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「中小企業診断士1年目の会」幹事OB座談会―アンケート結果からみえたもの

司会・文:福島 正人(中小企業診断士)

【第2回】なぜ、中小企業診断士を目指すのか

参加者:丸山芳子高橋芸臣岡田憲政(以上、中小企業診断士)
司会・文:福島 正人(中小企業診断士)

取材日:2010年12月1日

睡眠時間を削ってまで勉強することもある、中小企業診断士資格。皆さんはなぜ、そこまでして中小企業診断士を目指すのでしょうか。アンケート結果をもとに、お話をうかがいました。

資格取得の動機

司会:次に、資格の取得動機についてお話しいただきます。アンケート結果を見ますと、1位が「自己啓発のため」、2位が「社会的評価を得るため」、3位が「独立開業したいため」となっています。皆さんご自身はどうだったのでしょうか。アンケート結果も踏まえて、お話しください。

資格取得の動機
<出典:(社)中小企業診断協会東京支部2010年2月11日「中小企業診断士1年目の会」事前アンケートより>

丸山:私は、入る会社が清算したり、経営が悪く吸収合併されたりなどの悲しい体験をしまして、当時働いていた会社もヤバいんじゃないかと思いました。そこで、「なぜ経営が悪くなるんだろう」ということを真剣に考えたのが、きっかけの1つです。同時に、転職せざるを得ない状況になるかもしれないので、「資格があれば有利になるかもしれない」と思ったのが、もう1つのきっかけです。

司会:入る会社が次々になくなっていった...。なかなか貴重な経験ですね。

丸山:経験じたいは貴重ですよね。そうして勉強した結果、なぜ経営状態が悪くなっているのかがわかるようになったのはよかったんです。ただ、中小企業診断士の勉強を始めるにあたってちょっと見込み違いだったのは、中小企業診断士がどんな資格なのかを調べようとしたとき、最初に手にとった参考書が、『診断助言理論』だったんですね。内容がコーチングなどでわかりやすくて、「これなら、8科目を勉強してもあっという間だ」と勘違いしてしまったんです。財務など、もっと難易度の高い科目があるとわかったときは、「失敗した」と思いました。

岡田:いまは、『診断助言理論』の科目、ないですからね。

一同:(笑)

司会:では整理すると、丸山さんの目的は2つあって、「会社の経営がうまくいかないのはどうしてかを知りたかった」ことと、「自分の転職に役に立てばいいと思った」ことですね。

丸山:そうです。

司会:わかりました。では高橋さん、お願いします。

経営者と会話をするために

高橋:私には2つ、理由があります。1つ目は、「社外でも通用するキャリアがないのでは...」という不安からです。私は、新卒から一貫して採用関連の仕事をやっています。そのため、個人のキャリアにどうしても注目してしまうんですね。キャリアの世界では、「35歳を過ぎると、行くところがものすごく限定されます」といったことが脅しのように言われています。そこで、自分もキャリアをきっちりと身につけなければまずいんじゃないかと思うようになりました。世渡りだけはそんなに下手なほうではありませんでしたが、社内のキャリアばかりついて、外で通用するキャリアがまったくないんじゃないかと思っていたんですね。2つ目は、経営者と会話をするためです。中小企業診断士を目指した当時は、経営者の方とやりとりする機会が非常に多くて、さまざまな話をうかがうのですが、話を聞いているだけで終わってしまうんです。「もう少し経営を理解したうえで、話を聞きたい」と思うようになり、補完できるものを探っているときに中小企業診断士資格を知り、勉強しようと思いました。

司会:「経営者と話す」とは、採用をしている企業の社長と話すということですか。

高橋:そういうケースもありましたし、採用をしている企業を支援する人材紹介会社の社長というケースもありました。むしろ、後者のほうが多かったですね。

司会:人材紹介会社の社長と話をするにあたって、聞いているだけではなくて、ちゃんと会話できるようになりたいということですね。

高橋芸臣さん
高橋 芸臣 さん

高橋:自分の得意分野のときは、具体的な方策なども挙げられるのですが、それ以外の話が全然わからなかったので、「大変ですね」といったことしか応えられない。愛想だけはよかったりして...。

