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この1冊をつねにデスクの側に!

文:大石 幸紀(中小企業診断士)

『Q&A中小建設業の経営改善ハンドブック』を読む

建設業の特性を超えるために

建材メーカー出身の私は、中小・中堅建設業の経営相談に応じることが多くあります。相談内容は多岐にわたり、そのつど、みずからの経験や書籍などを調べることで対応してきました。

建設業の経営に係る特性や特有の制度、商習慣は、他の業種と異なる独特のものがあります。他で有効な改善施策が、建設業においても必ずしも有効とは限りません。そのため私は、建設業の経営に特化した参考文献、それも経営者側からの視点にとどまらず、支援者側からの視点も踏まえた文献をつねに求めていました。

建設業界を支援するための実践的マニュアル

国土交通省では、平成17年度から「建設業経営相談事業(ワンストップサービスセンター事業)」を行っています。この事業は、建設業経営者の相談に応じて建設業経営の最新情報や関連機関の紹介を行うほか、中小企業診断士や税理士などがその職務を担う「建設業経営支援アドバイザー」を派遣するものです。

本書の筆者は、後藤吾郎氏、吉永茂氏という公認会計士・税理士に加え、藤井一郎氏、藤原一夫氏、矢口季男氏、山北浩史氏といった、建設業経営支援アドバイザーとして日々、建設業経営の相談に対応している中小企業診断士の方々です。そのため本書は、実戦の中でアドバイザーが触れた相談内容と、それに対する彼らの経験や知識が導き出したベストアンサーが網羅的にまとめられた実践的マニュアルとなっています。

また、本書の特色がもっとも出ていると思われるのが、「新分野進出のポイント」というテーマが2番目に掲げられていることです。通常の経営書では、現在の事業領域における改善・革新手法に記述がとどまっているのに対し、現在のわが国の建設業が抱える構造的な問題を踏まえたうえで、欠かせない新分野進出の視点が掲げられているのは、建設業の声に多く接するアドバイザーを中心に執筆されていることの証でしょう。

経営支援専門家に対する需要と供給のギャップを埋める

全産業就業者数に対し、建設業の就業者数は537万人と、8.4%(平成20年)を占めています。また、国内総生産(GDP)に占める建設投資の割合は9.4%(平成19年)となっています。いずれも約1割で、建設業の果たすわが国経済の発展と雇用の安定に寄与する貢献度が、依然として大きいことがわかります。

一方、中小企業診断士をはじめとする経営支援専門家のうち、建設業を支援対象としている方は1割いるでしょうか。おそらく、建設業界に精通する経営支援専門家は、その需要に対して不足しているのではないかと思われます。本書は、建設業界の経営支援専門家に対する需要と供給のギャップを埋めるのに貢献する1冊である、と確信します。一度読んで書架にしまう本ではなく、つねにデスクの側に置き、手を伸ばせるようにしておくべき指南書です。

『Q&A中小建設業の経営改善ハンドブック』

『Q&A中小建設業の経営改善ハンドブック』

建設業経営支援研究会[著]
(財)建設業振興基金[編著]
B5判・320ページ
定価:2,625円(税込)
清文社刊 http://www.skattsei.co.jp/