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目指せ! 中小企業診断士

診断してみました!・シリーズ1:【診断テーマ】「先生」から「経営者」へ ―経験ゼロからの学習塾経営を支援

文:山田 かすみ(中小企業診断士)松井 淳(中小企業診断士)遠近 浩二(中小企業診断士)原崎 崇(中小企業診断士)守井 浩一(中小企業診断士)

【第5回】具体的提言と診断の感想

前回述べたとおり、K塾が今後、永続性のある経営を行うための基本戦略を「中学受験対策と補習への経営資源集中」としました。
 今回は、上記戦略を成功させるための具体的提言について述べます。なお、K塾への診断活動は現在もなお途上であり、中長期の提言には方向性の提示までで、具体的な肉付けにはこれからのものが含まれています。

K塾に対する具体的提言

(1)早急に実施すべき事項
実施が容易でかつ可及的速やかに実施すべき事項を提言しました。

1)教室の4S(整理・整頓・清潔・清掃)実施
 4Sは、費用をかけず即時に実行でき、かつCS向上に極めて有効な手段です。 基本的な事項ですが、K塾では4Sが不十分であり、即時改善を提言しました。
2)保護者との面談
 保護者や生徒の塾への要望の確認、安心感の醸成などCSの向上や、保護者とのリレーションの強化に有効な手段です。初回の診断時、保護者面談は実施されていませんでした。

(2)短中期に検討・実施すべき事項
永続的経営の基礎を固めるための改善事項を提言しました。

1)中長期の経営目標の見直しと明文化
 収益計画に基づいた経営目標を立てるように提言しました。収益計画には、後で述べる教室移転資金などの積み立ても考慮するよう言及しました。
2)講師対策
 講師こそが塾の重要な経営資源で、競争力の源泉です。そのため、優秀でやる気のある講師の確保の重要性を提言しました。オーナーと講師との面談によるリレーション強化と経営目標の共有、不得手な生徒が多い理系を担当する講師と女子生徒を増やすため女性講師の確保、講師の担当科目の専門化などを提言しました。
3)教室空き時間の有効活用(経営資源の活用)
 教室の学習用ブースの稼働率が低いため、改善策を提言しました。たとえば、小学生と中学生の講義時間帯を分ける、休講日を現状の日曜から平日に変更する、長期休暇中に集中講義を行う――などです。また、実現にはハードルはありますが、夕方までの空き時間をカルチャー教室や自習室として貸し出すことも提案しました。
4)ホームページ作成とパンフレットの改訂
 当塾の認知度向上策としてホームページの作成を提言しました。また、総花的であった従来のパンフレットの内容とキャッチフレーズを新しいドメインに沿ったものに改訂することを提言しました。
5)教室移転
 経営課題である女子生徒の新規勧誘には、新しく清潔な環境であることが重要です。そのため、オーナーは教室移転を検討されています。重要性には同意しますが、現在の経営状況を考慮し、一定の資金を貯めてからの実行を提言しました。

(3)長期的に検討・実施すべき事項
K塾が今後一段と飛躍するため、地域特性を考慮した事項を提言しました。

1)近隣中高一貫女子校生徒の獲得
 K塾の周囲には、中高一貫の女子校が多数立地しています。当地域外から通学してくる生徒を取り込めれば、K塾の対象マーケットが飛躍的に増加します。長期的にはこうした地域外から通学してくる中高一貫校生の補習ニーズを確認し、対処していくことがK塾に求められていることを提言しました。

診断チームメンバーの感想

「頑張っている人を応援したい」。そんな気持ちが高じてコンサルタントを志し、その第一歩として中小企業診断士の資格を取得しました。今回の案件は今後も続いていきますが、私たちの提案が必ずしも唯一の正解ではないことは多々あるでしょうし、提案内容を実行するか否かは先方の自由意志です。それでも、私たちなりに検討を重ねた結果がオーナーに何らかの勇気をもたらし、1つでも多くの判断材料を提供できるならば、そこに価値はあると思います。 (山田)

診断士がコンサルタントとして忘れてはいけないこと。それは、1)当事者意識を持ち主体的に考えること、2)クライアントに対する強い思い入れを持つこと、その一方で、3)常に冷静かつ客観的であること。われわれ診断士の当事者意識とオーナーの経営に対する問題意識が相互にシンクロしながら高まっていく状況にコンサルティングの醍醐味を感じています。 (守井)

忙しいオーナーとの間では短い時間しか取れず、意識合わせに時間がかかってしまいます。だからといって診断チームが独断で突っ走ってしまわないよう気をつけながら、じっくりと時間をかけて相互の信頼関係を築きたいと思います。また、オーナーが持つ教育への熱い思いを生徒や保護者、あるいは講師にもっと伝えられるよう手伝えればと思います。 (松井)

今回の診断は実務補習で行った短期的な企業診断とは違い、長らく診断先とお付き合いしながら診断先の業績改善のお手伝いをしていこうというものです。これは私にとっては初めての経験で、診断先への関わり方、活動の内容、目指すべき成果等々、さまざまなことが短期的な企業診断と異なりパターンを見出せず戸惑っています。しかし、「診断先の利を考える」という目的さえ違えなければ、悩みはいずれ果実をもたらすはずです。今はそう信じて仲間たちと一緒に自問自答を繰り返しています。 (遠近)

面白い商圏に位置することから、当塾をこれから安定成長させていくのは診断士の力の見せどころかもしれない、と感じています。診断を通じて当塾とともに成長できればと考えていますが、最後の判断はオーナーが下すこと。一方的な押し付け、机上の理論の提示ではなく、責任感と緊張感をもったお付き合いを心掛けたいと思っています。 (原崎)