司会:中小企業診断士資格を取得したら、少し会話できるようになりましたか。

高橋:会話はできるようになりましたが、今度は、深みにはまらないようにしないといけないと思いました。中途半端に手を出して、かえってややこしくしてしまったケースも経験し、自分が下手に手を出さないほうがいいこともあるのだと感じました。

司会:なるほど。

高橋:最終的には、「餅は餅屋」ということで、自分がやってきた得意分野にフォーカスしたほうがよかったんだなと。

司会:ただ、経営者と会話できるようになったし、中小企業診断士を目指した目的はある程度、達成できたわけですね。

高橋:そうですね。

司会:よかったですね。ありがとうございます。では岡田さん、お願いします。

漠然とした不安

岡田:私の場合は、「漠然とした不安」と「35歳限界説」が中小企業診断士を目指した動機です。30歳くらいのときに漠然とした不安に駆られまして...。がむしゃらになってやってきたという自負はあるんですが、それが果たして世間と比べてどうかという不安ですよね。35歳限界説というのは、転職をする場合、35歳以下でないと厳しいとよく聞きましたので、準備をしておかなければならないと思ったんです。それから、父の影響もありましたね。父は、電気工事業を営むいわゆる職人です。子どもの頃を思い返すと、ちゃぶ台をひっくり返すような(笑)、典型的イメージの職人です。私はそんな父を尊敬していて、職人への憧れがありました。そして、「サラリーマンで言うところの職人とは、何だろう」と思い、「経営・ビジネスの職人と言えば、何があるんだろう」と探したときに、中小企業診断士資格にたどり着いたのです。

司会:なるほど、興味深いですね。高橋さんも言っていましたが、「35歳までしか転職できない」といったような不安を感じる人は、世の中に多いのでしょうか。

高橋:これだけ言われていると皆さん、一度は「このままでいいのか」と立ち止まって考えるのではないですかね。

司会:中小企業診断士試験を受けている周りの人にも多かったですか。

高橋:そうですね。

岡田:実際に転職関連の本を見ると、会社に対する満足度は、35歳前後のときに著しく低いんですね。そこで、「転職するか、残るか」を考えるのだと思いますが、35歳を超えるとまた満足度は上がるようです。社会的にも植えつけられた感覚なのでしょうが、35歳前後で一度立ち止まって、残るかどうかを考えるため、会社への帰属意識が低くなるようです。

丸山:その年代でちょうど管理職になっていくことも、一因だと思いますね。経営管理に行くのか、そのまま現場で頑張るのかと思ったとき、どちらに行けばいいのかを考えますよね。

司会:社内に残っても転機となる時期ですし、社外に出ても転機になる時期ですからね。

丸山:はい。そこで残るとなると、「経営的な視点も持たなければ」と意識するのではないでしょうか。

司会:たとえば社内に残るとしても、中小企業診断士資格は役に立つのでしょうか。

丸山:管理職で役立てている人は、たくさんいますよね。

司会:岡田さんはいま、おいくつですか。

岡田:37歳になりました。

司会:アンケート結果を見ると、「自己啓発のため」というのが一番多いんですよね。自己啓発というのは、30~35歳で感じる「さまざまな不安があるから、自己啓発をしよう」という考え方とある意味、近いのでしょうか。

高橋:広い意味では、自己啓発ではないでしょうか。

司会:不安があるから何かスキルを身につけようとか、社外に通用するものを手にしようとか、そういったことなのでしょうか。

高橋:そう思いますね。

司会:2番目に多い「社会的評価を得るため」というのは、お2人にも当てはまりますか。

岡田:そうですね。「世間と比べて、自分はどうなんだ」ってことですね。

高橋:私は、資格そのものが社会的評価だとは思いませんでしたね。むしろ、学んでいる内容がそうだと思っていました。

岡田:私もそうですね。

司会:中小企業診断士の勉強によって、実力が上がるということですか。それは、試験に合格する、しないにかかわらずでしょうか。

高橋:そうですね。

司会:丸山さんも転職を考えたということは、「社会的評価を得るため」と考えたわけですか。

丸山:はい。

資格取得後に芽生える意識

司会:今回のアンケートでは、「独立開業したいため」という回答が3番目に多いんですよね。不安もあり、転職なり独立なりも考え始めた結果、資格を取ろうと考えている人でしょうか。

