経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

目指せ! 中小企業診断士

「目指せ!中小企業診断士」×月刊『企業診断』「伝説の合格者たち」 コラボレーション企画・座談会 合格の鉄則は自らの診断士像を描き、信じ抜くこと

取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

【第2回】理想の診断士像を描く [1]

参加者:鈴木孝史/黒澤元国/斉藤初和/中尾桂子(第1回発言順)
取材・文:堀切 研一(中小企業診断士)

取材日:2009年10月4日

座談会の第1回では、皆さんが中小企業診断士を目指された過程をお話しいただきました。引き続き、座談会の模様をお伝えいたします。

理想の診断士像を描くために

司会(堀切):今までのお話では、理想の診断士像を描き、その強い動機を持ちながら勉強を進めていくことが大切ということでしたが、そういった絵が描けていない場合はどうすればよいのでしょうか。

中尾:私は1回目の受験では1次試験を通らず、2次試験を受けられなかったのですが、自分が「この人は合格するだろう」と思う人のほとんどが不合格だったことに唖然としました。そして、なぜ落ちたのかを一緒に悩んだんです。受かると思っていた人が落ちたということは、自分の価値観が間違っていたことになりますから、仮に私が受けたとしても合格はしていないと思ったんですね。だから、私も悩んでしまった。その後しばらくは、合格した人に「中小企業診断士って、何をする人ですか?」って質問して回ったんです。

司会:とても素朴ですが、本質を突く質問ですね。

中尾:それまで、勉強はしていましたが、そこをちゃんと考えてこなかった。大切なことが抜けていたんです。「受かりたい」と思ったから、そこを突き詰めて考えることにしました。

司会:そのためには、合格者に聞くことが必要だと。

中尾:そうですね。まず第一に、中小企業診断士が何をするのかを知らずに受けていたことが、まずかったのではないかと。

司会:聞いてみてどうでしたか。

中尾:皆さんに共通していたのが、「大事にしているものがある」ということです。ある方は、「中小企業診断士に大切なのは、物事を客観的にみせてあげることだ」とおっしゃいました。ご本人は、実務補習で気づいたそうです。物がゴチャゴチャしている飲食店があって、ちょっと片づけただけでも、お客様にとってはかなり印象がよくなるだろうと。どう伝えたらいいかを悩んだ末、言葉で言うのではなく、写真を撮ってそのまま渡してみたら、お店の方は「あっ」と気づいたというんです。そして、次に行ったときには、お店がきれいになっていた。

客観的に伝えるだけで、自分が余計な情報を入れる必要はない。そのままを伝えるだけでいいんです。当たり前になって景色に溶け込んでしまっていることを、あらためて切り取ってみせてあげるだけでいい。

鈴木 孝史 氏
鈴木 孝史 氏

司会:経営者である鈴木さんからみて、その方法はどう思われますか。

鈴木:まさにおっしゃるとおりですね。「ちょっとあかんかな」というのは、経営者は気づいているんです。それだけをそっと出してあげると、いちばん効きますね。それと、中尾さんからも話が出ましたが、「中小企業診断士って何」というのがわからないと、やはり厳しいですね。それは、2次試験で何を求められているのかにつながってきます。最終的に、中小企業診断士にはこういう役割があるから、その前の実務補習ではこれをみる、口述試験ではこれをみる、2次筆記試験ではこれをみる、1次筆記試験ではこれをみる、といった目的があるはずなんです。その目的がわかっていないと、特に2次試験ではあらぬ方向に進んでしまいます。

中小企業に愛情を持って接する

司会:2次試験の対策を単体でやることも多いですが、全体の中で捉えないと、求められているものがみえてこないというわけですね。

鈴木:中小企業診断士として活動するために、2次試験で何を問うているのかを考えなければいけません。それを勘違いしている人が多い。そのためには、「中小企業診断士とは、こうあるべき」というものを、きちんと把握しておかなければならないんですね。今日お集まりの皆さんに共通しているのは、中小企業に愛情を持って接しているということです。上からみて、「お前ら、アホか!」というスタンスではなく、愛情を持って接していくことが、中小企業診断士には求められています。実際の中小企業だけでなく、2次試験で出てくる事例企業にも愛情を持って接しなければいけませんよね。

中尾:本当にそう思います。

鈴木:ところが、落ちてしまう人の中には、愛情のかけらもない答案を書いてしまっている人もいるんです。

司会:皆さん、深くうなずかれていますね。黒澤さんは、中小企業への愛情ということについて、どのようにお考えですか。

黒澤:仲間から、面白いことを言われたことがあります。私は、合格する年まではトゲトゲしくて、話しかけにくい人間にみえていたそうですが、合格した年は雰囲気が柔らかくなったと、周囲は感じていたというんです。開き直っていたというのもあるんですが、もう1回初心に帰って、純粋に自分を見つめ直したことで、表情が変わったんでしょうね。

