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受験機関新人講師座談会

司会・文:堀切研一(中小企業診断士)/笹村博之(中小企業診断士)

【第1回】新人講師から見た診断士試験とは

出席者(50音順) 影丸裕二×村上知也×矢田木綿子×渡辺まどか×高田裕(受験生・オブザーバー)
司会・文:堀切研一(中小企業診断士)/笹村博之(中小企業診断士)

取材日:2011年2月7日

今回は、各診断士受験機関の新人講師4名にご参加いただいた座談会の様子を紹介します。講師の視点から、診断士試験の本質や合格者のコンピテンシー、受験機関の活用方法などを議論していただきました。受験生の皆さんは、学習を進めるうえでぜひ、参考にしてください。

受験生の変化とカリキュラムの変化

新人講師座談会

堀切:本日は皆さんに、各受験機関の代表という立場ではなく、新人講師個人という目線で、忌憚のない意見をお聞かせいただければと思います。司会は私・堀切と笹村の2名が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、渡辺さんから簡単な自己紹介をお願いいたします。

渡辺:渡辺まどかです。2008年の試験に合格しました。現在、講師としては1次対策で企業経営理論と経営法務を受け持っています。2次対策では、補助講師として講義にかかわっています。

堀切:それでは続いて影丸さん、お願いいたします。

影丸:影丸裕二と申します。私も2008年の試験に合格しました。私が講師を務める受験機関では、2次対策のみを行っています。その中で、事例 II のマーケティングを主に担当するとともに、2次試験の入門講座も受け持っています。所属は名古屋校になりますが、普段は企業勤めですので、講師はボラプロ(ボランティアプロフェッショナル)として務めさせていただいています。

堀切:中部エリアで活動されているわけですね。続いて矢田さん、お願いいたします。

矢田:矢田木綿子と申します。2007年合格です。現在はコンサルティング会社の社員で、受験指導は仕事の1つです。位置づけとしては、企業内診断士という立場になるでしょうか。担当科目は、1次対策は中小企業経営・政策、企業経営理論、経済学・経済政策、運営管理です。科目数は多いですが、各科目の一部の授業と作問を担当しています。2次対策は、事例 I、II のサブ講師をしています。

堀切:サブ講師としての立場からも、いろいろなご意見をお聞かせください。では村上さん、お願いいたします。

村上:村上知也です。2007年の試験に合格しました。受験時代は3つの受験機関に通っていましたが、いまはまったく別の受験機関で講師をしています(笑)。現在は、1次対策では経営情報システムでリーダー講師をしています。2次対策では、各事例の講座のほかに、最初にロジカルシンキングを実施する講座などを担当するケースも増えています。

堀切:ロジカルシンキングですか。興味深いですね。後ほど、その点もお聞かせください。最後に、講師ではなく受験生の立場からオブザーバーとして参加いただいた高田さん、お願いいたします。

高田:高田裕です。以前から中小企業診断士の資格には興味があったのですが、今回、本格的に受験勉強に取り組んでみようと、受験機関に通い始めました。マーケティングの知識などが、現在の仕事でも役に立つのではないかと思っています。本日はいろいろご教示ください。

堀切:ではまず、先ほどの村上さんの話にあったロジカルシンキングですが、こうした診断士試験の科目以外のビジネススキルを提供することも、受験機関では多いのでしょうか。

村上:2次講義の前段階で、「解く前にどうやって考えるんだろう」といった講義が結構ありますね。カリキュラムに組み込まれているところも多いのではないでしょうか。

渡辺:最初から科目の内容というのは敷居が高いので、"入口"という位置づけとしては増えていますね。

影丸:私のところでは、国語力の訓練も行っています。毎日、新聞記事を読んで30分以内で40字に要約し、提出していただいています。当初は、文章化に課題がある方に向けた対策としてスタートしましたが、効果的だったという声が多く、いまではスタンダードになっています。ロジカルシンキングまではいきませんが、文章を書くのがおぼつかない人も最近は多いようなので...。

