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受験機関新人講師座談会

司会・文:堀切研一(中小企業診断士)/笹村博之(中小企業診断士)

【第2回】講師として大切にしていること

出席者(50音順) 影丸裕二×村上知也×矢田木綿子×渡辺まどか×高田裕(受験生・オブザーバー)
司会・文:堀切研一(中小企業診断士)/笹村博之(中小企業診断士)

取材日:2011年2月7日

今回も前回に引き続き、診断士受験機関で受験講師をされている新人講師4名にご参加いただいた座談会の様子をお届けします。新人講師の受講生に対する思いや、活動の中でのジレンマなど、普段は聞けない本音トークをお楽しみください。

優先順位をどうつけるか

矢田木綿子さん
矢田木綿子 さん

堀切:矢田さんが講師として大切にしていることは、どのようなことでしょう。

矢田:私は大学で、19~20歳くらいの学生にも講義をしています。一方、中小企業診断士の受講生はもっと年齢が高く、キャリアを積んでいる方が多いので、対象がまったく違います。そうした皆さんには、やはり学生とは違った意識を持って講義をしなければいけないと思っています。また、コミュニケーションは大切にしています。講義外でもできるだけこちらから声をかけて、話しやすい状態にするように心がけています。それから講義では皆さんと同様、具体的な事例はできるだけ自分の言葉で伝えるようにしています。先輩講師の講座も参考にさせていただきますが、先輩の事例を使っても自分の言葉にならないんですね。先ほど高田さんがおっしゃったように、受講生はそういう点を見抜いてしまうと思います。だから、私は自分の中で納得感がある事例を、自分の言葉で伝えることを大切にしています。

堀切:自分の納得感を受講生に伝えるわけですね。

矢田:毎回、講義が終わった後にアンケートをとって、その結果を次の講義に反映させるようにしています。前半は事例も入れて完璧に進め、後半は時間が足りず事例も入れられなかったのに、前半のアンケート結果が悪くて、後半がよいということも何度かありました。もしかしたら、私の自己満足的な講義になってしまっているのかなと感じました。それからは、できるだけ受講生の皆さんの顔を見ながら、その場に合わせて講義内容を変えるように意識しています。徹底的に準備はするけれど、それにとらわれすぎるのはよくないと。

渡辺:たぶん、材料を100用意したとして、100すべてを使うと、うっとうしかったりするんじゃないでしょうか。100のうちの30だけ使うなど、臨機応変にその場に合わせて進めることが重要だと思います。

堀切:でも、1次試験が知識量を問われる試験であることを前提とすると、30より100教えてくれる講師のほうがいいのではないですか。

渡辺:講師の仕事には、2つあります。1つは、「ここは出ますよ」と重要なことを教えること。もう1つは、優先度が低い部分について、「ここは出る可能性が低いです」と言い切ること。実はこの2つ目は、すごく勇気がいることだと思います。実際には出てしまうかもしれませんからね。でも、私は自分が受講生だったとき、余裕がなくて、優先順位の高いところからやるように意識していたので、優先度が下がるところはちゃんと伝えます。やみくもにやるくらいなら、2次対策を並行してやったほうがよっぽどいい。

影丸:出るところをくり返してやれば、必然的に得点力は上がりますしね。

村上:私は、基本的に捨てる範囲はつくるべきじゃないと思っています。難易度の高い問題は捨てても、範囲は捨てちゃいけないと。ものすごく簡単な問題なのに、解けていない人が結構いるんですね。「どうして解けなかったの」と聞くと、「その範囲は捨てました」と言う。いやいや、1回テキストを見ておくだけでも解けるはずなので、捨てずに拾ってくださいと。

堀切:その人の性格によって、幅よりも難易度を突き詰めたほうが成績アップにつながる人もいませんか。

村上:個別指導はまた別かもしれませんね。それぞれの受講生の特性があるでしょうし。ただ、全体としての基本スタンスは、範囲は捨てないほうがいいと考えています。

堀切:難易度より範囲が大事だと思う理由はなぜでしょうか。

村上:学者になるわけではないので、難易度の高い論点を突き詰める必要はありません。一方で、中小企業診断士には総合力が重要で、だからこそ試験範囲に入っているわけですから、広く浅く身につけることが必要だと思います。

