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【第2回】財務・会計

取材日:2013年10月7日

第2回目は、企業を診断する際に欠かすことのできない「財務・会計」についてうかがいます。

共通言語としての財務・会計

司会:財務・会計は、受験生であれば重要さを当然理解している科目ですが、実務上どれくらい重要かをお聞かせください。

座談会風景_全体

林:前職の不動産関係の仕事で、DCF法などに触れる機会がありましたので、財務会計自体にはなじみがありました。中小企業診断士になってから大事だと思うのは、経営分析やキャッシュフローです。コンサルをするときにあらかじめ経営分析ができると、現状を把握でき、どこが問題かあたりがつけられます。得意でなくてもよいとは思いますが、最低限の基本として経営分析、CF(キャッシュフロー)は理解しておかなければいけないと感じています。

早坂:1つは、融資相談を受けたり、事業計画を作ったりする際には、必ず収支計画を作ることになりますので、直接的に扱うケースが多いということです。そんなに深い部分までは求められませんが、B/S、P/Lを読めること、場合によってはP/Lを作れることが大切で、実際に事業計画や補助金申請の添付書類に使います。

もう1つは、税理士との共通言語として必要ということです。実務を始めてみてわかったのですが、会社に顧問契約をしている中小企業診断士がいるパターンは、ほとんどありません。一番多いのは、会社と顧問契約している税理士がいて、税理士を経由して中小企業診断士に仕事が来るパターンです。なぜなら、世の中で一番企業と顧問契約を結んでいるのは税理士だからです。たとえば経営者は、マーケティング、人事戦略、補助金申請などの相談を税理士に持ちかけます。しかし、これらの分野を手がける税理士は少ないため、専門家である中小企業診断士に相談します。その際、税理士との接点である財務・会計の知識をきっかけに仕事を得ることが多いのです。費用はどれくらいかかるのか、収益にどれくらい影響があるのかなどをとっかかりに話をすると、受注につながりやすいですね。また、金融機関と話をするケースも多いため、財務・会計は最低限知っておく必要があります。

新木:試験を受ける前は、仕事柄決算書を見ることがありませんでしたので、受験生時代は苦手としていました。基礎固めとして、私は簿記2級から始めました。振り返ってみると、経営戦略を立案する際は、やはり現状分析ができなければいけません。アクションプランを策定し、その後のシミュレーションにも経営分析を使うことになります。経営判断において、一番定量的な指標になりますから、とても大事です。特に会計は必須ですね。

矢田 木綿子さん
矢田 木綿子さん

矢田:受験校の講師をしているため、説明会で中小企業診断士の勉強を始める前の方とお話しすることがあります。あるとき、独立しているブランディングの専門家が参加していました。中小企業診断士の勉強を始める理由を聞いたところ、数字を診られないことを理由として挙げました。その方は、ある中小企業で販促関係を中心に、お店の立ち上げまで携わりました。しかし、立ち上げ後、大手コンサル会社に取って代わられてしまったのです。社長は数字を含め、経営全般を診てほしかったんですね。

中小企業診断士の専門である売上アップなどの販売促進施策を実施するには、コストがかかるケースも多くあります。きちんと数字を診ていないと、その施策によって利益が上がるのかという、もっとも重要な点が説明できない事態に陥ることもあり得ます。数字なしに販促だけを診るというのはあり得ないと思いますし、コンサルをする際には必ず触れる部分ですね。

早坂:もったいないですね。その方に財務・会計の知識があれば、税理士と一緒に案件を継続できたかもしれません。知らない分野だから、扉が開かないのかもしれませんね。

矢田:そうですね。全部自分でできる必要はありませんが、少しでも知識があれば、税理士とチームで取り組めたかもしれません。

司会:どこか1つの分野を診るとしても、会社である以上、利益を出さなければいけませんので、最低限の財務・会計の知識はないといけませんね。

矢田:すべての施策は、最終的には利益につながらないと意味がないものになってしまうため、常に利益につなげる考え方は大事です。

会計と財務は、基礎と応用

司会:いま、うかがったお話では、会計が重要というご意見が多かったのですが、試験問題では財務(ファイナンス)と会計(アカウンティング)がほぼ半分ずつ出題されていますよね。

