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メディアを診る・特別編 【第6回】ネイルサロン店長・さくらの読書成長記

文:渡辺 まどか(中小企業診断士)

自分に合ったビジネスモデル」でサロンを開こう!

『ネイルアートギャラリーティアラ』の新規ビジネス

ネイリスト歴5年目を迎えた東条さくらは、もうすぐ25歳になろうとしていた。ここ数年、E社のネイルサロンの店長としてだけでなく、大野部長の下でスーパーバイザーとして働くことで、ネイルサロン部門のマネジメントにもかかわってきた。

さくらには夢があった。自分のサロンを持つことだ。とは言え、簡単な話ではなく、初期投資としてそれなりのお金が必要だ。毎月のお給料から少しずつ貯金はしていたものの、いつになったら開業できる資金が貯まるかというと、検討もつかなかった。しかし、スーパーバイザーになってからは、その夢が実現可能なものとなった。なぜなら、大野部長から『ネイルアートギャラリーティアラ』の将来ビジョンを聞かされたからだ。

「ネイリストには、独立願望の強い人材が多い。だから、うちの社員たちの独立を支援する仕組みをつくる。いわゆる、フランチャイズビジネスだ」

この話を聞いたとき、さくらはワクワクした。

「大好きな『ネイルアートギャラリーティアラ』の看板がついたサロンを、自分がオーナーとして経営できるなんて、夢みたい!」

夢をかたちにするために--どんなお店を開きたい?

E社としても、『ネイルアートギャラリーティアラ』のフランチャイズ1号店は、何としても成功させなければならない。そこで、これまでの実績を買われたさくらが大野部長の推薦により、1号店のオーナーに決定した。つまりさくらは、E社を退職して経営者となるのだ。従業員を雇用する必要があるため、会社を設立してその社長になるという、さくらにとっては驚きの展開だ。会社設立にかかる諸費用は自己負担だったが、安いものだ。出店地は、都内駅ビルのリラクゼーションフロアに決定した。オープンまでの準備期間は、6ヵ月。基本的な店舗設計やサービス内容、メニュー構成は、『ネイルアートギャラリーティアラ』のままだ。だが、オリジナルメニューを提供することは許されている。

「さて、どんなお店にしよう?」

とある休日、さくらはいつものファミレスで1冊の本を熱心に読んでいた。『あたりまえだけどなかなかできない起業のルール』というものだ。最初は、ネイルサロンの開業に関するものを買おうと思っていたのだが、E社から全面的にバックアップを受けられるため、それは不要となった。そこで、あえて一般的な起業に関する知識を得るために選んだ本だ。最初にこの本を手にとったとき、表紙のオビに書かれていた言葉にさくらは共感した。

「どうせ一度の人生 自分の夢を仕事にしよう」

まさに、さくらの気持ちそのものだった。いつも以上に期待に胸をふくらませながら、さくらは読み進めた。

○起業のルール15 誰に提供するかを絞り込もう

○起業のルール26 自分の強みを見つけよう

○起業のルール29 自分に合ったビジネスモデルを考えよう

「あたしの強みって、何だろう?ネイリストとして5年、店長として4年、スーパーバイザーとして2年の経験があることかな。特にオーナーとして活かすべきは、部長から学んだマネジメントに関する知識だよね。じゃあ、ネイリストとしてはどうだろう?」

さくらは、就職先のサロンとして、『ネイルアートギャラリーティアラ』を選んだときのことを思い出した。

「あたし、ネイルアートが大好きだったから、このサロンを選んだんだ。それは、いまでも変わらない。いつだって最先端の技術を勉強しているし、新しいデザインを考えるのも得意。やっぱり自分のサロンにも、ネイルアートが好きなお客様にたくさんきてほしいな」

○起業のルール28 お客様目線で考えよう

「そう言えば、『全部の爪に派手なアートをしたいけど、そんなにお金がないからなかなかできない』っていうお客様がいたな。それに、『凝ったアートになると、時間がかかるから疲れちゃう』なんて声も聞いた。これを何とかできないかな」

