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目指せ! 中小企業診断士

「目指せ!中小企業診断士」×月刊『企業診断』「伝説の合格者たち」 コラボレーション企画・座談会 合格の鉄則は自らの診断士像を描き、信じ抜くこと

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第5回】受験生の皆さんへ [2]

参加者:鈴木孝史/黒澤元国/斉藤初和/中尾桂子(第1回発言順)
取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

取材日:2009年10月4日

受験生へのメッセージ

堀切 研一 氏
堀切 研一 氏

司会:そろそろ、時間もなくなってきました。最後に、皆さんが診断士活動をされている中で気づいたことも含めて、受験生へのメッセージをお願いします。

中尾:短い期間ですが、中小企業診断士として活動する中で、「やっぱりそうだな」と思えたことが、「会社のいいところを、どこまで折れずに言い続けられるか」が大事だということです。実務補習のときからケンカしてでも主張していたのが、「問題点ばかり指摘しても始まらない。いいところを言いたい」ということなんですが、それは私の中で非常に優先度が高いんです。私はそれをどうしても大事にしていきたいし、大事にしてよかったな、と実際に思うことも多くあります。

司会:実際に感じていらっしゃるんですね。

中尾:今は活かせていないよさがあり、こうしたいという思いもあるわけです。この点については、絶対に大事にしないといけないと思っています。ないないづくしだと、「もう廃業ですか?」となってしまう。一見弱みにみえることも、弱みの欄に書く前に一呼吸してほしいぐらいですね。「それは、本当に弱みと言い切れますか?」と。強みも同じで、私は強みを挙げるのも苦手でした。実際、社長や社員が強みだと思っている割には、競争に負けていることも多いわけです。だから、「ここが強みですよ。ここが弱みですよ」と言うのは、実はすごく難しいことなんだなと。

「いいところはどこか」に着目していくスタイルは、受験生の方にも持っていただきたいですし、私も貫いていきたいです。そして、受験生の皆さんには、試験だと思って会場に行くのではなく、中小企業診断士として診断する、という気持ちで行ってもらいたいですね。与件に会社の悪い点がたくさん書いてあったとしても、絶対によいことも書いてあるはずですから。それをどうやって伸ばすかが、中小企業診断士の仕事なんです。

司会:受験生の皆さんにも、事例企業のよいところに着目して解いてほしいということですね。ありがとうございました。それでは斉藤さん、お願いします。

斉藤:実務従事などを通じて、中小企業診断士になってあらためてよかったと思っています。社長は孤独だと言われていることを、実務従事ですごく感じたんですね。チームでは、会社のよいところをどんどん伸ばす提案をしよう、という方向性で診断しました。わかる範囲での提案しかできないので、「実際にやるのは難しいんだよね」というお言葉もありました。でも、私たちがよいところを伸ばす方向性で診断したのを感じ取ってくださっていて、私たち若手が頑張っている姿勢から気づかされる部分も多く、あらためて頑張ってやってみようと思った、と言ってくださいました。気難しそうな社長だったのですが、最終的にはお礼状までいただいたんです。

司会:それはすごいですね。

斉藤:自分の中で大きな経験になりましたね。ギリギリの中で仕事をされている社長の姿勢や、頑張ったら伝わるものがあるんだということが、自分自身の姿勢を見直すきっかけにもなりました。そういった意味でも、中小企業診断士として経験できていることが非常に大きいので、自分自身へのよい変化もあることも見据えて、勉強をしていただければと思っています。

司会:社長のそばで元気づけながら話をするイメージで診断されてきて、試験と共通する部分も多かったですか。

斉藤:そうですね。実務でも試験でも、同じだと思いますね。

司会:ありがとうございました。それでは黒澤さん、お願いします。

黒澤:私は、6年もの受験生活を送って感じたことがあります。それは、受験生活そのものが企業に対するコンサルティングプロセスとまったく一緒だということです。どういった中小企業診断士になりたいかを含めて、合格という目標を描き、自分の現状を把握して、何が足りないかを自己分析します。そこで気づきを得て、それをクリアして初めて、中小企業診断士になれるわけですよね。そのサイクルを回せれば、コンサルタントになれる。

鈴木:そのとおりですね。

黒澤:受験も、企業に対してコンサルティングをするのと同じで、合格のための答えはそれぞれ受験生の皆さんが持っています。それに自分自身で気づかない人が、他人にコンサルティングできますか、ということですね。

司会:自分に対するPDCAも回せないのに、他人のPDCAは提案できないと。

黒澤:自分がありたい診断士像が描けていて、自分に足りなかったことに気づいて埋められる人が、中小企業診断士になれるんだと思います。だから、答えはそれぞれ違いますが、自分にとって正しい努力をしてほしいと思います。

司会:それはどういった努力でしょうか。

黒澤:自分をもう1度見つめ直し、方向性を決めてからすべき努力ですね。自分に何が足りないかを自己分析し、それに対して具体的に実行する。そこで初めて、努力が生きてきます。100時間の勉強で受かる人もいれば、1,000時間の勉強で受かる人もいる。人それぞれ違うわけですが、それをコントロールできるのが中小企業診断士です。だから、よくできた試験だなぁ、と思いますね。

司会:このサイクルを回せない人は、合格できないんですね。多年度で悩んでいる人には、大事な話ですね。

黒澤:そうですね。一生懸命頑張っているのは、誰もが同じです。でも、努力すれば受かるのではなく、正しい努力をすれば受かるのだと思います。シャカリキにやるから受かるのではないんです。鈴木さんが、最短で合格するために合格者の最低答案を見つけて目標をつくられましたが、こういうことが合格に必要なんだと思います。最小の努力かもしれませんが、それが正しい努力なんです。それを見つけられるのが、コンサルタントですね。

