経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

目指せ! 中小企業診断士

診断士試験に必要な「矛盾を溶け合わせるバランス感覚」 書籍『受験生最後の日』×月刊『企業診断』連載「伝説の合格者たち」コラボレーション座談会

司会・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第3回】バランス感覚が合否の生命線 [1]

参加者:井上 龍司/小久保 和人/但田 真紀/渡辺 まどか(発言順)
司会・文:堀切 研一(中小企業診断士)

取材日:2010年8月8日

個性的なメンバーだけに、考え方や勉強の仕方にも個性が現れるこの座談会。最終回となる今回は、メンバーから中小企業診断士を目指す受験生の皆さんへ、熱いメッセージをお伝えします。

テクニックを生み出す人が合格する

但田真紀さん
但田 真紀 さん

但田:渡辺さんの方法をお聞きしていて、この方法であれば、どんな年度でも合格する確率を高められるのではないかと感じました。やり方をきちんと覚えて実践すれば、2次試験が得意でない方でも、努力で対処できるようになる、すごいメソッドですよね。

司会:かけられる労力や時間に制約があるからこそ、早く合格するための方法として有効なんでしょうね。

但田:そうですね。ただ、自分が受験生のときにそのメソッドを知っていたとして、取り入れたかどうかといえば、取り入れません。文学系出身の意味不明な意地で、私は私なりのやり方で合格を目指しますね(笑)。

私は、合格率を高める方法と、「診断士試験に対して自分はこういう姿勢で臨みたい」という信念は別モノだと考えていますが、合格率を高めることを優先していたら、渡辺さんの女王メソッドに入門したかもしれません。「今年、とにかく絶対に合格したい」という方が、割り切りを持ってきちんと押さえていけば、合格の確率は高まると思います。

小久保:私は、それができませんでした。いまだに、2007年事例 I の宝飾品の事例は納得がいかないので、いま受けても合格できないと思います。

司会:渡辺さんは、納得しないことをどのように処理されているのですか。

渡辺:納得する、しないは置いておいて、淡々と作業をこなします。受かってしまえばいいと思っているので、受かり方へのこだわりは捨てていました。

司会:ところで、渡辺さんが自分で手法を生み出したのは、なぜでしょう。

渡辺:受験校が教えていることは、汎用性が高いですよね。誰にでもできるように教えてくれます。でも、人によって長所や短所はバラバラですから、ほかの人にできなくて、自分にはできることもありますし、自分だけの弱点もあります。だから、自分用にカスタマイズしなければならないと思ったんです。基本は、通っていた受験校のメソッドを使い、その上に、教わっていた講師のやり方を積み上げる。そこからさらに、自分に合うようにカスタマイズしていったんですね。井上さんもそうですよね。

井上:そうですね。やり方は似ていますね。

司会:既存のノウハウをベースに、自分に合うようにカスタマイズされたんですね。但田さんは、どのように対応されましたか。

但田:私は、そこまで2次試験対策を考えていませんでした。基本は、予備校のメソッドを信じて使って、あとはひたすら自分の中の掘り下げをしました。

司会:自分の中の掘り下げとは、具体的にどうされたのですか。

但田:ひたすら、プロセスの検証をしました。でも、私の場合は、体系化するところまではできていませんでしたね。

司会:なぜでしょうか。

但田:1年目は時間がなく、そこまで考えられなかったからです。限られた時間の中で、2次試験とは何かを理解し、自分ができなかった理由を掘り下げるだけで精一杯でした。

司会:時間があったら、やりましたか。

但田:やらなかったでしょうね。将来、受験校の講師になりたいといった思いでもあれば別だったかもしれませんが、私には、メソッドを人に教えたい気持ちはなかったので、自分が受かるためだけの勉強をしていました。自分が解けるようになることを目的に、ある程度、暗黙知の中で掘り下げていったんです。自分との相性を考えると、選んだ勉強方法は正しかったと、いまでも思っています。

井上:私は、文字に落とすことで消化するようにしていました。但田さんが暗黙知のままで消化できるのは、右脳的な力なんですかね。

司会:なるほど。小久保さんは、いかがですか。

小久保:最初は、受験校で教えられたとおり、素直にやりました。でも、それだけでは自分に合わなくなってきます。私の場合は、1年くらいかけて自分用にやり方を修正し、やっとしっくりくる感じでした。

司会:既存のやり方がピタッとはまることは少ないので、自分なりの手法に変えていく必要があるんですね。井上さんは、『受験生最後の日』でさまざまなノウハウを提供されていますが、受験生にはどのように使ってほしいですか。

井上:皆さん、好きなように取捨選択してくれればいいと思っています。

そういえば先日、「テクニックを使う人ではなく、テクニックを生み出す人が合格する」という名言が浮かんだんですね。

但田:自分で言っちゃった(笑)。

司会:すみません、私が言うべきでしたね(笑)。

井上龍司さん
井上 龍司 さん

井上:どっちみち、中小企業診断士になったら、自分でメソッドを生み出せないといけません。いつまでも手引書に頼って、コンサルティングをしているわけにはいきませんよね。独立して活躍されている方をみていると、自分なりのツールや方法論を確立されているんです。

