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【第6回】経営情報システム

取材日:2013年10月7日

第6回目は、経営のあらゆる分野での活用を求められている「経営情報システム」についてお話を伺います。

クライアントと専門家の橋渡し

司会:科目設置の目的を読むと、情報システムの専門家にクライアントの要望を橋渡しすることが求められており、試験の難易度も決して低くありません。"経営情報システム"は苦手だという方が多いようですが、みなさんはいかがでしょうか。

座談会風景_全体

矢田:はい。本当に苦手でした。

林:私もそうですね。

新木:私は会社員時代にネットワークやセキュリティ環境の構築に携わっていたので、得点源になると考えていましたが、実際には70点は取れませんでした。年度にもよりますが、ある一定以上は勉強してもなかなか点数が伸びない、収穫逓減型の科目だと感じます。

早坂:私は7科目の中で、本当の丸暗記が必要なのはこの科目だけと考えています。法務も中小も理論立てて覚えられるのですが、経営情報システムは専門用語を覚えなければいけません。専門家へ橋渡しをするにしても、私はITに詳しい方に依頼することが多いですね。ただ、周囲にITベンダーやWEB関係の方が多く、その方自身のマーケティング支援の仕事はしていますので、ITの基本的な知識は実務に必要です。

司会:診断士としてITを専門とされているのは新木さんだけですね。

新木:クライアントのシステム構築にあたって、ITベンダーなどの専門家に橋渡しすることが中心で、IT技術そのものに携わっているわけではありません。診断士として、クライアントの経営改善という広い視点から、システムをどう位置づけるべきかを考え、その会社に最適な活用方法を提言することを心がけています。

まずクライアントの業務を理解する

司会:診断士試験にこの科目が入っている意味は何でしょうか。

矢田:診断士の橋渡し業務のためには、全般的なITの枠組みは知っておきなさいという意味だと思います。大企業に比べて中小企業は、IT化において遅れを取っている企業も見受けられ、支援先の会社ではメールさえ使わないところもありますね。

新木:使ったことがないのでメリットがわからないということも多く、まずグループウェアなど、無料のサービスを試すよう、勧めることもあります。それで効果があれば、体制を整えて導入・運用していこうという流れです。

司会:まったくわからない状態で、業務においてインターネットを使うのは、セキュリティなどの面で危険な感じがしますが、その点はいかがでしょうか。

新木:相手のITに対する成熟度を見ながら、段階を踏んで導入していくべきだと考えます。1次試験ではCOBIT(注:情報システムの適切な構築・運用を目的として、IT関連活動を34のプロセスに分類し、組織における各プロセスの成熟度レベルを6段階で示す国際的な規格)など、成熟度を測るモデルの基礎も学びますよね。最初は、他社との差別化にはつながらない定型業務に市販のソフトウェアなどを導入し、それによって生まれたリソースを差別化すべき領域に投入していくというアプローチで徐々に成熟度を高め、情報化率も上げていくことを推奨しています。ただ、私たちの目的はクライアントの経営改善や革新を実現することであって、システムはその手段のひとつに過ぎません。何から何までシステム化を進めればよいというものではなく、クライアントの業務を分析して深く理解したうえで、オーダーメード的に取捨選択すべきと考えています。

司会:日本は諸外国に比べてITリテラシーが低いのでしょうか。

新木:世界的に見ても、日本の中小企業はIT利活用が遅れていると思います。今年の中小企業白書は、経営者の年齢が高いほど、「経営者のITの活用能力が不足している」ことや「適切なアドバイザー等がいない」ことを課題として挙げている事業者が多いと指摘しています。診断士として、ITを活用した経営改善の支援を行うことが想定されていますので、試験の難易度がやや高いのは、実務に生かすためには、このレベルの内容に一度は接しておいてほしいということではないでしょうか。

診断士に求められる知識とは

司会:専門家へ的確に橋渡しをするためには、どの程度の知識が必要だと思われますか。

林:ホームページやネットワークのセキュリティなどが必要なことは理解していても、具体的に何から始めたらよいのかわからない中小企業も多いと思います。

早坂:会社の体力や文化に合わせて、"御社だったらこういうシステムをこれくらいの予算で導入できますよ"という提案ができればいいですね。財務・会計や運営管理など、他科目で学んだことを有機的に結びつけてはじめて、経営情報システムの知識が実務的なものになると思います。

新木:技術的な側面で実現可能かどうかを踏まえることは大事です。この科目で学ぶITの基礎的な仕組みや知識をある程度は押さえておかないと、クライアントの問題点や要望などを、ITのフレームワークに沿って専門家に伝えることは難しいと思いますね。インターネットや無線LAN、セキュリティなどは特に重要です。また、クライアントにとって効果的なシステムを助言するためには、システム化の下地となる組織作りやマニュアル作成など、IT以外の部分にも目配りをきかせる必要があります。プロジェクトマネジメントやアウトソースの考え方、ITガバナンスなどの知識は、診断士の実務においてもますます重要となる分野ではないでしょうか。

(つづく)

【参考】

「試験科目設置の目的と内容」(「平成25年度第1次試験案内」より)

6.経営情報システム
(科目設置の目的)
情報通信技術の発展、普及により、経営のあらゆる場面において情報システムの活用が重要となっており、情報通信技術に関する知識を身につける必要がある。また、情報システムを経営戦略・企業革新と結びつけ、経営資源として効果的に活用できるよう適切な助言を行うとともに、必要に応じて、情報システムに関する専門家に橋渡しを行うことが想定される。