堀切:社会人としての基礎学力が落ちてきているのでしょうか。村上さんが教えている受験機関では、昔からロジカルシンキングの授業はありましたか。

村上:受験生時代は、いまの受験機関に通っていなかったのでわかりません。

一同:(笑)

影丸:私はその受験機関に通っていましたが、なかったですよ。

村上:私が通っていた受験機関でも、そういった講義はなかったですね。ただ、社説のまとめはやったほうがいいと言われていたので、仲間同士で自主的にやっていました。

中小企業診断士の本質は総合的対応力

村上知也さん
村上知也 さん

堀切:受験生の基礎学力やスキルの変化、試験内容の変化によって、教え方も変わってくるわけですね。では、カリキュラムそのものは変わってきているのでしょうか。

村上:科目合格制になってから、1次対策のカリキュラムは大きく変わりました。とりあえず、1年目に暗記系の3科目、中小企業経営・政策と経営情報システム・経営法務だけ受かろうというコースができたりしました。

堀切:2次試験と関連が低い科目だけ、先にとってしまおうという考え方でしょうか。

村上:5月頃から勉強を始める人向けに、すべての科目合格は難しいけれど、とりあえずとれる科目をとりましょうといったコースですね。

渡辺:私の所属する受験機関にも、同じようなコースがあります。

矢田:私も同じです。春前頃から勉強を始めた方が全科目合格を目指すとなると、詰め込みになってかなり大変じゃないですか。そのために、今年1次を受けて科目合格をしておいて、翌年1次の残り科目に受かりつつ、2次も合格しようというコースがあります。

影丸:旧制度のときは、1次に受かると半永久的に2次を受ける権利がありましたから、まず1次に受かって2次はその後という形でしたよね。それが、制度変更で1次に科目合格制が導入され、科目合格した翌年と翌々年に科目免除の申請ができるようになったり、2次の受験権利が1次合格年とその翌年の2回となったことや養成課程の受講条件が1次合格へと変わりました。とりあえず1次に受かろうという人が増えてきたという意味では、以前の形に戻っている気がします。

堀切:なるほど。それは合格までの選択肢が増えるという点でもいいことだと思いますが、「中小企業診断士とは何ぞや」という視点から見ると、弊害もあるのではないでしょうか。

村上:いろいろな分野の知識を幅広く活用できるのが中小企業診断士のいい点なのに、その分野は3年前に受験したので忘れちゃったとなると、本来のあり方とは違う気がします。

影丸:同時にいくつもの案件を回せるところが、診断士資格の本当のあり方ではないかと思いますね。コンサルの現場では、この分野は覚えてないので触れずに置いておくというわけにはいかないですから。

堀切:科目別の講義の中で、本来の中小企業診断士のあり方を意識しながら勉強していくためには、受講生にどうアドバイスすればいいのでしょうか。

村上:複数の科目をまたいだ出題が増えている点は、注意するように言いますね。また、1次と2次のつながりもあるので、「合格した科目でも、軽く目を通しておいてくださいね」とか、「たとえ受けない科目でも、問題くらいは解こうよ」と指導はしています。ただ、現実にはパーツの勉強だけで合格する人もいれば、できない人もいるわけです。パーツ学習が向いている人や1年目の人には、「暗記系はとりあえず覚えて合格しましょう」と話す一方、パーツ学習が向いてない人や多年度受験の人には、「総合力でやらないといけないよ」と使い分けをしなければいけません。

影丸:実務補習の段階で、その課題と向き合うことになると思いますので、そこからでもいいとは思います。実務補習に行けば、組織・人事だけ診断することはないですからね。結局、同時にやる必要が出てくるんです。