司会:そうした方々は、何のためにそうされているのでしょう。

井上:差別化ですかね。マニュアルどおりにやっていては、同じ提案しかできなくなってしまいます。「自分だったら、こうやる」と、売り出せる人にならないといけないのかな、と思います。

司会:それが、井上さんの言われる、資格の地位を上げることにもつながるのでしょうか。

井上:それもありますね。バラエティに富んでいたほうが、「中小企業診断士は、すごいな」と思ってもらえるのではないでしょうか。

渡辺:私も、井上さんとまったく同じ意見です。プラス要素として、そこには「楽しい」という感情もついてきます。ほかの誰にもできないことをやるわけですから、楽しいはずですよ。

井上:毎日ワクワクしますね。

司会:手法をたくさん生み出されている井上さんですが、著書を拝見していて気づいたことがあります。「矛盾した2つのことを、同時に行っている」んですよね。

井上:それって、軸がないからですかね(笑)。

司会:いえいえ、すごいと思ったんです。たとえば、合格への情熱を持ちつつも、クールな頭で思考するとか、直感を大事にするけれども、思いつきは排除するとか...。

井上:バランス感覚が大切だと思っているから、こういう表現になるんですよね。

司会:そう思われるようになったのは、なぜでしょう。

井上:答えはすごくシンプルで、自分の周りで成功している人の多くが、そのバランス感覚を備えていると思うからです。私は、診断士試験に限らず、主観と客観、理論と実践など、二項対立のどちらかに寄りすぎていないことが大切だと思っています。たとえば、「自分の持ち味は、すごく個性的だけど、一方で常識をきちんとわきまえている」といったようなバランスですね。診断士試験でもそれ以外でも、大切な要素だと思います。

司会:著書の中では、「ガムシャラさ」と「効率性の追求」という、矛盾したことを両立させる「戦略的ガムシャラ」という言葉も使われていましたね。

但田:右脳と左脳の話に戻りますが、感覚的なことと論理的なことを併せ持つことは、可能ですよね。「中小企業診断士は、論理的だ」と決めつけてしまう必要もないのかな、と思います。私がこれまで出会ったすごい方の中には、どちらも高いレベルで持ち合わせて、溶け合っている状態の方もいらっしゃいます。

司会:溶け合っているというのは、すごい表現ですね。

但田:自分の発言に一貫性を持たせようとして、感覚と論理の一方に偏ることがありますよね。ときには、その一貫性の足かせが、自分を極端な方向に持っていってしまうリスクもあるのかな、と思います。すごい人って、ものすごくロジカルだけど、一方でものすごく情緒豊かだったりもするので、その双方に「扉が開いている」感じが、バランスのよさなのかな、と。

司会:面白い表現ですね。一貫性にこだわらない状態が、「扉が開いている」ということなのでしょうか。

話は戻りますが、手法を生み出すのが中小企業診断士なので、井上さんの「戦略的ガムシャラ」のような言葉を、受験生の皆さんに向けて、ここでつくってもらえませんか。

但田:ムチャぶりしますね~(笑)。

司会:受験で必要な要素を1つ挙げて、その反対の言葉をつけ足していくことで、つくることはできないでしょうか。

但田:小説のタイトルですけど、「冷静と情熱の間」のような感じですかね。

小久保:なるほど。それはありますね。

渡辺:講師から、「頭はクールに、体はホットに」という言葉をお聞きしたことがあります。試験に対する情熱を持ちつつ、でも冷静に対処しようという、いい言葉ですよね。

但田:井上さんの好きな言葉だと思いますが、"think logically act humanly"というのがありましたね。

井上:論理的に考え、人間らしくふるまう、ということですね。

司会:「冷静と情熱の間」と似たような内容が挙がっていますが、その2つのバランスは大切なのでしょうか。

井上:燃えすぎて、周りがみえなくなっている人って、いますよね。

司会:もう1人の自分がみているぐらいのほうが、いいのでしょうか。そのバランスをとるために、具体的にできることとして、井上さんが著書でおっしゃっていた話は、それに近いと思うのですが...。

井上:脳内で1人が解答を作成したら、ほかの5人が解答根拠のアラ探しをします。そして、5人がその根拠を突き崩せなければOK、という解答プロセスを、私は踏んでいました。

ほかでたとえると、自分のプレゼンをビデオに撮って、客観的にみるのも同じですね。自分が描いている自分と現実の自分が違うことに気づかされて、そこで目覚めると思うんですね。そのことが腑に落ちたら、「主観と客観は違う」という前提で動けるようになるので、熱い気持ちを持ちつつも、冷静な対処につながるかもしれません。

【こちらもおススメ!】