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診断士資格の勉強内容を企業経営に活かす 株式会社DMR代表取締役 岡本 浩さん

取材・文:大石 幸紀(中小企業診断士)

【第1回】自身の診断士資格取得の勉強を通じ、社員向け資格取得補助制度を導入へ

取材日:2012年2月15日

株式会社DMRは、各従業員がその年度の学習計画を立て、さまざまな資格の勉強を通じて得られた知識を企業経営に活かすことにより、業績アップにつなげています。今回は、ご自身も診断士資格の取得に取り組む、同社の代表取締役・岡本浩さんにうかがった内容を、2回にわけて掲載します。第1回目は、診断士資格の勉強内容が、同社の経営にいかに活かされているかをご紹介します。

自らが資格取得補助制度の模範に

岡本社長
診断士資格の勉強をして
経営が変わったという岡本社長

― 御社の事業は、どのようなものなのでしょうか。

弊社は今年で設立25年目になります。もともとは、輸入レコードの小売業として創業しました。創業後10年間くらいは業績が良く、2002年法人所得ランキングの楽器・音楽映像ソフト小売部門では全国で4位でした。売上は17億円くらいでしたので、利益率が良かったのでしょう。商品もよく回転していて、資金繰りも問題ありませんでした。

業績が良かったので、経営について包括的に考えるというよりも、何か問題が起こると場当たり的に対応していました。当時から心のどこかで、このままではうまくいくはずがないという不安があったのも事実です。

― その不安が現実のものになったのですね。

そうなんです。主力のレコードがまったく売れなくなりました。背景には、音楽ソフトのダウンロード配信の普及があります。商品が回転しなくなり、資金繰りが徐々に悪くなっていきました。

そこでここ数年、事業再生に取り組みました。業態転換を図り、最近になってようやく再生のメドが立ちました。まだ道半ばですが、十分な手応えを感じています。

新たなお客さんを開拓したのではなく、もともと当社を支えてくださっていた顧客層のライフスタイルに合わせて、幅広い商品を提供するようにしたのです。DJ用の機材やレコードの針に始まり、彼らのセンスにフィットする時計やカメラなど、商品のラインを拡充していきました。アンゾフの成長ベクトルで言うところの、新商品拡大戦略をとったのです。

所得4位だった当時に販売していた商品は、現在はほとんどありません。売上の構成を、ガラッと入れ替えました。

― その再生を支えたバックボーンに、診断士資格の勉強があったのですか。

6年前、ある社員が自主的にビジネス著作権検定を取得しました。我々はコンテンツに携わる仕事ですから、著作権に関する知識が必要だったのです。その彼は、資格の勉強を始めてから、明らかに仕事の質が変わりました。そんな彼を見て、「資格取得を目指して学ぶ姿勢っていいな」とあらためて思い、社内に資格取得補助制度を導入することにしたのです。

簿記やビジネス法務など、私が当社業務に役立ちそうだと思う資格をいくつか選び、その受験料を補助するようにしました。さらに、合格したり高得点を取得したりした場合は、賞与にも反映するようにしました。そして、その制度の最高難易度の資格として、中小企業診断士を位置づけたのです。

簿記やマーケティングなど専門的な知識を問う資格と違い、中小企業診断士は、ビジネスの基本を包括的に学べる資格でした。単に各々の知識を深堀していくだけではなく、財務とマーケティングをかけ合わせたりといった実践的な知見が、診断士資格の勉強の中にはありました。これこそ、我々経営者が求めている資格だとすぐにわかりました。そして、自ら資格取得補助制度の模範となるよう、勉強を始めたのです。

学んですぐ活かせる、試せる環境があった

渋谷の店舗
渋谷の店舗ではルンバや
ヘッドホンなどの幅広い品が並ぶ

― 診断士資格の勉強過程で学ばれた知識は、具体的にどのように役立ったのですか。

最初に役立ったのは、在庫管理の分野でした。業績が悪化していく中、勉強した運営管理のテキストで、定量発注や定期発注という方法を学びました。経験的には知っていましたが、あらためて基礎を学ぶと、基本に忠実に実践してみようという気になりました。

私には、学んですぐ活かせる、すぐ試せる環境がありました。学び、試し、失敗して、新たに気づきを得る。そして、改善してチャレンジする。そんな機会が、社内のいたる所にあったのです。

組織論の勉強では、シングルループ・ダブルループ学習理論が、とても印象に残っています。成功体験に依存することなく既存の枠組みを捨て、新しい考え方や行動の枠組みに取り込むダブルループ学習の考え方は、当社の事業再生において、大きな気づきを与えてくれました。

診断士資格の勉強をしていなかったら、このような素晴らしい理論にはめぐり会えなかったと思います。テキストでその概要を勉強するから、さらに深く学びたいと思い、分厚い学術書でも読んでみようという気になります。包括的に学ぶからこそ、自分にとって必要な分野を深く学ぶこともできました。

― とても具体的なお話ですね。

診断士資格の勉強で一番苦労し、そして一番活かされたのが、経済学です。勉強を始めた当初は、本当にチンプンカンプンで、本試験で20点だったこともあります。2回目の受験で合格できましたが。

我々の事業は輸入業ですから、為替の影響を強く受けます。また、各国の経済状況も当社の業績に影響を与えます。経済学を学んでからは、漠然とではありますが、中長期的にアメリカの動向から受ける当社への影響を考えられるようになりました。

経済学を学ぶ前は、貨幣乗数などという言葉は知りませんでした。世界の消費の中心は、アメリカです。アメリカの貨幣乗数に注目して、これからのアメリカ市場の動向を予測することなど、以前は想像もしていませんでした。

そういう知識を持ってアメリカと接していると、リーマンショック以降、アメリカのビジネス界が必死になっていることをひしひしと感じます。ジャパナイゼーションという言葉がありますが、いまのアメリカは、かつての日本を反面教師として打ち手を考えているように思います。

(つづく)

プロフィール・会社概要

岡本 浩(おかもと ひろし)
株式会社DMR代表取締役。1988年、25歳の時に、ダンス・ミュージック・レコード(現・株式会社DMR)を創業。2004年法人所得ランキング楽器・音楽映像ソフト小売部門全国4位。2005年中小企業経営革新支援法認定、2006年グッドデザイン賞受賞。

会社名 株式会社DMR
設立 1998年6月1日
所在地 東京都渋谷区宇田川町36-2 ノア渋谷
TEL 03-3477-1588
FAX 03-3477-1805
ホームページ http://www.dmr.co.jp/