早坂:会計がわからないと、おそらく財務もわからないのではないかと思います。私は、仕訳の「し」の字も知らずに中小企業診断士の勉強を始めましたので、いきなりファイナンスから勉強していたら挫折したと思います。結果的に、実務では簿記をほとんど使っていませんが、仕訳があって、B/S、P/Lがあって、ファイナンスにつながっていきますので、アカウンティングとファイナンスは、関連づけて理解する必要があります。

林:不動産鑑定士試験では、教養科目に会計学があり、主要科目である不動産価格を算出する鑑定理論という科目で、収益還元法といった財務を問われました。不動産鑑定士試験においても、基礎である会計学を理解していることが前提で、応用である鑑定理論を問われるという試験構成になっているのではないかと思います。

矢田:「運用にあたって、どれだけの利益が見込まれて...」という計算をするのは、不動産鑑定士の仕事なのですか。

林:はい。たとえば、不動産の取引で証券化をする際、主に投資家保護の観点から、取引価格などが妥当かどうかを検証するために、専門家である不動産鑑定士による鑑定評価を出します。そのような場合は、収益物件として、診断士試験でも学習したDCF法を適用しますので、賃料収入などから運営費用を引いた毎期の純利益などを割引率で現在価値に割り引き、それらを合計する方法で計算します。

矢田:難しいですけれど、何となくわかるのは、この勉強をしたからこそですね(笑)。

早坂:独立の1つの道として、中小企業診断士とFP(ファイナンシャル・プランナー)を取り、会社の資産と社長の個人財産をまとめてアドバイスするのは1つの手だと思います。この場合は、当然財務も絡んできます。中小企業のオーナーですと、会社の資産と社長の財産がきちんと線引きされていないことがあります。そこをうまく線引きしたうえで、代表者個人にも財産が残るようなアドバイスも求められていくでしょう。

中小企業診断士に求められる資質

司会:最近の試験は計算問題が減っていますが、中小企業診断士に求めているものは何だと思われますか。

早坂:考え方だと思います。考え方さえわかっていれば、一瞬で解ける問題が出ることがありますが、必要のない計算を一生懸命にしてしまう受験生がたくさんいます。試験時間は60分と短いですので、機転の利く人、客観的に状況を見て分析できる人が求められているのではないかと思います。

実務で使う分野が重要

司会:財務・会計を勉強するにあたって、もっとも重要だと思う分野を教えてください。

矢田:簿記の時点でくじけないことですね。簿記が苦手だと感じたら、何としてでも簿記を克服するべく、受験校に通っているなら先生に質問したり、独学なら書籍を買ったりして、勉強しておくべきですね。

司会:診断士試験の前段階として、簿記検定を受験したほうが良いと思いますか。

矢田:市販本も受験校のテキストも、簿記初学者向けに授業を組み立てていますので、必ずしも必要はありません。時間的に余裕があれば、前もって簿記を勉強しておく方もいらっしゃいますが。

林:私も、簿記が重要だと思います。経済学以外でブレずに点数を取れるのは、財務・会計です。早い時期であれば、財務・会計に時間をあてて、得意にしておいたほうが良いと思います。時間に余裕があれば、簿記から勉強しておくと、基礎が理解できているため、後々つまずきが少なくなります。私は、中小企業診断士の勉強を始める前に、簿記2級を取得していました。その程度の知識があれば、体系だった知識として後からつながりやすいと思います。

新木:私は、原価計算が重要だと思います。中小企業は、原価がわかっていないことがとても多いんです。工程別、製品別など、あらゆる面を数字で把握することで、見えてくるものがあります。意思決定に影響することもあるでしょう。また、オペレーション効率を高める材料にもなりますし、素早くかつ精度の高い見積もりを提示できるようにもなります。その手法を学べるという点では、実務でも役に立ちます。今後も、お客様に提言できる分野の1つだと思います。

早坂:やっぱり、財務諸表と経営分析かな、と思います。最初にお話ししたとおり、実務上、財務諸表は最低限読めないといけませんから。

司会:受験生の皆さんには、ぜひ実務で使うイメージを持って、勉強に取り組んでいただきたいですね。

(つづく)