“伝える力”も大切です。ポイントを押さえて社員にわかりやすく伝える。長話はいけません。この“伝える力”は2次筆記試験で鍛えられました。80分で論点を整理して○文字以内にまとめる。そのくり返しが伝える力の訓練にもなったと感じています。

現状を打開したい!

―製造業出身の中小企業診断士には、どのようなニーズがあるのでしょうか。

日本には、多くの中小の製造業者が存在します。中小企業の経営者は孤独ですので、悩みを受け止めてくれる中小企業診断士のような存在がとても大切だと思います。そして、できれば製造業出身の方のほうがよい。耳学問ではダメで、ものづくりの現場を知っているからこそ製造業経営者の悩みにも共感できると思います。

―最後に中小企業診断士受験生へのメッセージをお願いします。

中小企業診断士受験生には、意識の高い方が多いですよね。「現状を打開したい!」と思って中小企業診断士を目指している方が多いように感じます。ですから、たとえ仕事をしながらでも一生懸命に勉強をするわけです。高い意識を持って取り組めば、努力は必ず報われると思います。

私の周りには銀行やIT業界出身の中小企業診断士が多く、製造業出身の方はそれほど多くありません。中小の製造業者の悩みを受け止められるよう、製造業出身の中小企業診断士にもどんどん出てきてほしいですね。

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プロフィール

福田裕司(ふくだゆうじ)

旭化成カラーテック(株)代表取締役社長、中小企業診断士(東京都中小企業診断士協会会員)。1980年に同志社大学商学部を卒業後、旭化成工業(株)〔現・旭化成(株)〕に入社。合成樹脂を製造・販売する事業部に所属し、主に企画管理部門を担当。2007年に中小企業診断士登録。2014年10月に、旭化成カラーテック(株)代表取締役社長就任。