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【第7回】中小企業経営・中小企業政策

取材日:2013年10月7日

第7回目は、中小企業の支援に際し、中小企業施策を活用することが期待されている中小企業診断士にとっては重要な科目内容である「中小企業経営・中小企業政策」について、伺いました。

白書は企業戦略立案のベース

司会:この科目は中小企業支援に不可欠ですが、勉強がしづらく、敬遠されがちです。特に「中小企業白書」(以下、白書)からは、グラフや細かい数値が出題されます。白書自体は大変興味深い内容で、中小企業診断士が仕事をしていくうえでのバイブルだと思いますが、詳細な数値まで読み込んで学習させる意図や目的は何だと思われますか。また講師の方は、受講生のモチベーションを上げるために、どのような伝え方の工夫をされていますか。

座談会風景_全体

早坂:受講生の方には常々申し上げているのですが、グラフや図表の数値には景気の動きや社会情勢などが反映されていて、必ず理由や背景があります。丸暗記ではなく、大きな流れを捉えることで覚え方も工夫でき、理解も深まるはずです。コンサルティングの実務でも、白書の情報は利用できます。たとえば、小売業の海外進出は他の業種と比較して非常に少ないですが、それにも必ず理由があるはずです。小売業の海外展開は困難と考えるか、逆に進出の余地があると捉えるのか、つまりその市場を狙うのか、避けるのかなど、戦略立案のベースとして提案をする際の武器にもなりますね。

司会:クライアントの戦略を助言するにあたって、白書からマクロ的な状況や傾向を知っておくと役立つということですね。

中小企業の特性を知る

矢田:白書には、中小企業と大企業を比較するグラフがよく出てきます。過去に起きた出来事による影響を比べると、中小企業への打撃のほうが大きいことが多いのですが、逆に中小企業のほうが良い数値が出ているケースもあります。その理由を分析すると、そこに中小企業の特性が非常によく表れているため、傾向と異なる数値が出ている部分は詳しく説明するようにしています。大企業にお勤めの受講生の方も多いのですが、大企業にいると中小企業のことはよくわからないので、もう少し興味を持って白書を読んでいただけるといいな、と思いますね。私も受験校で教える際は、数値はとりあえず脇に置いて、ストーリーで覚えるように勧めています。大学では、商店街実態調査を勉強した後、実際に商店街に行って取材をするという授業もしていて、統計数値が現実にどう現れているか、学生にレポートを書いてもらうこともあります。

司会:大学でのそのような授業の効果には、どのようなものがありますか。

矢田:白書で商店街の置かれている状況を知ってから実際に商店街を見ると、商店街のファンになって帰ってきますね。一番熱くなる授業なんです。厳しい環境に置かれていますが、商店街の重要性に気づくきっかけにはなると思います。

白書のテーマは政策に反映される

新木:白書を読み込んで、クライアントに提案する際に引用することも多いですね。貴重な情報が詰まっているので、提案の説得力が増します。中小企業庁にとって重要なテーマを取り上げているはずなので、それに則った形で対応していくのも、中小企業診断士のミッションだろうと思っています。

司会:たとえば、2013年版の白書では、起業・創業が取り上げられています。国の問題意識やアピールしたいことが白書に現れているのでしょうね。

矢田:それらが施策につながっていくということですね。白書作成の審議会を傍聴したことがありますが、大きな方向性の中でテーマを決めている感じがしました。

早坂:平成25年は「ものづくり」が典型的な例で、大型の補助金が施行されましたね。白書のテーマと施策は密接に関連しています。

司会:中小政策も似たようなものが多く、覚えにくくて丸暗記のイメージがありますが、整理の仕方でアドバイスはありますか。

早坂:補助金などの数字にも意味があります。たとえば、「新創業融資制度」の貸付限度額は1,500万円です。創業者の自己資金をおおよそ500~700万円くらいと考えると、この貸付制度は無担保無保証である代わりに利率が高いので、それ以上借りると返済が滞る恐れがあります。そのため、ある程度、低い上限額を設定しているわけです。貸付年数も、過去のデータに基づいて設定されているのでしょう。事業者の状況や制度の目的を把握しておくと、数値の意味も理解できて、覚えやすいですね。

施策活用こそが中小企業診断士の独壇場

司会:この科目で習うのは政策の大枠ですが、実際の支援施策は細かく分かれています。その1つひとつの制度が、中小企業診断士の活躍できる大きな機会になりますね。

早坂:支援の対象企業の役に立つ補助金を探して提案するのが、本来のあるべき姿でしょうね。現実には、埋もれてしまっている補助金がたくさんありますので、それを発掘して提案していけば、中小企業診断士の独占的な分野としていけるのではないかと思います。また、認定支援機関は税理士が主体ですが、中小企業から税理士に相談があった際、中小企業診断士に話が持ち込まれることも多いですね。補助金の情報はきちんと収集して、準備しておくべきと思っています。

司会:林さんは女性の創業支援をされていますが、この科目を勉強したことで役に立っていることはありますか。

林:キャリアカウンセラーとして、中小企業と学生を結びつけるプロジェクトの相談員をやっていますが、関連するところでは、「ジョブカフェ事業」という人材確保の支援制度もこの科目で習いました。女性の起業が注目されていることも白書に書かれていましたが、目の前のことに集中していると全体の情勢が見えなくなることがあるので、白書で世の中のトレンドをつかんでおく必要性を感じます。以前は大企業に勤務していたので、中小企業の置かれている状況はわかっていませんでした。白書の内容を押さえておくことで、対応する際の伝え方やサポートの仕方に変化が出てきたと思います。ビジネスチャンスも見つかるかもしれませんね。

矢田:受験という観点では、白書は2次試験にも役立つと考えています。実際に課題を解決し、成功している企業が事例として紹介されていますので、2次試験の事例問題を解く際、課題解決のパターンを知るうえで参考になります。実際に、白書に掲載されたアンケート調査と同じ内容が出題されたこともありますね。何年分かの白書を読んでいた人が2次試験を受けた際、「初めて見た企業のような気がしない」と言っていたこともありました。白書でぜひ、中小企業の置かれている状況や課題を知っておいてほしいですね。

(つづく)

【参考】

「試験科目設置の目的と内容」(「平成25年度第1次試験案内」より)

7.中小企業経営・中小企業政策
(科目設置の目的)
中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。