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「中小企業診断士1年目の会」幹事OB座談会―アンケート結果からみえたもの

司会・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第4回】人生のドラマは続いていく

参加者:丸山芳子高橋芸臣岡田憲政(以上、中小企業診断士)
司会・文:福島 正人(中小企業診断士)

取材日:2010年12月1日

中小企業診断士試験に見事、合格。しかし、人生のドラマはそこで終わるわけではありません。合格後にはそれぞれ、新たな展開が待ち受けています。

ある日突然、会社を辞めようと思った

司会:次に、「独立か、企業内か」というテーマに移りたいと思います。アンケート結果によると、企業内が約6割、独立が約3割。また、独立を考える理由、目指さない理由等も掲載されています。皆さんが、独立に関してどのように考えているか、お話しいただきたいと思います。

診断士区分
独立を考える理由
独立を目指さない理由
<出典:(社)中小企業診断協会東京支部2010年2月11日「中小企業診断士1年目の会」事前アンケートより>

丸山:私はそれほど独立志向は強くなくて、転職の役に立てばよいと考えていました。結果的には独立しましたが...。

司会:資格取得を目指していた頃は、まったく独立志向というわけではなかったのですか。

丸山:40歳を過ぎて、同じ会社にいられるかどうかという、漠然とした不安はありました。あまりよくない言い方かもしれませんが、独立はセーフティネットといった程度の意識でしたね。

司会:積極的に独立したいわけではないけれど、独立の道も残しておきたいという思いだったんですね。でも結局、独立したんですよね。

丸山:はい。してしまいました(笑)。

司会:高橋さんは、企業内というお立場からいかがですか。

高橋:独立を目指さない理由としては、いま、勤務先で2つの新規事業を抱えているんですが、その業務を通じて新しいことにチャレンジできていて、独立の必要性を感じないからです。

司会:現在の業務が充実しているんですね。岡田さんは、いかがでしょう。

岡田:当初は、すぐに独立するつもりはありませんでした。コンサルティングファームに転職し、スキルを磨いてから独立するつもりでした。でも、資格取得後に転職活動を行った際に思うような結果が出ず、自分なりに十分に活動した自負もあったので、これ以上の転職活動はやめることにしました。当時は、転職することが目的となっていましたが、あらためて考えてみて、独立するために転職したかったことを思い出したんです(笑)。ずいぶん悩みましたが、だったら独立してしまおうと考え、何の計画もなく、ある日突然、会社を辞めようと思いました。

司会:突然ですか。

岡田:私が転職しようとしていたのは、コンサルティングファームです。最終的には独立したいが、そのスキルがないから、まずはコンサルファームに転職したいという考えでした。でもいつの間にか、独立の手段だったはずの転職が、目的になってしまっていたことに気づいたんです。「独立したいなら、すればいいじゃないか」と思ったのが、突然、会社を辞めようと思った理由です。振り返ると、何であんなに悩んでいたのかと思います。

司会:なるほど。

岡田:でも、さんざん悩んだからこそ、会社を辞める決断がしっかりできたように思います。付け加えておきたいのは、独立が素晴らしいと美化すべきではないということです。企業内でも独立でも、自分がやりたいことをできるかどうかが重要だと思います。金銭的な損得を考えたら、企業内のほうがよいのかもしれませんし、どちらを選ぶかは、その人の生き方の違いですから。

司会:丸山さんと岡田さんのお2人が独立しているわけですが、その背景は違うのでしょうか。

丸山:私は、専門をまだ決め切れていません。企業内にいた頃は、何がしたいのかわからなかったのですが、いまはやりたいことがたくさんあって試行錯誤しています。成長の場としては、企業内よりもいまのほうが、日々成長している感覚があります。いまは、そういうステージなのだと思います。

司会:皆さんの話を聞いていると、独立したい人はすればいいし、企業内のほうがいい人は残ればいいという感じですね。人それぞれ、生き方を試行錯誤しながら進んでいくという感じでしょうか。

独立診断士は一匹オオカミではない!?

司会:次に、独立診断士に必要な能力についてお話しいただきたいと思います。アンケートでは、「顧客開拓力」、「専門的な知識」、「幅広い知識」が上位になっています。皆さんは、どのようにお考えですか。

独立後の診断士として必要な能力、要件
<出典:(社)中小企業診断協会東京支部2010年2月11日「中小企業診断士1年目の会」事前アンケートより>

丸山:私が1年目の会の幹事をやったときのアンケートでは、「行動力」が一番でした。まず動けるかどうかで、とにかく動かなくてはダメだと思います。

高橋:私は企業内なので想像の世界ですが、顧客開拓ができないと成り立たないのではないかと思います。さらに、お客様を開拓できたとしても、そのご要望に応えなければいけない。1人でお客様のご要望に応えるために、パートナーとして一緒に活動していただけるような人的ネットワークが必要になってくると思います。