司会:それは、答案にも出ていたんでしょうか。

黒澤:出ていましたね。鈴木さんが言われる、上から目線の解答を書いていました。愛情が足りないんですよ(笑)。

司会:変わったきっかけは、何だったのでしょう。

黒澤:やっぱり、純粋に自分を見つめ直したことですね。ブログにも、「最後の挑戦」と書いて自分を追い込んでいました。平成17年度に5度目の不合格という結果に終わり、ブログで敗退宣言をしたとき、読者からあたたかいコメントをたくさんいただいたんです。みんなが応援してくれて、「黒澤さんがやめてどうするの?」といったコメントにも救われました。そして、引退したプレーヤーが復活するように、もう1度やろうと。今までのことはすべてご破算にして、ゼロからやり直そうと思ったら、自然とプレッシャーもなくなっていったんです。それまでは、2次試験というと苦手意識の塊でガチガチになっていましたが、最後の年だけはスーッと入っていけた。試験が終わったときは、足がふらついて立てないぐらい精根使い果たしましたが、「これは受かったかな」と自然と思うことができて。終わったときの脱力感が違いましたね。「これで落ちたら、本当に仕方ない」と思えたんです。6年かかりましたが、長い受験期間に、中小企業診断士とはどうあるべきかを学ばせていただきました。

司会:その過程で、自分がどうあるべきかに気づいたんですね。

黒澤:1回で受かればそれでよかったのでしょうが、私の場合、勉強している過程で、自分のあるべき人間性や中小企業に対する接し方を教えてもらったという感じです。

司会:今までの自分を見つめ直したことで合格するというのは、なかなかできることではないですよね。「黒澤さんの人間力はすごい」と皆さんがおっしゃるのが、よくわかるエピソードですね。

1つのことを信じ切る

司会:一方、斉藤さんは10ヵ月という短い期間で合格されていますね。

斉藤:皆さんのお話をお聞きしていると、私の場合はたまたまなんだと思います。

黒澤:私が斉藤さんの年齢だったら、絶対に受かっていないですね。何を書いていいのかすらわからないと思います。社長に対してどう接していいかもわかりません。2次試験は、若すぎると実務経験も少ないため、難しいと言われていますよね。若くして合格された秘訣をお聞きしたいですね。

鈴木:予備校で教えられたことを徹底的に信じて勉強されていたようですが、よくぞそこまで予備校を信じたな、と思いました。なぜなら、私は自分しか信じないタイプだからです(笑)。予備校をここまで信じてついていった、これが時間のないストレート生としてはよかったのではないかと思います。そして、あまり手も拡げなかったんですよね。本当にものすごく信じていた。

斉藤:時間もなかったですし、とにかく信じてやるしか方法がなかったんです。

黒澤:すごく純粋でいらっしゃるのがわかります。私も鈴木さんと一緒で、自分を信じるタイプです。実は、予備校の模試と本試験では、書く内容をまったく変えました。「じゃあ、予備校に通う必要がないだろう」と突っ込まれてしまいそうですが(笑)。長年やっていると、受験校には受験校の点の取り方があるんです。それとは別に、本試験には本試験用の点の取り方がある。それに気づくわけです。当時通っていた予備校に行けば、今でも1位をとれると思います。

司会:それはどうしてですか。

黒澤:6年も同じ予備校に通っていると、どの先生が作問しているのかがわかってしまうんですね。そして、何を答えてほしいかもわかる。だから、本試験で同じことをやればいいのではないかと思ったんですね。試験委員の考え方を理解して、過去問で問われている共通部分を研究しました。すると、本試験ではこういう答えを書かないと合格しないんだというものがみえてきたんです。採点者の思考ですよ。何を書かせたいのかがわかれば、スラスラ書けます。

鈴木:斉藤さんもそうですが、どの予備校でも、その1校だけを信じれば、合格する可能性は高いと思います。

黒澤:そうすると、ブレませんからね。それから、斉藤さんがすごく純粋だと思ったのが、ある先生をメンターとしたことですね。私は、ある先輩から、「中小企業診断士は、経営者のメンターであれ」と言われたことがあります。ずば抜けて優秀でなくてもいいから、経営者がちょっと電話をかけて相談したい存在、いると安心する存在であること、それが大事だと思っています。だから、予備校の先生をメンターとして、それを信じてやってきたということが、中小企業診断士の立場になっても生きると思います。経営者にあれこれ言っても、「お前は引っ込んでおけ」と言われてしまうと思うんですね。鈴木さんが私にあれこれ言われたら、必ずそう言うでしょう(笑)。

鈴木:間違いなく言いますね(笑)。

黒澤:経営者は答えを持っているので、うるさく言わなくてもいいと思うんです。

司会:ちなみに、どんな内容の電話がかかってくることが多いですか。

黒澤:ほとんどが、「今晩、飲みに行こう」です(一同爆笑)。だいたい、相談はお酒の席ですね。

鈴木:ちょっとグチるんですね。

黒澤:はい。経営者って、孤独じゃないですか。経営者同士で会っても、絶対本音はしゃべらないですよ。それに、従業員には相談できないですよね。そういうとき、「ちょっと、黒澤君」って相談していただける存在でいることが大事なんです。「そんなこと、私にわかるわけないじゃん」っていうことでもいいんです。なぜなら、社長は答えを持っていますから。やりたいことのバックアップ、少し押してあげたら動くという、そのひと押しをやってあげるんです。もちろん、押しちゃダメなケースもありますけど。

鈴木:ブレーキをかけてあげることも必要ですよね。