堀切:優先順位は重要だし、時間的制約の中で難易度の高い問題は捨てても、範囲を捨てるのは避けるべきということですね。話は戻りますが、村上さんは新人講師として何を大切にしていますか。

村上:1回も笑いが起こらない講義はしたくないですね(笑)。

影丸:アンケートをとったほうがいいですよ。このネタは面白かったですかって(笑)。

村上:この前、インターフェイスの説明でエヴァンゲリオンの話をしたんですけど、これはダメでした(笑)。それは冗談として、講師として大切なのは、知識の伝授とモチベーションを上げることだと思っています。笑って勉強できたら、やる気も出るだろうと思います。

渡辺:講義中に寝ないですしね。

村上:そう、寝ない。社会人で、いろいろ悩んだり疲れたり、それでも頑張っている人も多いので、笑いも大事な要素だと思っています。

堀切:ここ数年で、教える内容は変わってきているのでしょうか。

矢田:平成18年度以降、試験制度が変わっていないので、根本は変わっていないと思います。

渡辺:1次で学習することはある意味、学問的な面がある気がします。最新のことを教えなくていいのかなという疑問はありますが、そこは割り切るしかないと思います。

影丸:そこが、法律系の試験との違いでしょうね。法律などは決めごとですから、改正に伴って学習の内容もどんどん変わっていくでしょうけど、診断士試験はそうではない。

堀切:試験に必要な知識と実態とのズレを補完するのは、皆さんのような新人講師の役割でしょうか。

矢田:そうは思いません。むしろ、ベテラン講師のほうが詳しかったりします。最新のことを知ったうえで、試験を意識してあえて抑えている感じですね。

渡辺:雑音を入れないほうがいいですよね。「最新の動向はこうだけど...」と、サラッと触れる程度にとどめています。

影丸:私も、「最新の実務はこうだけど、試験レベルはここです」という教え方で問題ないと思います。

モチベーションアップに必要なこと

笹村:ここからの司会を務めさせていただく笹村です。どうかよろしくお願いします。さて、先ほど受講生のモチベーションアップも講師の大切な仕事だという話がありましたが、皆さん、どのような工夫をされていますか。

渡辺:私は、受験生時代に勉強仲間と励まし合うことで頑張ることができたので、勉強仲間の重要性をすごく感じています。ですから、自分のクラスでも勉強会のチームをつくって、受講生同士の横のつながりができるような仕掛けをしています。講義外の勉強会にも、月1回は顔を出しています。また、教室以外でも仲間のつながりは大切なので、メーリングリストも活用しています。

笹村:受講生とのコミュニケーションにもつながるわけですね。

影丸:私の勤める受験機関でも、メーリングリストでの情報交換は頻繁に行っています。基本的に少人数制でやっているので、新たに勉強会をつくるというよりは、授業イコール勉強会というスタイルです。そういう意味では、わずらわしいくらいのコミュニケーションがあると思います(笑)。そこでは、合格する意欲を常に確認し合えるような精神的なつながりを重視しています。あとは、個人発表をなるべくやってもらいます。皆の前で自分の意見を言ってもらうと、プレゼンの練習にもなるし、その人の考え方を知り、適切なフィードバックを皆で考える意味でも有効ですからね。面白いところでは、奥さんやお子さんが参観にくることもあります。

一同:(驚く)

矢田:どんな感じで勉強しているかを見にくるんですか。

村上:本当に勉強しているのか、確かめにくるんじゃないですか(笑)。

笹村:それは、奥さんに対しては大切なアピールかもしれませんね(笑)。

影丸:お父さんが一生懸命勉強しているところをお子さんに見せるという目的です。少人数でアットホームな受験機関だからこそ、できることかもしれませんね。

笹村:それぞれにカラーがあって面白いですね。矢田さんはいかがでしょうか。

矢田:受講生の方は、負荷がかかると、やる気が出るように感じることがあります。私はストレート合格ですが、どうしてストレート合格できたのかを受講生に聞かれることがあります。私が月100時間の勉強がノルマのチームに入って、その勉強量をこなしていたことを話すと、「先生が言うから、夜中の2時まで勉強しちゃったよ」と報告してくれたりして(笑)。だから、負荷というか、どうすれば合格できるのかというビジョンを示すと、受講生のやる気が出るなと思いますね。

