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40年間の企業経営と、還暦を過ぎてからの診断士受験―北原慎一郎さん

取材・文:秋田 舞美(中小企業診断士)

【第1回】「それもいいかな」から始まった診断士受験

取材日:2015年4月30日

40年間にわたって企業経営に携わってきた北原慎一郎さんは、還暦を過ぎてから診断士受験を志し、現在はコンサルタントとしてご活躍中です。今回はその経緯を3回にわたって伺います。

―北原先生は約40年間、北原電牧株式会社の代表取締役をされてから、診断士資格を取られたのですね。さまざまな受賞・認定歴もあったようですが、どのような企業だったのですか。

大学4年生のときに父が急死し、父の経営していた企業を承継しました。そのときから61歳で退くまで代表取締役を務めていました。

企業名は北原電牧株式会社で、売上は、電気を流さない通常の牧柵、鳥獣害対策施設がメインでした。酪農用の機器や設備の開発にも取り組み、平成17年には「自動給餌システム マックス」が「家族酪農経営を活性化する新しい飼養管理システムの開発」として北海道経済産業局の「新連携計画」に認定されました。

そのほか、経済産業省の「元気なモノ作り中小企業300社」選定(平成19年)、「第2回ものづくり日本大賞」優秀賞(同年)などもいただき、私がいた頃で資本金6000万円、売上高約17億円の企業でした。

北原電牧株式会社(同社ホームページより)
北原電牧株式会社(同社ホームページより)

―承継はどのような経緯だったのですか。

還暦も見えてくると、当然、後継者について考えます。私には息子が2人いますが、1人はスポーツ、もう1人は学術関連でそれぞれの道を歩んでいまして…。また、当時の役員も自分と同年代だったのです。

そこで、外部への承継型M&Aを考えたのですが、それならば会社に残る社員のために、事業が上り調子のときがいい。鳥獣害対策は国の予算で行われる公共事業の比率が高いのですが、この予算が30億円から100億円規模に増加することが決まっていました。そのため、年齢から考えた想定よりは少し早いかとも思いましたが、仲介会社を通じて東証二部上場の前田工繊株式会社(現在は東証一部上場)とのM&Aが実現しました。

―現在は事業承継を中心としたコンサルタントをされていますが、やはりご自身が事業承継を行う過程でコンサルタントへの決意を固められたのですか。

実は事業承継を終えた時点では、これからどのような業務をしていくか、あるいは悠々自適に人生を楽しむか、明確には考えていませんでした。ただ、新連携などの認定があったこと、また中小企業基盤整備機構や北海道の支援機関とのつながりもあって、中小企業診断士という資格は元々身近に感じていました。

M&Aが完了した際、その報告と退任のご挨拶に回っているときに「ご経験を活かして中小企業診断士でもなさればよいのでは?」と言ってくれた方がいたのです。おそらく、その方にとっては軽い台詞だったのでしょうが、私は「それもいいかな」と思うようになりまして…(笑)。

実際、承継型のM&Aという方法で事業承継を行った際、誰かに相談に乗ってほしいと思ったことは事実なんです。税務や法務について記載された手引書はたくさんありますが、社員のメンタルにまで踏み込んだ書籍はなかった。加えて、M&Aをした側の成功・失敗談はあっても、M&Aをされた側のそれを記載した書物や専門家を見つけることができませんでしたからね。

―それから、すぐに受験をされたのですか。

平成23年4月に社長を退任し、社員のメンタル面を含めたアフターケアとして3カ月は非常勤顧問として顔を出していました。ですのでその年の8月の1次試験は力試し程度で、次の年に何とか1次試験に合格することができました。

ただ、2次試験はダメだった。当時、他の業務を行いながら受験をしていたわけではありませんでしたので、ならば確実に取得できる方法をと思い、中小企業大学校の養成課程に申し込み、面接を経て無事、入校することができました。こうして平成25年4月から半年、養成課程に通いました。

―中小企業大学校の入学・入寮に際して不安はありませんでしたか。

大学校や授業が、というわけではないのですが、健康面で…。入寮前にがん検診を受けたら、腎臓にがんが見つかってしまったのです。健康に太鼓判を押してもらうつもりが、思わぬアクシデントになってしまいました。結果的には、早期発見でよかったのですが。いまでも半年に一度、検査をしていますが、腎臓の機能はほとんど変わらない状態です。

その年の1月にPET検査を受け、2月に結果が出るとすぐに手術の手配です。体がというよりも、春先の入学に間に合うかどうかがとても心配でした。全摘出か部分摘出かで手術の内容や日程、入院期間が変わってきますが、全摘出だと間に合わない可能性があったのです。幸い部分摘出で済み、無事に入校することができました。

―それは大変でしたね…。寮生活はいかがでしたか。

生徒100人のうちおおよそ8割が30代で、20代と40代が1割ずつ。50代はゼロ、60代が私1人でしたから、ただでさえ皆さん、気を遣ってくれるのですよ。それが、がんだったなんて言ったら「北原さんには、箸より重いものは持たせられない」なんてなるのが嫌で…。

学校には事実を伝えていましたし、聞かれた人には話しましたが、あえては話していませんでした。左腹の傷もまだ明らかに生傷でしたから(笑)、楽しみにしていた寮のお風呂もしばらくは人がいる時間を避けて入っていました。

年齢を重ねてからの診断士受験にはご自身の健康面やご家族の理解、ライフプランなどさまざまなことの調整が必要となりますね。
次回は、豊富な社会人経験をお持ちのうえで診断士業務を行うメリットや強みについて伺いたいと思います。

(つづく)

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プロフィール

北原慎一郎(きたはらしんいちろう)

22歳で北原電牧(株)代表取締役に就任。平成23年、子どもへの承継を断念し、M&Aで株式譲渡をして代表取締役を退任。平成26年日本経営診断学会診断事例優秀賞受賞、平成27年度中小企業診断士理論政策更新研修テキスト(親族外事業承継の支援)執筆など多方面で活躍中。M&Aシニアエキスパート。