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診断士試験に必要な「矛盾を溶け合わせるバランス感覚」 書籍『受験生最後の日』×月刊『企業診断』連載「伝説の合格者たち」コラボレーション座談会

司会・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第2回】右脳と左脳を融和させる [2]

参加者:井上 龍司/小久保 和人/但田 真紀/渡辺 まどか(発言順)
司会・文:堀切 研一(中小企業診断士)

取材日:2010年8月8日

試験における右脳と左脳の使い方

司会:人との出会いが、次につながっていくのですね。試験勉強をしていると、合格するために、いろいろなことを犠牲にしますよね。人との出会いも、本との出会いも犠牲にして、使える時間のほとんどを勉強に費やす方も多いと思います。受験生時代は、出会い自体をつくりにくい環境にあるということでしょうか。

小久保:私は、その出会いの時間を少しおろそかにしてきたのかもしれません。

どういうことかというと、中小企業診断士は一般的に、論理的な思考が得意な左脳集団だと言われますよね。一方で、経営者には、直感や勘に秀でた右脳的な方が多いように感じます。そうした方々に左脳の価値を認めてもらうことが、診断士業務の難しさの1つだと思うんです。右脳が強い方は、感受性が鋭かったり、共感力があったりしますが、私は試験勉強の期間が長かったので、論理的な思考を鍛えることに比重を置きすぎてしまったと、最近になって思うことがあります。実際にコンサルティングをやっていくには、人と会ったり、日常ではしない体験をしたりすることで、感受性を豊かにしていくことも大切だと思っています。

但田:右脳、左脳の話はよく出てきますが、私はいまだによくわかっていないんですね。私は、周りの方からも超右脳人間だと言われていますが、2次試験の勉強をしてみると、最初から意外と成績がよかったり、講師の方からも、「論理的な思考ができています」とほめていただくなど、結構しっくりきたんですね。だから、「診断士試験は、左脳的だ」というのも、よくわからないんです。左脳って何だろう、って。

司会:可能性は2つ、考えられますよね。但田さんは、実は左脳が強かったということと、診断士試験には左脳だけではなく、右脳も必要だということです。

井上:両方の可能性を感じますね。右脳人間、左脳人間というのは、1つの思い込みかもしれません。その理論自体、確固としたものではないでしょうし、もしそうだとしても、片方だけ一方的に強いというのもまれで、両方強いケースもあるのではないでしょうか。その中で、少しだけ片方が強く出ていたとしても、おかしくはありませんよね。

但田:私は、「感覚だけで生きていこう」と決めていた時期があったんですが、その後、社会人経験を積む中で、論理の必要性を強く感じました。中小企業診断士の勉強をしながら、右脳に偏っていたものを左脳に転換する一方で、右脳的な感覚の鋭さのようなものを、2次試験のスキルに活かせているとも思うんです。直感で、「ここは大切だ」、「ここは主要論点だ」と感じるスキルですね。

司会:直感であたりをつけたり、違和感を覚えたりするということですか。

但田:右脳による直感から入って、左脳で検証するといった流れで解くことも多いですね。最初に流し読みをして、「こことここがツボだな」とあたりをつけるのですが、その発見は、右脳でやっているのかもしれません。

井上:私も、右脳によるインスピレーションの裏づけをとるために、左脳を使っているようなところがあります。ブログをみていただいた方には、左脳的に思われますが、そもそもブログにどんなテーマを取り上げるのかは、「あ、これを書こう」といった直感がほとんどです。その後に、理由を左脳で考え、説明していく、という感じです。

司会:右脳で感じたことを左脳で掘り下げたり、本当に正しかったのかどうかを確認したりするんですね。

渡辺まどかさん
渡辺 まどか さん

渡辺:それ、わかります。私も同じ感じです。ブログのテーマは、「今日はこれ!」といった、自分の気分によるところが大きいですね。

司会:小久保さんもうなずかれていますが、同感ですか。

小久保:私も、「今日は、これを書こう」とひらめくときは右脳で考えていて、書くときは左脳にチェンジしていますね。

司会:小久保さんは、2次試験の与件を読む際、右脳で違和感を探して、そこを左脳で掘り下げる、といったやり方をされますか。

小久保:最初はできていたんですが、2次試験のテクニックを覚え始めてから、途中でできなくなった時期がありました。自分の直感よりも、人から教わったテクニックを優先してしまい、うまくいかなくなったんですね。

