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事業再生にかかわる中小企業診断士の在り方を知る

文:鈴木 佳文(中小企業診断士)

『生かし屋―再生コンサルタントの苦悩』を読む

事業再生にかかわる前の入門書

本書は、事業再生にかかわろうとする中小企業診断士が、「入門書」として活用するのに適しています。事業再生に関する書籍は、理論・ハウツー・事例集と幅広く出版されており、この分野に初めて触れる人にとって、良書を探すのは至難の業です。そんな中、本書で事業再生の実態についてある程度把握しておくと、専門知識をインプットする際に大きな助けとなります。特筆すべきは、事業再生コンサルタント8名の生の声が取り上げられ、コンサルタントとしての在り方が透けてみえてくる点です。これから事業再生にかかわろうとする方にとっても、すでにかかわっている方にとっても、自身の「在り方」を考える時間をとることは、決してムダにはならないでしょう。

中小企業診断士の必修科目

中小企業診断士として、事業再生に関する知識は、ある意味で必修科目と言えます。経営コンサルタントとしての専門領域に加えるかどうかは別にして、「シャッター通りになる危機を迎えた商店街」、「事業承継に悩む経営者」など、事業再生にかかわる知恵の応用範囲は広く考えられるからです。本書のテーマは事業再生ですが、この中で語られている企業内外での利害関係者間のコンフリクトは、再生対象の企業でなくても発生しうるものです。つまり、本書に目を通しておくことで、顧問先で起こりうる問題をリアルにイメージできるわけです。また、事業再生の定義などについても解説コラムが設けられていますので、自身の知識を補完するヒントとして活用できます。

経営者としての姿勢を見直す

本書に登場するクライアントは、「一生懸命事業に取り組んできたのに、倒産の危機に陥った」企業です。つまり、登場する経営者と同じことをしていれば、同様の立場になる可能性があるという点で、「経営者に対する警告の書」とも言えます。「対岸の火事」と眺めるのではなく、「転ばぬ先の杖」として本書を活用してもよいでしょう。難解な専門書と違い、高度な知識を有していなくてもスラスラ読めますので、経営者としての姿勢をあらためて考えるきっかけにもなります。

経営コンサルタントとしての「在り方」を考える

筆者が語る本書の軸は、「事業を生かすことと、人を生かすことは別である」という点です。私たちが事業再生に抱くイメージは、「瀕死の企業を甦生させる」というものですが、「生かし屋」たちがフォーカスしているのは、その事業にかかわる人をどのように生かしていけるか、ということです。特にお金にかかわる問題がクローズアップされる再生現場にあって、「経済合理性」ではなく「かかわる人々の幸福」を意識しようとしている点に、経営コンサルタントとしての「在り方」を考える本質があるように思うのです。

『生かし屋―再生コンサルタントの苦悩』

『生かし屋―再生コンサルタントの苦悩』

大熊 康丈他 [著]
四六判・171ページ
定価:1,890円(税込)
株式会社同友館刊 http://www.doyukan.co.jp/store/item_046223.html