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目指せ! 中小企業診断士

「目指せ!中小企業診断士」×月刊『企業診断』「伝説の合格者たち」 コラボレーション企画・座談会 合格の鉄則は自らの診断士像を描き、信じ抜くこと

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第3回】2次試験は「価値観」を確かめる試験 [2]

参加者:鈴木孝史/黒澤元国/斉藤初和/中尾桂子(第1回発言順)
取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

取材日:2009年10月4日

与件は答えがブレないためのヒント

黒澤:与件は、答えがブレないためのヒントですよね。

中尾 桂子 氏
中尾 桂子 氏

中尾:そのとおりだと思います。

黒澤:与件がなかったら、どうしてもブレるじゃないですか。与件があることによって、答えがブレなくなるので、そういう意味で「与件重視」なんだと思います。

中尾:だから、試験として成立するんですよね。

黒澤:与件がなかったら、何でもありになってしまいます。知識力や発想力を問う試験になってしまう。でも、それは問われていないので、ブレないように与件を重視する必要があるんですね。だから、素晴らしい発想を書くホームラン狙いでなく、与件に書いてあることを根拠に、ヒット狙いで地道に書く必要があるんです。ホームラン狙いの人は、「自分はこの業界のことをよく知っているんだ」と知識をみせつけがちですが、それは何にもなりません。

鈴木:人に勝とうと思って、他人が気づかないような答案を書こうと思った瞬間に、サヨナラです。勝ち負けを競っているわけではないですから。

黒澤:我慢の試験ですね。

司会:そうわかってはいても、書きたくなるものですか。

黒澤:書きたくなるんですよね。ある友人は、「淡淡(たんたん)くん」という架空のキャラクターを自分の中につくり、自分の知識や経験を出したくなると、「淡淡くん」がおさえ込み、淡淡と書くようにしていたようです。そこを勝負しちゃダメだ、飛躍しちゃダメだ、って必死におさえるんです。我慢、我慢って。

司会:となると、試験当日は、「淡淡くん」のように自分ではない、第三者におさえてもらう手段を持っておく必要がありますね。鈴木さんが、月刊『企業診断』の2009年9月号の「伝説の合格者たち」で教えてくださった、「自分が尊敬する人だったらどう書くかをイメージする」というのも有効ですね。

鈴木:そうするとおさえられるんですね。

黒澤:おさえることは、とても大事です。先日、ブログに「合格するために」という記事を書いたのですが、いちばん最後に書いたのが、「冒険するな、多数派に従え」です。冒険したくなるじゃないですか。でも、事例のコアとなるところで冒険してしまうと、解答全体がとんでもない方向に行っちゃうんですね。

司会:そのとんでもない方向に、ほかの設問の答えを合わせなければならなくなってきてしまうと。

黒澤:与件重視は絶対ですね。鈴木さんは4割ぐらい与件から引っぱってきてもいいと言われていますが、そのとおりだと思います。

司会:鈴木さんは、「出題者は神様です」と言われていますね。

鈴木:私は「出題者は神様です」と思わなかったら、自分をおさえられないんです(笑)。

思い込みを排除する

黒澤:いちばん怖いのが、思い込みですよね。私の場合、1回目の与件チェックでは線を引きませんでした。引くのは、与件文と設問文を読んで、設問に答えるヒントはどこにあるか、という段階に入ってからです。

鈴木:「強みは赤で、弱みは青で......」なんていう引き方をしているのをみると、「1回読んだだけでわかるほど、お前は天才かっ!」って思ってしまう(笑)。

中尾:おっしゃるとおりですね。

黒澤:ヒントが散りばめられていると、難易度は上がります。与件の一部だけをヒントにして、答えがわかるならいいんですが、実際は、離れた場所のヒントを組み合わせることが多い。それを見落とさないようにするためにも、最初から決め打たないことが大事です。

司会:ヒントって、結構飛んでいるものですか。

黒澤:そうですね。

鈴木:しかも、時間の流れに沿って書いているようにみせて、急に過去のことが出てきたりもします。

中尾:たしかに(笑)。

鈴木:どことどこの間の出来事か、わかりにくいこともありますね。

司会:何のためにそうしているのでしょうか。

中尾:たぶん、紛らわしくして、難易度を上げているんでしょうね。

黒澤:自分が「難しい問題をつくれ」と言われたら、ヒントを離して、事例全体に散りばめますもんね。注意して、ちゃんと読まないと解けないようにします。

司会:思い込みで診断してほしくない、ということでしょうか。

黒澤:そうですね。「ここだ!」とすぐに飛びつく人もいますが、それが正しいとは限らないと。

鈴木:与件には、出題者が企業に対してヒアリングした中から、必要なことだけが並べられているんです。ムダもないし、書き漏らしもない。

中尾:過不足なく、きちんと書かれているんですよね。

鈴木:2次試験では、「ヒアリング資料を読み解く能力があるか」を問われていると思います。むしろ、それだけしか問われていませんね。解決能力は、実務補習のときに求められます。いずれにしても、ヒアリングしたものを読めなかったら、実務補習もできないじゃないですか。

