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【第3回】企業経営理論

取材日:2013年10月7日

第3回目は、経営戦略、組織、マーケティングといった中小企業診断士にとって中核となる知識や理論を学ぶ「企業経営理論」です。

意外と使える企業経営理論

司会:第3回目は、企業経営理論です。企業経営理論はその名のとおり、企業経営に直結した科目ですので、"意外と使ったこの内容"といったものがあれば教えてください。

座談会風景_全体

新木:バーナードの組織の3要素はよく使います。"共通目的"、"協働意欲"、"コミュニケーション"の3つですね。受験時代は丸暗記でしたが、実際の現場では、まずその3つを確認しています。これらが備わっていれば、強い企業であると見極められます。支援の際も、それを高める方策を軸に考えています。

企業経営理論は範囲が広く、さまざまな理論や考え方があります。コンサルタントとして自分の色を出すために、それらに触れておくことは、とても重要です。そうすることで、自分に合ったところをバランスよく掘り下げていけるのだと思います。そういった意味で、試験合格後も勉強し続けている科目です。

司会:自分が得意とする分野では、まったく勉強しなくても合格できてしまうことがありますが。

新木:試験対策という意味ではそうかもしれませんが、実際の場面では、得意分野もさらに深める必要があります。私は合格後にもドラッカーやコトラーを読んで、知識を深めています。実務経験を通じて読み進めると、前に読んだときとはアンダーラインの箇所が異なっていたりして、深いと感じますね。

早坂:企業経営理論で言うと、最近、ダブルブランドを使いました。クライアントの企業が新しい事業を始めるときに、別ブランドを作り、ホームページも別にして事業を進めることを提案したんです。社長には、ダブルブランドという言葉は使いませんでしたが、市場が同じで売るものが違うのだから、ブランドを分けましょう、という流れになりました。

矢田:私の場合、主に企業経営理論を使うのは、大学で行う戦略やマーケティングの授業になります。経営者や社員向けにマーケティングの講習を行うこともあります。企業経営理論のテーマでは、経営資源の話をよく使いますね。シナジー、PPMといった言葉も経営資源につながってきます。

クライアントの企業を見ると、経営資源を有効活用できていない企業がよくあります。こんなにたくさんの経営資源を持っているのに、お客様は気づいていない。もったいないと思います。

司会:マーケティングの理論を経営者に教えると、「あぁ、自分は(無意識のうちに)ちゃんとできていたんだ」という反応になりませんか。

矢田:たしかにそういったケースは多いですね。経営者向けの講習では、基礎の部分の解説を行うことが多く、自分の会社にあてはめて、「自分の会社ならこうかな」とか、「社員にこうやって教えよう」と持ち帰ってもらえる効果もあります。

あとは、自分が企業に所属していることもあって、価格政策はよく使います。価格の決定に関しては、マーケティングで学んだ価格設定の理論をよく使っています。自社内でも、クライアント先でも使いますね。

林:私も企業経営理論は、創業セミナーや若い方向けにマーケティングのセミナーをやる際によく使います。SWOTや4Pなどのフレームワークは、頭の中を整理するのに使いますね。意外と使えることとしては、SWOTは就職準備中の学生の自己分析にも役立ちます。

また、コンサルティングの現場や、執筆、調査の場面でも、組織論の知識を深める必要を感じています。良い会社はやはり、人がキーワードになると思います。

海外進出と1次試験知識

司会:では、企業経営理論の内容で、もっともよく使うのはどの分野でしょうか。

早坂:人によって違うと思いますが、私はマーケティングです。

矢田:私はSWOTをよく使っています。コンサルティングの現場で、会社全体に使うことが多いです。

司会:ここに、平成25年度の1次試験の問題をいくつか用意してみました。たとえば中小企業にも、海外進出を避けて通れない状況があります。平成25年度第9問で海外進出が取り上げられていますが、この選択肢にあるような状況に直面したことはありますか。

早坂:"エ"では、特定の部品に特化して製造したが、売上が低迷したために設備をすべて処分して、汎用部品を輸入し、流通市場に参入する、という状況ですが、これではその会社の得意分野を捨ててしまうことになります。

矢田:心機一転頑張る、という選択肢ですね。

司会:ちなみに、"エ"がもっとも不適切な選択肢です。

早坂:中小企業の海外進出支援をする現場で一番多いのは、日本人を現地に連れて行って使う例ですね。第9問の選択肢では、"ア"のパターンです。

生産現場のオペレータは現地の人を雇いますが、輸出入の手続きや生産指導を行うのはすべて日本人がベターです。最近、3社の海外支援を行いましたが、すべてそのパターンでした。日本で製造して輸出し、海外で売るという海外進出支援も行いましたが、その場合も現地窓口は日本人にしています。

海外進出はまだまだ課題が多く、かつ日本人はコミュニケーションが苦手ですので、いきなり現地の人とやりとりをするのは、ハードルが高すぎる。多少でも現地に精通している日本人が行けば、業務をスムーズに行うことができます。

司会:現地の行政とやりとりをする場面が、必ず発生しますよね。通関とか納税とか。そのような分野では、現地人に任せたほうがスムーズではありませんか。

早坂:いずれはそうなるケースもあるかもしれませんが、やはり最初は日本人のほうがスムーズだと思います。自分が海外進出をするとしても、そうすると思います。言葉や自分の意思が正確に伝わりやすい、という安心感を得るためです。

リーダーシップと1次試験知識

司会:第13問では、期待理論に基づいたリーダーシップ行動が問われています。期待理論の意味を問う問題のように思えますが、中小企業診断士が助言する際、どのような理論に裏づけされたリーダーの行動かという点まで意識することはありますか。

新木 啓弘さん
新木 啓弘さん

新木:さまざまなタイプのリーダーの型を並べて、その中からクライアント企業に合った型を提案していくことはしています。

司会:リーダーの型はさまざまあって、企業の規模や発展の段階によって求められるタイプが変わります。こうした場合は、このようなリーダーの型が求められるという、幅広い知識を試されているのですね。

矢田:でも、この問題のように、報酬をモチベーションアップとする中小企業がどれだけあるのか、疑問ではあります。

新木:私も、あまり好きなやり方ではないですね。

早坂:報酬にもいろいろありますからね。お金だけではなく、地位なども含めて考えてよいのではないでしょうか。

"ウ"では、目標達成のための戦略をチーム全体で考えさせる支持的なリーダーが挙げられていて、一見良いリーダーのようですが、必ずしも良いとは限りませんね。支持するだけではダメな場合もあります。

林:この会社には、このやり方が合うといった判断は、どのようにされていますか。

新木:難しいのですが、会社というよりは、人それぞれに持ち味がありますので、その人にとってどういうタイプのリーダーが良いかを考えます。そして、その人の強い部分に着目して、助言を行います。

矢田:知識として持っていることと合わせて、人を見る目が大事ということですね。

司会:まず人を見て、知識として持っている型の中からその人に合った型をあてはめる力が、中小企業診断士には求められているのですね。

(つづく)

【参考】

「試験科目設置の目的と内容」(「平成25年度第1次試験案内」より)

3.企業経営理論
(科目設置の目的)
企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。