岡田:企業内の頃から、独立診断士に必要なのは顧客開拓力しかないと思っていましたし、独立した今でも、最重要項目だと思っています。先輩方に教えていただきたい一番の関心事です。お客様から仕事をいただけるのは、損得なしの誠意や、これまでの仕事を通じたご縁なのだと思います。そのご縁のきっかけをつくるのは、何でもやってみる行動力だと思います。一生懸命誠実に行動していれば、お客様も自然発生的にできてくるのかなと、最近は感じています。

司会:ご縁を大切にしながら、誠実に行動するということですね。アンケートに「誠実さ」という項目はありませんが、そういった部分が大切なんですね。

丸山:お2人のおっしゃることは、もっともだと思います。受けた仕事に対して力不足を感じることもありますので、専門的な知識をキャッチアップしなければいけない。また、顧客開拓力の面では、中小企業診断士以外にもセールスをしていかなければいけない。独立診断士は1人の社長としてやらなければいけないので、さまざまな要素が必要だと思います。

司会:たしかに、中小企業診断士の顧客開拓力は、ギラギラとお客様を探すのとは違います。プッシュとプルで言えば、活躍している中小企業診断士には、プル型が多い。「仕事をください」と自分から売り込むのではなく、「この人なら仕事を任せても安心だ」と、日頃の行動から信頼を積み重ねることが大切だと思います。

丸山:頑張って営業している同期もいますけどね。銀行や中小企業支援機関を回ったりして...。

司会:アンケートの選択肢で見ると、1人だけ「チームワーク力」と回答していますが、私はとても重要視しています。チームで活動すれば、1人ではできないことができます。よりお客様の役に立つこともできますからね。皆さんはいかがですか。

岡田:私は、他の中小企業診断士とのシェアオフィスに入居しています。さまざまな情報が入ってきますし、仲間の恩恵を自然に受けていると思います。そういう意味では、チームワーク力の必要性を感じています。

司会:独立診断士と言うと、一匹オオカミのような気がしますが、これからの時代は違います。コンサルでもセミナーでも執筆でも、もっとお互いに連携すれば、より活躍できる。このアンケートは、1年目の中小企業診断士が対象なのでやむを得ないと思いますが、独立して時間が経過したら、チームワーク力も大切にしてほしいですね。ほかのキーワードとしては、「幅広い知識」も選択肢にありますが、いかがですか。

岡田:人的ネットワークがあるのならば、幅広い知識よりも自分の強い領域・深さのほうが大事になると思います。

司会:自分の強くない分野は、誰かに頼めばいいという感じでしょうか。必ずしも、幅広い知識が必要というわけではないと。

岡田:たとえば、私はアパレル業界出身です。「アパレルで何ができるのか」と聞かれれば、商品企画から店頭運営まで経験があるので、「全工程ができます」と答えます。そうすると再度、「で、何ができるのか」と聞かれてしまう。幅広いというのは、言い方は悪いですが、「何もできません」と言っているのと同じです。もう少しピンポイントでなければ、ダメだと感じています。

高橋:幅広い知識を持っていても、それをお客様に向けたのでは、うまくいきません。人的ネットワークにつなぐためには、ある程度お客様のニーズを理解する必要があります。そこで、幅広い知識がある程度必要になってくるのではないでしょうか。

岡田:なるほど。つなぐための知識ですね。

司会:ここまで、独立診断士に必要な能力というテーマでお話しいただきましたが、まとめるのが難しいですね。ご縁と誠実さが大事ということでしょうか。ご縁をつくるには、行動することが大切ですし、コミュニケーション能力も必要になる。特に、1年目はですね。

部門を超越した物の見方

司会:次に、企業内診断士に必要な能力、要件についてお聞きしたいと思います。独立を考えていない人に、「中小企業診断士として必要な能力、要件」を聞いたところ、「広いネットワーク力」、「幅広い分野の知見」、「専門的な知識」が上位となりました。皆さんは、どのようにお考えですか。

診断士として必要な能力、要件
<出典:(社)中小企業診断協会東京支部2010年2月11日「中小企業診断士1年目の会」事前アンケートより>

高橋:質問がものすごく難しいですね。中小企業診断士として、企業内でどのように活躍するかということだと思いますが、企業内で「中小企業診断士として」活躍しているわけではありません。幅広い知識を得ながら学んでいくという観点に立つのならば、行動力や広いネットワーク力などになると思います。

司会:研究会に参加するなど、人的交流をすることで、本業にも役立つということでしょうか。

高橋:場合によってですね。本業で役立つ知識やネットワークは、中小企業診断士の世界とは別に存在します。たとえば、先ほど岡田さんがおっしゃった「アパレル」というキーワードで言えば、中小企業診断士でアパレルに強い人を探すよりも、その業界内で探したほうが早い。「中小企業診断士として」と言われると、難しいですね。

岡田:私は、「企業内で、中小企業診断士としての能力をどう発揮するか」という視点で考えました。たとえば、製造部門と営業部門があれば、利害の対立することがあります。私は両方の立場を経験しましたが、営業部門にいるときは、「製造は何もわかっていない」と思うし、製造部門にいるときは、「営業は何もわかっていない」と思うんです。部門を超越した物の見方ができないと、どうしてもそう思ってしまう。でも、中小企業診断士の能力を使えば、部門間の枠を超え、大局的な視点で物事を見ることができるようになります。社内の部門間の調整役、いわばネットワーク力のようなものが上位に挙がってくるのは、よく理解できます。