いままでのお客様の声から、自分のサロンのコンセプトが打ち出せそうな気がして、さくらは真剣に考えた。

「たくさんアートをしたい。だけど、お金と時間が限られているから、やりたくてもなかなかできない。あたしもこんな思い、したことあるような...」

たくさんやりたいけど、お金と時間のせいでなかなかできないこと--。しばらく考えあぐねたさくらだったが、ふとひらめいた。

「そうだ!高級グルメを食べに行くことだ!!美味しいものを食べに行くのは大好きだけど、いくらかかるかわからないと、不安で行く気になれない。それに、食べたいものがあるお店を探すのも予約をするのも面倒だ。だからいつも、美味しいものを食べたいときはついつい、バイキングを選んでしまう」

○起業のルール18 2つ以上を合わせて、新しいビジネスを考えよう

「ネイルアートとバイキングって、組み合わせられるかな?たとえば15分コース、30分コース、60分コース、90分コースという時間別のメニューを用意して、その時間内ならネイルアートをし放題なんてどうだろう?」

さくらは、これがとても素晴らしいアイデアに思えて仕方なかった。自分の得意な技術を売りにしたサロンなので、強みを活かせる。それに、ネイルアートは利益率の高いメニューだ。そのネイルアートのバイキングなら、時間と価格が一目瞭然なので、お客様の悩みも解消できる。

翌日、さくらはこのアイデアについて、大野部長に相談してみた。すると、部長も賛成してくれた。そればかりか、店名を『ネイルアートギャラリーティアラ--バイキングスタイル』とするようにすすめてくれたのだ。だんだんと自分の夢がかたちになっていく感覚を、さくらは味わっていた。

いざ、オープン!

あっという間に、6ヵ月が経った。いよいよ明日、『ネイルアートギャラリーティアラ--バイキングスタイル』がオープンする。準備期間中は、考えられる限りのできることをやった。

○起業のルール35 事業計画はたくさんの人に見てもらおう

大野部長からアドバイスをもらい、苦労してつくり上げた事業計画書は、たくさんの人に見てもらった。家族や友人はもちろん、鎗田あゆみや幸田瑞穂をはじめとするスタッフのみんな、綾瀬ひかるをはじめとする『ミラクルビューティーアベニュー』の仲間たち、研修会社M社などの社外で面識がある人たちなど、誰もが一様に応援してくれた。さらには、マーケティング部の紹介により、オープンに先駆けて雑誌掲載の段取りをしてもらえたし、M社からは起業までの体験談をテーマとしたセミナーのオファーももらえた。

自分がつくった事業計画書を周りに見せるのは、最初は気が引けた。だが、大野部長の太鼓判をもらえたため、勇気を持って本に書いてあるとおりに実行したのだ。すると、驚くほど多くの人が喜び、賛同してくれた。

「オープンしたら、すぐ行くね!」と言ってくれた友人たち。「友だちにも宣伝しておくね」と言ってくれた『ミラクルビューティーアベニュー』の仲間たち。「今度、お客さんとして遊びに行きます」と言ってくれたスタッフたち。どれも、涙が出るほど嬉しかった。

「こんなにたくさんの人が応援してくれているんだから、きっと大丈夫!」

 オープンを前にして、さくらは『ネイルアートギャラリーティアラ--バイキングスタイル』の成功イメージをリアルに描いていた。

『あたりまえだけどなかなかできない起業のルール』

【今回の1冊】

『あたりまえだけどなかなかできない起業のルール』

四ツ柳茂樹[著]
明日香出版社 2009/11

起業は選択肢の1つにすぎず、特別なことではない。何度でも、誰でも挑戦できる。本書では、コンサルタントとして、2,000人以上の起業家にアドバイスをしてきた著者が説く、成功する起業のために必要な101のルールがわかりやすく紹介されている。その内容は起業までの準備にとどまらず、起業後にやるべきこと、事業を成長させるために必要なこと、うまくいかなかったときの考え方など、非常に実践的。著者自身も起業家であり、中小企業診断士でもある。