堀切:パーツで学習して合格したとしても、どこかで中小企業診断士本来のあり方に戻ってくるわけですね。

影丸:ただ、受験時から意識はしておいたほうがいいでしょうね。入口はいろいろあっても、その途中で気づいていけばいいと思います。

講師と受講生のギャップを埋める

矢田木綿子さん
矢田木綿子 さん

堀切:次に、皆さんが講師として大切にしていることは何でしょうか。

渡辺:受講生にとっては、私たち講師が新人かベテランかは関係ないので、プロフェッショナルであるべきという点は意識しています。ベテランの方には経験ではかないませんが、自分らしさを出すように講義を組み立てます。私は、講師の中では実務コンサルをやっているほうだと思いますので、実務経験をなるべく入れるようにしています。また中小企業診断士のテキストは、車が例に出ていたりと、男性目線でつくられているように感じるので、女性でもイメージしやすいように通訳する意識を持って伝えています。

堀切:たとえ話を化粧品やエステなどに変えるのでしょうか。

渡辺:いえ、別に女性の世界に変える必要はないので、男性でも女性でも共通してわかるように心がけます。男性の受講生が多いのは確かですから。

堀切:影丸さんはいかがでしょうか。

影丸:私は決まった講座を持っているわけではなく、結構自由に意見が言える立場にいますので、いままでやっていない新しい視点で進めるよう意識しています。新人講師として、受講生に近い目線を大事にしたいと思っていて、他の先生方にも受講生目線で話をしたりしますね。ベテラン講師の方は、自分が受験したときに比べて、受講生や試験の傾向が変わってきていることへの関心が高いですから。

堀切:なるほど。高田さんは受講生の立場から、講師との距離感のようなものを感じることはありますか。

高田:距離感とは少々異なるかもしれませんが、事例の説明で、言っていることが明らかにズレている先生がいました。そのときは、「この先生、本当はよくわかっていないのでは?」と思いましたね。受講生と言っても、多くの人が社会人で、その道に詳しい人もいるわけじゃないですか。すると、その先生が言うことすべてが嘘っぽく聞こえて、全体を通して信用できなくなってしまいます。わからないことを小手先でごまかすのはやめてほしいですね。

一同:(うなずく)

堀切:新人講師の皆さんは、そういった点に気づきやすい立場にあるわけですね。

渡辺:そうだと思います。私は自分の受講生時代の話をよくします。自分がわからなかったところを、「最初はこう考えていたからわからなかった。でも、こう考えたらわかるようになった」みたいに話します。わからない例を話したときのほうが、皆さんの反応がいいですね。共感してくれているんだと思います。皆さん、難しい用語をたくさん詰め込まれて、最初は教室にハテナマークが飛び交っています。だから私は、「自分は決して優秀な受講生じゃなかったし、最初はハテナだらけだった。それでも合格できました」と伝えます。

村上:講師は、自分が苦手な科目を教えるべきじゃないかなと思いますね。私はもとの仕事がIT系だったので、経営情報システムを勉強するとき、ハテナな部分はほとんどなかった。でも、いざ自分が講義するときには、ITがまったく初めての方の視点を取り入れる必要があって、そのギャップを埋めるのに苦労しています。

影丸:たしかに、苦手科目を乗り越えようとするときに、その科目が得意な先生に聞くとギャップを感じることはありますよね。わかる・わからないのポイントが最初からズレていたりするんです。これはわかっているだろうという前提で進められると、苦手な人はついて行けない。

堀切:受講生時代に優秀だった先生は、受講生から見ると、あまり優秀な先生とは言えないのでしょうか。

影丸:先生によるとは思います。村上さんのように、そこに気づいてギャップを埋める努力をする先生もいらっしゃいます。特に、1次対策はそういう面が顕著だと思います。

村上:最初は詳しい人から教えてもらいたいと思いますが、実際にはそこまでのレベルが必要なわけではありません。基礎をしっかり教えるという意味では、苦労してきた人のやり方を教わるほうが、理解しやすい気がします。

(つづく)

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