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私たちが中小企業診断士を目指した理由[金融業界編]

取材・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第2回】金融機関出身診断士の強みを活かす-井上真伯さん

取材日:2015年5月8日

金融業界編の第2回は、第二地方銀行に約10年間勤務した後、独立診断士として活躍している井上真伯さん(中小企業診断士)にお話を伺います。

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絶対に試験に合格しよう!

―なぜ、中小企業診断士になろうと思ったのですか。

勤務していた銀行の上司から「中小企業診断士の勉強をしてみないか?」と言われたのがきっかけです。銀行内で休日を使った「中小企業診断士受験講座」が開かれることになり、勉強を始めました。

―社内で中小企業診断士試験のための講座が開かれていたのですね。

 当時、銀行内には40人くらいの中小企業診断士がいて、さらに人数を増やそうという方針でした。月1~2回程度、銀行の本店で講座が開かれました。講師は資格スクールから派遣され、私を含めて20人くらいが学んでいましたが、試験に合格できた人は少なかったのです。

―なぜ、合格者が少なかったのでしょうか。

 仕事が忙しいなどの理由もあるのでしょうが、一番の理由は本気度でしょうかね。銀行が用意してくれた講座だから、本人のお金はかからない。「絶対に合格しよう!」と本気で勉強していた人が少なかったような気がします。私も3年間勉強したのですが、平成11、12年は1次試験に合格できませんでした。

―そこで、どうされたのですか。

 「せっかく勉強したのに合格できないのはもったいない。ちょうど試験制度の変わり目でもありチャンスのはずで、次は絶対に合格しよう!」とスイッチが入ったのです。銀行に用意してもらったものではなく、自分でお金を払って資格スクールに通い、相当勉強しました。そうしたら平成13年の1次・2次試験に合格できたのです。

―2次試験にも一気に合格したのですね。

いま思えば2次筆記試験は銀行での仕事が役立ったと思います。銀行では限られた時間の中で融資などの稟議書を書かなくてはなりません。論理的にわかりやすい文章を短時間で書くことは、2次筆記試験で求められる能力です。その力が銀行業務の中で自然と身についていたのだと思います。

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自分の力を試してみたい

―中小企業診断士に合格して、どのような変化がありましたか。

銀行の名刺に「中小企業診断士」と入れました。そうするとお客様の見る目が変わったのです。これまでは相談されることがなかったマーケティングのことや物流のことも、社長さんから質問されるようになりました。それが嬉しかったですね。

―その後、独立されるわけですね。

 「自分の力を試してみたい」という思いが強くなり銀行を辞めて独立しました。32歳の時です。最初の3年間くらいは、先輩診断士などからいただいた仕事を一生懸命にこなしながら経験を積みました。

―現在はどのような仕事を行っているのですか。

個人としてのコンサル活動のほか、神奈川県よろず支援拠点のサブコーディネーター、神奈川県中小企業診断協会の総務部長も務めています。相談や支援のテーマは、再生案件が多いですね。再生支援協議会のスキームに乗らないような難しい案件が回ってきます。弁護士・税理士・公認会計士などと連携して取り組む案件も多いです。

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再生支援の現場で

―再生案件の依頼が多いのはなぜですか。

「金融機関の立場」と「企業側の立場」の両方がわかるのが自分の強みになっているのだと思います。たとえば、バンクミーティングで企業側の立場だけを主張しても、銀行などの債権者は協力してくれません。銀行側の立場を理解しながら取り組む必要があるわけです。

一方で企業側の立場をしっかり主張しなければ事業再生はうまくいきません。中小企業診断士として企業に寄り添いながら、時には銀行などの債権者に厳しくぶつかる必要もあります。

―なるほど。

別の言い方をすれば、「銀行の物差し」と「企業の物差し」の両方を持っていないと事業再生はうまくいきません。債権者と債務者の立場を理解し、双方から信頼されることで再生支援が軌道に乗るわけです。この点は金融機関出身診断士の強みだと思います。

―最後に、金融機関の人が診断士資格を取得するメリットについてお話しください。

 中小企業診断士の勉強をすれば経営者の視点を身につけることができます。これは金融機関での業務に役立ちます。

たとえば、企業に融資をお勧めするときに、「借入をしませんか?」と銀行側の視点だけで営業をしてもうまくいかない。企業を良くするためにはどうすればよいか、中小企業診断士としての知見を活かして融資案件を組み立てる。そうすれば企業に貢献できるし、銀行の業績にも貢献できます。仕事が面白くなり、銀行員としての評価も上がるわけです。

 金融機関に勤めている中小企業診断士には独立をしない人も多くいます。企業に勤めながらでも診断士資格を活かすことができるからです。中小企業診断士を勉強して、中小企業に役立ちながら業務を進めてもらえればと思います。

―どうもありがとうございました。

取材を終えて

2回にわたり、金融業界出身の中小企業診断士にお話を伺いました。診断士2次試験と銀行業務に共通点があることや、名刺に中小企業診断士と入れることの効果がわかりました。

中小企業診断協会発表の資料を見ると、2,465人の金融機関勤務の方が平成26年度診断士1次試験に申し込んでいます(政府系金融機関356人、政府系以外の金融機関2,109人)。

今後も金融業界から中小企業診断士を目指す人が増えていきそうですね。



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■プロフィール・会社概要

井上真伯(いのうえ しんぱく)

コンセイユ・モビリエ代表、中小企業診断士

1970年生まれ。東洋大学法学部卒業後、第二地方銀行勤務。2002年中小企業診断士登録。2003年からコンサルタントとして活動中。神奈川県よろず支援拠点のサブコーディネーター、(一社)神奈川県中小企業診断協会の総務部長も務めている。

●Conseil Mobilier (コンセイユ・モビリエ)

http://www.conseil-mobilier.jp/