司会:受験そのものが、コンサルティングなんですね。ありがとうございました。それでは鈴木さん、お願いいたします。

鈴木:いつもの逆説的な言い方で言うと、「頑張らないでね」ということですね(笑)。特に、2次試験は頑張らないでほしい。肩の力が入ったまま与件を読むと、メガネ越しにみてしまいます。フラーッと、お酒を飲んで受ける感じぐらいのほうが、スーッと入ってくるんですね(笑)。試験当日は、いかに肩の力を抜くかです。私が決めていたのは、「悔いのない答案を書く」ということです。自分がこう書こうと思ったベストの答案を書いてこようと。その答案が中小企業診断士に値するのであれば受かるし、そうでなければ落ちる。

私自身は試験が終わったとき、翌年にまた受ける気はありませんでした。私の思う、中小企業診断士としての理想に近い解答は書けた。こういうものが求められているはずだ、という解答は書けた。だから、私の思う理想の診断士像と、出題者の思う診断士像が違うのであれば、私は中小企業診断士を目指すべきではないと思っていたんです。そこまで割り切って、解答を書きましたね。

司会:肩の力を抜くと言われましたが、まさに逆説的で、それだけ真剣に取り組まれてきたということですね。

鈴木:私は、問題用紙には線も何も引かないんですね。2~3枚の与件を読んで頭に残らないような半端な集中力なら、やめておいたほうがいい、とすら思っています。合格した人は、与件の隅々まで頭にこびりつくぐらい残っている人が多いですよね。不合格のときは、与件をあまり覚えていない人が多い。

黒澤:たしかに、合格した年の与件は、頭に残っていますね。どの辺に何が書いてあったか、今でも覚えています。

司会:受かるときは、それだけ集中しているんですね。

黒澤:試験後に、「そんなこと書いてあったかな......」と思うのは、落ちる年ですね。受かる年は、「あそこに書いてありましたね」って、自分の中で鮮明に記憶しているはずです。

司会:与件を消化しているんですね。

鈴木:「それは書いてあったけど、私はこの与件のこっちを使って書いた」といった会話ができれば、合格できます。

黒澤:落ちる年は、それに気づかない。

鈴木:私は、2次の問題集は、10分程度考えるだけの使い方をしていました。解答の骨子を考えるだけなら、10分程度でできるはずです。これは何を聞いていて、この与件を引っぱってくるんだな、と。中小企業診断士としてではなく、試験対策としては、このようなやり方は有効だと思います。いずれにせよ、自分の診断士像を持たないかぎり、合格するのは無理ではないでしょうか。

司会:やはり、そこに戻るんですね。

鈴木:求められる診断士像から、2次試験では何を求められている、財務事例では何を求められている、というように試験をつくっていくわけですから。

中尾:だから、解答の骨子を10分でつくれるんですよね。診断士像がなければ、すぐに骨子をつくれませんから。何もなければ、解答に時間がかかると思うんです。

司会:いちいち、「これはいったい、何を聞いているのかな」と。

中尾:自分に柱があるから、新しい事例にも対応しやすくなるんです。

鈴木:「与件を整理してあげるだけ」という意識で、与件を読んでいますから。そう思うと、難しくないですよね。

司会:試験までに外段取りをやっておくわけですね。現場で消化するのでなく、事前に自分の中で消化しておく。

鈴木:試験当日は、何も考えていません。無心です。勉強したことは忘れて、聞かれたことに素直に答えるだけでいいんです。やるべきことは、いたってシンプルです。

司会:私は、「伝説の合格者たち」で毎月インタビューをしていて、気づくことがあります。その人なりの言葉になっているだけで、見事なぐらい皆さん、同じことを言われているんですよね。

黒澤:合格者の考え方や価値観がバラバラだったら、「中小企業診断士っていったい何?」ってなりますよね(笑)。

鈴木:今回の座談会で診断士像を議論したことは、正解ですね。中小企業診断士とはかくあるべき、ということをそれぞれ持っているから合格するのだということを、皆さんと話していて再認識できました。受験に大事なのはモチベーションだ、というのはよく聞きますが、それだけではありませんね。

中尾:そうですね。

鈴木:それぞれが持っている診断士像によって、書く内容が変わってくるんですね。ちゃんとした診断士像が描けている人は、中小企業診断士としての解答ができるということです。

司会:ふだんは書けていても、当日に書く内容が変わってしまう人は、中尾さんが言われたように、あるべき診断士像を自分なりに消化できていないということですね。

中尾:逃げてしまっているのかもしれません。フレームワークの準備をしたはいいけど、中身がなかったら意味がないですから。言い切れないと、ダメです。

座談会の様子

斉藤:信じなきゃダメですよね。

中尾:そうですね。信じないと。

鈴木:信じられないものを形だけマネして書くのは、よけいによくない。信じられないなら、やらないことです。

中尾:信じられずに形だけで合格すると、合格後に困りますよね。その人も困るし、周りも迷惑します。

鈴木:中小企業が困ってしまう。

司会:ありがとうございました。あるべき診断士像を自分なりに描き、それに向けてPDCAを回す。試験当日は、描いた診断士像を信じて書き切ることが大事だというお話で、それは皆さん、共通していました。受験生の皆さんにも、参考にしていただければ幸いです。あらためまして、本日は皆さん、ありがとうございました。

(おわり)

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