岡田:30代の合格者が増えていることを考えると、まさにそういうことではないでしょうか。

司会:「自己啓発のため」という理由を聞くと、「自己啓発の資格かよ」と言われたりするじゃないですか。でも、それは悪い意味ではなく、いろいろと人生を考えたときに「自分を磨いておこう」という位置づけなんでしょうか。

高橋:そうですね。学ぶ内容自体はものすごく広いですし、やっていく中でどこかを掘り下げていくという話になると思うので、自分を見直し、今後どのようなキャリアを築いていくかを考えるきっかけにはなると思います。

司会:アンケートの下のほうに「その他」があって、その中に「社会貢献のため」や「中小企業支援のため」とあるんです。ここが少ないのはある意味、寂しい気がしますが、いかがでしょうか。

岡田:実際、大企業に勤めていたら、中小企業を意識することはできないと思うんですね。

司会:たしかに、大企業に勤めていて、中小企業を知らないまま受験される方も結構いますしね。その点、岡田さんの場合は、自営業をしていたお父さんを見ていらした。

岡田憲政さん
岡田 憲政 さん

岡田:そうですね。「中小企業の社長さんたちは頑張っているけれど、本当にこれで大丈夫なのか」というところを目の当たりにしてきましたので、社長さんに頑張ってほしいという思いは強いですね。

司会:そういった部分は、高橋さんたちにはあまりありませんでしたか。

高橋:そうですね。このあたりはどちらかと言えば、資格を取った後からのほうが芽生えてくるかなと思います。

司会:受験生時代になかったものが、資格取得後に意識づいてきた感じでしょうか。

高橋:はい。特に、数は多くないものの、診断などをさせていただく機会ができてきて、生の声を聞くようになると、この思いはより強くなってくると思います。

司会:丸山さんはいかがですか。たとえば中小企業を支援したいとか、社会貢献したいとか、そういった思いは受験生時代からありましたか。

丸山:高橋さんと一緒で、勉強していくと中小企業が雇用をつくっていることなど、初めて知る事実があって、そういった意義を発見できました。この点では、特殊な資格ですよね。自己啓発目的で弁護士や税理士の勉強をするような人って、あまりいないと思うんですよ。資格を取ってみて、そういう世の中があることに気づくなんて、ちょっと変な資格だなぁと。

司会:入口は自己啓発目的だけど、合格して活動し始めると、中小企業診断士っぽい方向に意識が向いていくと。

丸山:そう思うと、ちょっと変ですよね(笑)。

(つづく)

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プロフィール

丸山芳子

丸山 芳子(まるやま よしこ)

2005年中小企業診断士登録。デジタル放送、マーケティング会社での勤務経験を活かし、中小企業向けに新規事業支援、CRM、販路開拓支援、商圏分析支援等を行っている。そのほか、海外事業支援(アジア)、事業再生、アグリビジネス支援なども手がけている。著書に『女流経営』(共著・メディア総合研究所)。その他保有資格:システムアナリスト、中小企業事業再生マネージャー(ターンアラウンドマネージャー)、キャリアコンサルタント、農業経営アドバイザー。NPO法人アジア女性経済会議理事。


高橋芸臣

高橋 芸臣(たかはし まさおみ)

1975年生まれ。龍谷大学経済学部卒業後、求人広告代理店に入社、求人広告営業を行う。その後、戦略子会社立ち上げメンバーとして、WEB求人メディアの営業を行う。 現在はHR関連企業(研修会社、人事コンサルティング会社等)のビジネス機会を提供・支援する、HRビジネスパートナー。 2008年中小企業診断士登録。東京支部城北支会所属。


岡田憲政

岡田 憲政(おかだ のりまさ)

中小企業診断士。GSSコンサルティング代表。1973年生まれ。 アパレルメーカーで営業・商品企画・生産管理に従事した後、2010年独立。サプライチェーンマネジメント、マーケティング、店舗開発・運営に関するコンサルティング事業、企業・自治体向けの研修事業を展開中。現場に入り込み、実行・定着までを支援するハンズオン型のコンサルティングを行う。