司会:ウエイトとしては、どれくらいを占めているのでしょうか。

鈴木:ヒアリング資料を読める力を証明できれば、合格点の60点は軽く越えられるはずです。私は、資料を読み解く能力さえ磨けば合格できると信じて、勉強していました。

黒澤:私も、それで受かると思います。与件を正しく読み、設問の意味を理解したうえで設問に沿って解答を書けば、それだけで合格点は取れます。与件にない知識などは、書かないほうがいい。

中尾:本当にそうですね。

合格ギリギリの再現答案から学ぶもの

黒澤:鈴木さんは、60点ギリギリの再現答案を探されたそうですが、これは、自分があと何をすればいいのかがよくわかる、合格への近道だと思います。

鈴木:勉強会の仲間にも言ってるんですが、合格者答案でひどいのを探して、「これでいいんだ」というのをみておく。そのうえで、それに甘んじることなく、もっといい答案を目指していけばいいんです。「最低限、これだけは確保してから積み上げる」という意識を持つことが大切なんですね。最初から素晴らしい答案を書こうとすると、何をしていいか迷ってしまう。「最低レベル」の答案を超えるために何をすればいいかをきっちり把握して、実行することが大切です。そうすると、基本を外すことがないから、合格しやすくなります。

司会:逆のアプローチだと、どうなるのでしょうか。たとえば、80点の答案を書いている人がいるとして、その人のマネをしようとすると......。

鈴木:80点になるか、40点になるか、結果はバラつくでしょうね。極端な話、100点を目指すと、100点の可能性もあるけど、0点の可能性もある。

司会:それはなぜですか。

鈴木:高得点を狙うと、与件にないことを書こうとしてしまうからだと思います。出題者が想定していない、彼らをうならせるような答案を書かないと80点、100点は取れないでしょうが、そうすると、与件にないことを書かざるを得ないので、まったく点を取れないリスクも高いんですね。

黒澤:今の話と関連して、先日、問題解決に関するセミナーをやらせていただいたときのことですが......。問題=「あるべき姿」と「現状」の差と定義するならば、その差が小さければ小さいほど、問題の原因はつかみやすいですよね。これを2次試験に置き換えると、「自分の答案」の問題点は、「80点答案」よりも「60点答案」と比較したほうが把握しやすい。「80点答案」と「自分の答案」を比べたのでは、差がありすぎて、何がよくて何が悪いかを見つけにくいんです。だから、合格のために何をどう改善したらよいかがわからなくなってしまう。

たとえば、A社には3つの事業所があり、C事業所は売上が落ち込んでいるが、D事業所は横ばい、E事業所はやや売上が拡大しているとします。これに対し、ライバルのB社の事業所は、いずれも急激に売上が伸びている。この場合、売上の落ち込んでいるC事業所の問題の原因を探る方法をセミナーの受講生に聞くと、業績の伸びているE事業所もしくはB社の事業所と比較すればいいと答える人が多いんですね。でも、伸びている事業所には成功要因がありすぎて、何が問題かが特定しにくいんです。そんな中、あまり差のないD事業所と比較すれば、問題の原因は特定しやすい。だから、2次試験に自分が合格できない原因を特定するには、ギリギリ合格点の60点答案と比較するのが、いちばんいいんです。

斉藤:それは、すごくわかりやすいですね。

黒澤:自分が不合格のポジションにいるなら、落ちそうで落ちなかった人の答案を探してきて、自分の答案と比較すれば、改善点がみえやすいと思います。トップ答案や予備校の模範解答と比較しても、自分ができなかった原因は見つからないということですね。

斉藤:あれもあるし、これもあるしで、たしかにどれが原因かがわかりませんね。

中尾:そうですね。そこそこ勉強すれば、たぶん50点台まではとれるんですよ。皆さん、合格までのあと2、3点が足りずにすごく苦労していて、そこを知りたいんだと思います。私のやっている勉強会でも、このことは伝えたいですね。

黒澤:このことに気づいていれば、私はストレートで合格できたのに......(笑)。