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目指せ! 中小企業診断士

診断してみました!・シリーズ1:【診断テーマ】「先生」から「経営者」へ ―経験ゼロからの学習塾経営を支援

文:山田 かすみ(中小企業診断士)松井 淳(中小企業診断士)遠近 浩二(中小企業診断士)原崎 崇(中小企業診断士)守井 浩一(中小企業診断士)

【第3回】情報整理

前述した調査結果をもとに、診断先の状況を3C分析で整理してみたところ、私たちの仮説を証明するさまざまな事実が見つかりました。

1.Customer(市場・顧客分析)

まずはK塾の市場や顧客についてです。私たちは先に示したとおり、地理的な情報と人口統計的な情報の可視的な把握を試みましたが、この結果、K塾の商圏に以下のような特性が見出されました。

  • 商圏内では人口は増加しており、特に年少人口(小中学生)の増加が際立っている。
  • 住民の平均所得が高い。
  • 商圏内に多くの女子校が存在する。

当初私たちは、当該地域は絶対的な人口は少なく学習塾の市場としてのポテンシャルは低いと見ていました。しかし、地域の人口動態を街区レベルまで丁寧に調査していくと、実はこの地域は再開発の影響で、年少人口が過去7年間で1.5倍に増加していることがわかりました。住民の所得の高さや女子校の存在なども加えると、この地域は実に魅力的な市場を有していたのです。

また質的な顧客分析として、顧客アンケートからK塾に対する顧客のニーズを抽出しました。

  • 受験、補習ともにきめ細かな指導を行ってほしい。
  • 家から近い場所で安心して子どもを預けたい。
  • 積極的に保護者とコミュニケーションをとってもらいたい。

1番目のニーズである授業の質の向上については、学習塾としてあらゆる塾に求められる本質的な要望といえます。当然、この部分の強化は必須であることには間違いありません。

特に受験や補習の個別対応の要望は、大手学習塾では不得手とする部分であり、パーソナルな対応が可能なK塾だからこそ、きめ細やかに対応できるニーズといえます。私たちはこのニーズから個別指導の強みを強化することで大手学習塾に対する優位性を築き上げるチャンスがあることに気づかされました。

また、「安心」や「コミュニケーション」といった2番目、3番目のニーズも、大手学習塾では難しいですが、K塾だからこそ求められる独特な要求といえます。ここでも「地域に根ざし顧客(保護者)との対話を深める」といった地域密着型を押し出すことで、大手学習塾に対抗できる強みを獲得できることがわかります。

このように、顧客の要望の裏には「K塾だからこそ求められる期待」が含まれているようです。私たちは顧客の声に耳を傾け、これに真摯に対応するだけでも、自らの強みが強化され競合に対する優位性が築けることを顧客アンケートから知ることができました。

2.Competitor(競合分析)

次に競合の状況を見てみましょう。競合の分布については、以下のような特性が見出されてきました。

  • 一次商圏(500m圏内)内には競合は存在しない。
  • 二次商圏(1km圏内)は大手塾・予備校の集積地帯となっている。

K塾は大手塾がひしめき合う二次商圏に隠れて、限られた狭いエリアながらも競合する地域型の学習塾が存在しない空白地帯に立地していました。これは、この地域の安全性の高さを考慮すると、家から塾までの距離を重視する顧客を独占することができることを示しています。

市場分析で判明したこの地域の市場としてのポテンシャルの高さといい、創業の地としてこの地を選んだオーナーの選択は正しかったといえます。

しかし、今後もこのような状態が続くとは限りません。地域の顧客ニーズに適合した学習塾を作り上げ、来るべき競合の進出を撃退する参入障壁を早急に築きあげる必要があるのです。

3.Company(自社分析)

自社分析としてK塾のリソースを見てみると、起業したてのK塾にとっては、すでに保有している経営資源はそう多くはないことがわかります。現有する経営資源を列挙するならば、オーナーの長年の講師業で培った指導ノウハウ、指導経験の長いプロ講師の存在、最大5組の個別学習が可能な教室、A社より引き継いだ10数名の生徒――といったところでしょうか。

しかしこれらの経営資源はK塾の創業には大きく貢献しましたが、これからもさらにK塾を発展へと導いていくには、資金・人材・実績・ブランドバリュー・組織的スキル等、まだまださまざまな経営資源が不足しているのが実態であるといえます。

こうした発展のために必要となる新しい経営資源を獲得するためにも、既存の経営資源を使って原資を稼いでいかなくてはなりません。今まで授業のなかった日曜日や、昼間の講義の開設など、現有経営資源の有効活用が必要になってくると思われます。

以上のような3C分析により、私たちはK塾の状況について「内部環境についてはまだ創業したばかりで満足な経営資源を備えていないものの、外部環境については有望な市場を持つ。今後の展開によっては、収益を改善し、事業を軌道に乗せることが可能である」と判断し、戦略策定に歩を進めていきます。