司会:それは、中小企業診断士という資格が経営にかかわるものだからこそ、持っている能力なのでしょうか。

岡田:そうだと思います。私自身の経験で言えば、中小企業診断士の勉強を始めて半年くらい経ったときに、「製造部門も体験しなくてはダメだ」と思い、異動を希望しました。せっかくアパレルメーカーにいるのに、製造の現場を知らないため、1次試験の運営管理の勉強をしていても理解できなかったんです。でも、いざ製造部門に異動してみると、いつの間にか「営業は何もわかっていない」と思ってしまう自分がいることに気づきました。このように、製造部門と営業部門では、なかなか融和を図ることが難しいとわかった。だからこそ、ネットワーク力を持つことが大切だと気づいたんです。

司会:すごいですね。中小企業診断士の勉強を始めたことで、意識が変わったと。

岡田:それがよかったのかどうかは、わかりません。結果的に、サラリーマン人生が短くなりましたし...(笑)。

司会:でも、何かが変わったんですよね。

岡田:視野が広がったのだと思います。私以外にも、同じような経験をした人はたくさんいます。経営企画部門やコンサル部門に移った人もいますし、そうした場面にも資格の勉強は役立つのだと思います。

自分の生き方を決める特効薬はない

司会:では、座談会の最後に、中小企業診断士受験生へのメッセージをいただけますか。

丸山:中小企業診断士は、ビジネスのフィールドで、自分を成長させることができる資格です。ぜひ頑張って、勉強してみてください。

高橋:自身の体験を踏まえると、いままで自分が見られなかった世界が見えるようになると思います。この資格を取った瞬間、それまでは出会えなかったような人々と知り合え、一緒に活動していくことで、視野がパッと広がる。すごくよい経験になりますし、その経験を1人でも多くの人にしていただければ、もっと中小企業を元気に、そしてもっと元気な社会を築けると思います。

幹事OB座談会

岡田:自分の生き方に悩んだときに、この資格が役立ちました。悩んでいる人や何とかしたい人は、「悩む前にやる」のがいいと思います。もちろん、勉強を始めてからもいろいろと悩みます。でも、とことん悩み尽くすからこそ、スッキリするのだと思います。自分の生き方を決めるのに、特効薬はありませんよね。悩んで止まっているのはもったいないですし、動くなら早いほうがいい。自分の生き方に悩んだら、「そんなあなたにおススメ」なのが、中小企業診断士の資格だと思います。

 今回は、「中小企業診断士1年目の会アンケート」をもとに、受験生時代から合格後の姿までをお届けしました。もしかしたら、「中小企業診断士を目指そう!」と思った瞬間に、それぞれの人生のドラマが動き出すのかもしれません。そして、最初はよくわからなかった中小企業診断士の世界も、一歩一歩進むことで、新しい何かが見えてくるものです。

 (社)中小企業診断協会東京支部では毎年、「中小企業診断士1年目の会」が開催されています。(社)中小企業診断協会に入会すれば、東京支部以外の人も参加することができます。中小企業診断士を目指して一歩一歩進んで行けば、いつかあなたの人生のドラマに、「中小企業診断士1年目の会」が登場するかもしれませんね。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(おわり)

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プロフィール

丸山芳子

丸山 芳子(まるやま よしこ)

2005年中小企業診断士登録。デジタル放送、マーケティング会社での勤務経験を活かし、中小企業向けに新規事業支援、CRM、販路開拓支援、商圏分析支援等を行っている。そのほか、海外事業支援(アジア)、事業再生、アグリビジネス支援なども手がけている。著書に『女流経営』(共著・メディア総合研究所)。その他保有資格:システムアナリスト、中小企業事業再生マネージャー(ターンアラウンドマネージャー)、キャリアコンサルタント、農業経営アドバイザー。NPO法人アジア女性経済会議理事。


高橋芸臣

高橋 芸臣(たかはし まさおみ)

1975年生まれ。龍谷大学経済学部卒業後、求人広告代理店に入社、求人広告営業を行う。その後、戦略子会社立ち上げメンバーとして、WEB求人メディアの営業を行う。 現在はHR関連企業(研修会社、人事コンサルティング会社等)のビジネス機会を提供・支援する、HRビジネスパートナー。 2008年中小企業診断士登録。東京支部城北支会所属。


岡田憲政

岡田 憲政(おかだ のりまさ)

中小企業診断士。GSSコンサルティング代表。1973年生まれ。 アパレルメーカーで営業・商品企画・生産管理に従事した後、2010年独立。サプライチェーンマネジメント、マーケティング、店舗開発・運営に関するコンサルティング事業、企業・自治体向けの研修事業を展開中。現場に入り込み、実行・定着までを支援するハンズオン型のコンサルティングを行う。