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【第4回】運営管理

取材日:2013年10月7日

今回は、試験1日目最後の科目である「運営管理」について、診断現場のどのような場面で活用されているかをお話しいただきました。

生産管理知識の活用法

司会:まずは、生産管理分野についてお伺いします。試験では、細かすぎると思われる部分まで問われることがありますが、実際の現場ではどの程度の知識が必要とされるのでしょうか。

早坂:私は製造業に対するコンサルティングも行っていますが、融資や補助金の申請がメインで、直接、生産現場を診断・指導することはありません。ただ、社長と経営の話をするには、製造に関してもある程度は理解する必要があります。現場を改善するのか、全般的な経営を改善するのかによって、求められる知識の深さは変わると思います。現場の改善を行うには、専門的な知識はもちろん、経験も必要ですが、現場ではなく、経営戦略について助言する場合でも、仕事を受注するには、生産管理の一般的な知識を持っておかなければいけません。

司会:社長はその道のプロですから、「私は経営の改善を行います」と言い切ってしまったほうが良いのかもしれませんね。

 新木:私は製造業にもかかわっていて、原価計算を行う場面で、生産管理や品質管理の知識が役立っています。作業分析や時間測定の分野です。原価計算の精度向上のために作業分析を行うのですが、そこで無駄な部分を発見することも少なくありません。生産性の向上まで行えるわけです。

司会:人事・会計系の改善で現場に入って、作業改善までできてしまうのですね。

新木 啓弘さんと矢田 木綿子さん
新木 啓弘さんと矢田 木綿子さん

新木:業界に特化して対応しているわけではありませんが、枠組みをお伝えすることでも多くの改善のきっかけが得られますので、入口としては十分な役割を果たしているかと思います。それによって成功体験を得られれば、その先の業界特有の部分については、自分たちで気づいて改善できるようになることを理想としています。

早坂:戦略策定の際に、生産形態を絡めて提案できると思います。見込生産よりは、受注生産のほうが利益は出やすいです。私が支援している企業は、従来は標準品を卸売販売していましたが、特別仕様品を開発・販売することで、売上と利益の見込みが立てやすくなりました。そのような支援を行う際は、見込生産と受注生産の違いをきちんと理解していないと対応できません。ほかにも、エステ関連のサービス業で化粧品や石鹸を作っている会社を支援しており、そこでも製造業の考え方が必要です。その会社も見込生産ではなく、受注生産の形をとっています。受注生産では納期管理が非常に重要ですが、あらかじめお客様が決まっている場合はもちろん、通販でも納期管理が大きなポイントです。

司会:通販で受注生産なのですか。

早坂:あらかじめ作った数を売り切るという、数量限定の販売スタイルです。目標とする時期に販売を開始するには、いつまでに材料を仕入れ、いつまでに作って納品、という日程管理が重要ですし、見込生産の場合は、いかに安く作っていかに安く保管するか、という管理体制が重要になります。何百人もいるような製造業もあれば、2~3人しかいない製造業もある。中小企業診断士としては、少人数の製造業のほうが入りやすいのではないかと考えています。

新木:私がよく使うのはECRSで、工場に限らず、多くの場面で使える考え方だと思います。業務フローを書き、ECRSをあてはめて考えることで、議論をしながら改善の方向性を模索できますね。

林:ものづくり補助金の申請など、製造業の専門家のニーズはあるのですが、実際にできる人は少ないような気がします。

製造業以外でも、5SやECRSは使えますね。私は建築系が得意なので、工務店などを訪問することがありますが、やはり良い企業はきちんと整理されています。工程や資料もそうですが、雰囲気も含めて整理されている企業が多いと感じます。当たり前のようですが、コンサルをするうえでは、5Sや無駄を省くことが基本の考え方ですね。

矢田:私は製造業とのかかわりが少なく、細かい部分はわかりませんが、工程管理のボトルネックという考え方は使いますね。私の勤務する会社は出版もやっていますが、物を作る以上、必ずどこかにボトルネックがあります。工程全体を見てボトルネックを見つけ、対策を立てるという方法は、製造業でなくても役に立つと思います。先ほど話のあった5Sも含め、製造業以外にも応用できるのではないでしょうか。

