本文とサイドメニューへジャンプするためのナビゲーションスキップです。

経営コンサルタントの国家資格”中小企業診断士”の情報が満載です。 中小企業診断士の広場

中小企業診断士の広場

メディアを診る

企業の社会的責任(CSR)について考える

文:大石 幸紀(中小企業診断士)

『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』

「ソーシャルイノベーション」とは

「ソーシャルイノベーション」という言葉をご存じでしょうか。従来「イノベーション」という言葉は、企業活動にかかわる言葉として使われることが多く、その動機は「利潤最大化」でした。これに対し、「ソーシャルイノベーション」の動機は「社会ニーズ」であると説明されています。つまり、社会の抱えるさまざまな問題(治安、失業、貧困、環境...)を解決するために必要とされる、「新しい社会的商品やサービスやその仕組みの開発」を示している概念なのです。

有名な例としては、ノーベル平和賞受賞者であるムハマド・ユヌスの創設した「グラミン銀行」があります。故国バングラディシュの目を覆いたくなるような貧困を解消するため、彼は貧困層向けに「マイクロクレジット(少額無担保融資)」という金融サービスを開発しました。この「マイクロクレジット」を提供している「グラミン銀行」は現在、30年余の歴史を持ち、250万人以上(借り手はすべて貧困層)に融資を実施しています。彼の活動により、1日の収入がたった2セントという極貧層の人々の生活が、劇的に改善したのです。

昨今、CSR(企業の社会的責任)として「ソーシャルイノベーション」に関与する企業が増えています。たとえば、日用品多国籍企業ユニリーバのインド法人による「プロジェクト・シャクティ」。この取組みは、インド農村地帯の「衛生状態」、「貧困・雇用状態」を大きく改善しました。また、デュポン・カナダ社は、ソーシャルイノベーションの成功要因を研究するため、カナダのマギル大学と共同で「マギル-デュポン・ソーシャルイノベーション・シンクタンク」を設立しました。 ほかにも、さまざまな取組みが現在進行形で展開されています。「ソーシャルイノベーション」は、これからのCSRの方向性として、重要なキーワードになってくるかもしれません。

「複雑系」を理解する

本書の執筆は、上記の「ソーシャルイノベーション・シンクタンク」を率いるフランシス・ウェストリーらによるものです。「ソーシャルイノベーション」のさまざまな事例を紹介しながら、その成功要因を説明しています。

事例を読むだけでも、「ソーシャルイノベーション」の実態を理解し、その変革者の熱気や達成内容の大きさに深い興味を覚えることができると思います。変革者の顔ぶれが、学者やロックスターから町の牧師、主婦までさまざまであることも面白い点です。

また、本書では成功要因を説明するうえで、「複雑系」の理論を挙げています。社会を動かすということは「人」を動かすことであり、変革者と「人」の間には必ず「相互作用」が発生します。「相互作用」がある以上、料理のレシピのように毎回同じ結果を得られるような処方箋はありません。そこで、「複雑系」の理論が登場するのです。

ところで、「ソーシャルイノベーション」の「ソーシャル」とは何でしょうか。日本語に訳せば、「社会」です。ただ一口に「社会」といっても、地球規模の大きな社会から小さな村社会まで、さまざまな「人の集まり」があります。その概念からすれば、中小企業の経営者や従業員も1つの立派な「社会」です。「ソーシャルイノベーション」の手法は、中小企業経営にブレークスルーを生み出したいときにも活用できる概念だと考えられます。

『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』

『誰が世界を変えるのか ソーシャルイノベーションはここから始まる』

フランシス・ウェストリー、ブレンダ・ツィンマーマン、マイケル・クイン・パットン、エリック・ヤング[著]、東出 顕子[訳]
A5判・288ページ
定価:1,995円(税込)
英治出版刊 http://www.eijipress.co.jp/guide/2036.php
このページの先頭へ