司会:左脳が、直感をジャマすることもあるんですね。渡辺さんはいかがでしょう。

渡辺:2次試験に関しては、私は左脳だけ使えばいいと思っているんです。だから私は、徹底的に直感を排除しました。

司会:では、与件の中にある違和感は、どのように探すんですか。

渡辺:どういった言葉が埋め込まれているとか、段落の最終センテンスにはメッセージ性があるとか、いくつかの法則に沿って、機械的に処理していました。

司会:『受験生最後の日』では、「こうきたら、こうくる」というシステムについて、重点的に書かれていましたよね。

渡辺:はい。「事例マシーン」になって、処理するようにしていました。

井上:判断基準のかたまりになる、という感じですか。

司会:井上さんが、「1つの事例では、200回の意思決定が行われる」と書かれていたことと共通するのでしょうか。

渡辺:意思決定ではないですね。「こうきたら、こうする」と処理しているだけですから。結果的にやっていることは似ていますが、脳の使い方は違うと思います。

私は事例を解くとき、感情なんてまったく入れないんです。だから、共同執筆した方が事例企業の社長をほめたりしているのをみて、すごいと思いました。私はそんなこと、思ったことがなかったんです。

井上:冷たい人ですね(笑)。

但田:それは、私も一緒です。実際にお会いする社長さんには、感情移入をしますが、事例企業の社長に対しては、そんなことは思わなかったですね。「事例でしょ」みたいな感じです(笑)。

渡辺:冷たいね(笑)。

但田:えーっ。共感を示したのに...。

渡辺:そうですよね。ごめんなさい(笑)。

井上龍司さん
井上 龍司 さん

井上:「社長の気持ちになれ」とか、「感情移入せよ」ってアドバイスされることが多かったので、新しい意見ですね。

司会:井上さんは、どちらのタイプですか。

井上:社長というより、顧客の気持ちになろうとしていました。本当にそのアイデアを顧客がほしがるか、という視点で考えていましたね。

司会:社長の気持ちにはならない、と。

井上:自分が受けた年は、事例の社長4人中3人がハッピーだったので、すごいな、という感じぐらいですね。そこまで、思い入れがあるわけではありませんでした。

司会:小久保さんは、いかがですか。

小久保:私も、どちらかと言うと、試験はドライにとらえていましたね。ただ、社長の思いは解答の際に必要なので、与件の情報としては、大切にしていましたね。

一同:そうですね。わかります。

司会:「社長の思い」という情報として、扱うわけですね。そこで熱くなったりはしないんですか。

渡辺:「あ、経営課題なんだ」っていう感じですね。

井上:参りました(笑)。

司会:皆さんの周りの方は、どう思われているんでしょう。

井上:社長の思いを大切にしよう、という空気を感じることはありますが、今日、皆さんと話していると、実はそれほどでもないのかな、という感じもしますね。

但田:合格の先が大切ではありますが、試験に臨むときは合格が目標なので、クールに解いても別にいいのかな、と思います。試験と現実は、そっくり同じではないわけですから。

司会:目標を考えれば、試験合格とその後の実務を切り分けるのもあり、ということですね。ところで、渡辺さんはどうしてマシーンになろうとしたのですか。

渡辺:1年目に失敗したからです。1年目は人間でした。血が通ってました(笑)。でも、それで失敗したんですよ。すごく勉強したのに、1年で受かるわけがないと、自分を信じてあげられなかった。弱さが出てしまったんですね。

司会:マシーンだったら、どうなるのでしょう。

渡辺:何も考えず、やることをやるだけですね。自分の気持ちに左右されない。

司会:メンタル面のコントロールですね。

渡辺:はい。あとは私自身、頭がよくないと自覚しているので、考えることをやめようと思ったんです。全部作業にすれば、いつも同じ手順で、同じように対応できますよね。

司会:マシーンになることで、心の中にわだかまりを感じることはありませんか。

渡辺:ありませんね。先輩で、同じようなやり方をしていた方がいたんです。ものすごく優秀で、アウトプットのレベルも高く、安定感も抜群でしたが、その方がマシーンという言い方をしていたので、私もそれをやろうと思ったんです。合格のための手段なので、事例を解くときだけ、割り切ればいいと思います。「中小企業診断士なんだから、コンサルタントらしく解くべきだ」といった、受かり方にこだわりのある方もいらっしゃると思いますが、私は、合格のために割り切りました。

司会:では、コンサルタントになってから、補完しなければならないことがあれば、挙げてください。

渡辺:脱マシーンですか(笑)。人対人なので、その人に合わせた対応が必要ですよね。

司会:ほかにはありますか。

井上:コミュニケーション、プレゼンテーション、ファシリテーション、ドキュメンテーション。

渡辺:言いたいだけじゃないですか(笑)。

但田:言いながら、ニヤニヤしちゃってるじゃないですか(笑)。

井上:右脳でひらめいたんです(笑)。

司会:全部、人間らしいスキルなんですね。

井上:(うなずく)

渡辺:言いたかっただけで、説明する気もないじゃないですか(笑)。

(つづく)

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