意外と使える店舗・販売管理

司会:日常的に使っていると想像はできますが、店舗・販売管理についてはいかがでしょうか。

矢田:店舗・販売管理は、とてもよく使っています。

司会:では、「意外に使える」という観点でコメントをいただけますか。

矢田:私の場合は、売場構成や陳列、店内プロモーションの手法を応用しています。卸売業のクライアントでリテールサポートを教育したことがあり、実際に小売店の視察に行って、どこが良くて、改善できる部分は何かを考えてもらいました。店舗で自社の製品を売り、かつ小売の利益率も上げる方法を考えるという、店舗・販売管理の中でも一番面白い部分ですね。たとえば、ゴールデンゾーンに何を置くかを議論することもあります。研修では、実際の店舗でフェイシングの数を数えてもらったこともあります。

林:女性創業のアドバイザーの現場では、「まず何かを売ってみる」というテストマーケティングを行うこともあります。創業支援としては、実際に売る体験が役立ちます。先日も、何人かのクライアントが女性フェスタに出展する際、自分たちの商品に値づけをし、陳列方法も工夫して販売してもらう試みを行いました。商品レイアウトは、手法を知っているか知らないかで、効果に差が出てきますね。

皆さんに質問したいのですが、立地、不動産、店舗施設系を専門にしている中小企業診断士はいらっしゃいますか。

矢田:四国の丸亀町商店街で街づくりをやっている人がいます。店舗施設を建物から抜本的に見直す仕事です。その人はもともと建築士なのですが、「中小企業診断士は専門家の橋渡しをする役割を担っているため、資格取得後は仕事がよりスムーズに進むようになった」と言っていました。

早坂:飲食業や小売業の創業では、立地が一番重要な要素です。事業戦略が立地で決まるからです。銀行が融資するかしないかも、立地が大きな決め手になります。店舗は駅前なのか、ビルの地下なのか1階なのか、といった段階から支援にかかわっていけるとベストです。そうすれば、どのようなお客様をターゲットに、どのような場所で、どのような商品を売るのか、という戦略を立てやすくなります。困ってしまうのは、物件が決まり、契約も終わってから相談される場合です。戦略を立地に合わせざるを得なくなり、自分の強みを活かせず、立地が最大の制約になってしまうこともあります。

過去問から実務を考える

司会:企業経営理論と同様、2013年度の試験問題を用意してみました。たとえば、第16問では作業研究の分類が問われていますが、実際のコンサルティングの現場でここまで詳細な知識が必要になったことはありますか。

矢田:製造業以外でも、この考え方は使えそうですね。「主作業」があって、「付随作業」がある。中小企業診断士は、どうしても仕事を抱え込みがちになりますので、このような観点で作業を分け、どの部分を外に振って、どの部分を自分でやるのかの判断にも使えますね。

司会:自分の仕事の整理に使うというのは、1つの考え方ですね。店舗管理の第24問はいかがでしょう。小売の吸引力が、施設の規模や施設に到達する時間に比例するか反比例するか、という問題です。

早坂:融資のエビデンスとして添付したことはありますね。将来のことはわからないので、このような法則に基づいて計算します。

矢田:消費者の行動理論に近いと思いますね。自分の商品に自信があると、つい近視眼的になってしまうので、このようなモデルは、競合先の立地や店舗面積などの条件に基づいて、冷静かつ客観的に見るツールとして使えそうです。

(つづく)

【参考】

「試験科目設置の目的と内容」(「平成25年度第1次試験案内」より)

4.運営管理(オペレーション・マネジメント)
(科目設置の目的)
中小企業の経営において、工場や店舗における生産や販売に係る運営管理は大きな位置を占めており、また、近年の情報通信技術の進展により情報システムを活用した効率的な事業運営に係るコンサルティングニーズも高まっている。このため、生産に関わるオペレーションの管理や小売業・卸売業・サービス業のオペレーションの管理に関する全般的な知識について、判定する。