渡辺:私は結構はっきり言っちゃいます。

笹村:どういうふうに言うんですか。

渡辺:たとえば講義の中で、その科目の過去問を次回までに解いてくるようにとしつこいくらいに言って、その次の講義で「過去問を解いてきた人?」って聞くと、少ししか手が挙がらない。そうすると、「皆さん、やる気はあるんですか?」と叱ります。「はっきり言いますが、学習を始めたばかりのいまが一番やる気があるはずなのに、ここで頑張れなかったら、この先ずっと頑張れませんよ」と強く言うんです。

笹村:実際に学習をされている高田さんとしてはいかがですか。

高田:学校にくる時点で、そういうことを求めている部分があるかもしれませんね。そういうふうにはっきり言ってもらうほうが、ペースをつくりやすいし、効果的かもしれません。

影丸:社会人になると、上司以外の人に叱られることはあまりないから、そういうニーズはあるかもしれませんね。会社の上司より親身になってくれる場合もあるわけですし。それから、ビジョンを示すという意味では、中小企業診断士になった後をイメージすることも有効だと思います。診断士試験の合格はあくまで通過点なので、受験生時代から合格後の自分の姿をイメージすると、学習の意味も明確になります。

渡辺:私は中小企業診断士になった後のビジョンをイメージするのに、J-Net21を見ることをすすめています。たとえば、中小企業施策の最新情報など、中小企業診断士の具体的な活躍に役立つ情報が多岐にわたって掲載されているので、イメージしやすいと思います。

笹村:村上さんは、受講生のモチベーションアップのために何を心がけていますか。

村上:私はやっぱり、楽しく笑える授業をやりたいですね。授業をする中で、まずは自分のモチベーションが上がらないと始まらないわけで、ウケると「よしよし」みたいな気持ちになる(笑)。面白い授業なら学校へ行く気にもなるし、それだけでもモチベーション維持につながると思います。

悩みは関係性の維持と知識レベルの差

渡辺まどかさん
渡辺まどか さん

笹村:皆さんが講師として過ごす中で、ジレンマを感じることはありますか。

村上:受講生との関係性が大事だと思ってはいるものの、講義が科目単位で飛んでしまうので、なかなか関係性を維持できないジレンマはあります。やっとその人との関係性ができてきたところで、受け持ちの科目が終わってしまうのが残念ですね。

渡辺:私も同じです。ずっとその受講生を見て行けないのが辛いですね。講義以外のグループ学習に入る人とは関係を維持できますが、受講生はほかにも多いですから。だから私は、1つの受け持ち科目が終わったら、「次の私の担当科目のときに、皆さんも絶対、ここにいてくださいね」と言います。「いなくなってはいけませんよ」って。

村上:もう1つのジレンマは、受講生の知識レベルの差ですね。社会人の方は、それぞれの経験が違うから、科目での知識差が激しい。合格法も勉強量も人それぞれ違うのに、クラスで授業を分けるにも限度がある。どの層に合わせて授業すればいいのかは、すごく悩みます。

渡辺:私は初学者と受験経験者の両方を見ていますが、対象者の違いは意識しますね。

矢田:私も教室内での知識レベルは意識しますが、基本的には丁寧に説明するようにしています。その分野に詳しい人と話をすると、「ほとんど仕事を通じて知っていることだけど、体系的に習うのは初めてだから面白いよ」という意見が結構あるので、知らない人をできるようにさせる授業でいいんだと思っています。ただ、講義を受けているときの表情から、詳しい方なんだろうと思っていたら、実はわかっていなかったりすることも結構あるので、注意は必要ですね。

渡辺:受講生は見た目で判断してはいけませんよね。講師は受講生の人となりを見極めて、対処していく必要があると思います。

(つづく)

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