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CSR実践へのベストプラクティス

文:山崎 文(中小企業診断士)

『社会的責任のマーケティング』

「事業の成功」と「CSR」を両立するための戦略

「CSR」という言葉は知っていても、実際に企業がどのような取組みをしているか、すぐに思い浮かべることができますか?

いまや大企業はもちろん、中小企業にとってもCSR(企業の社会的責任)は意識せざるを得ない課題であるといえましょう。実際に地域社会への貢献活動を行っている中小企業は少なくありませんし、その多彩な取組みには参考になる事例も多く見受けられます。

社会的責任に対する企業の考え方は時代を経て変化しており、本書の「『事業の成功』と『CSR』を両立する」というサブタイトルのとおり、現在では単なる社会的貢献というだけでなく、同時に事業へも貢献をもたらす取組みが求められているようです。本書では、企業がその両立のために行っている戦略的なアプローチを事例とともに解説しています。

よって、いまから社会的取組みを始めようとしている企業の経営者、実務家の方にも、その考え方は大いに参考となるのではないでしょうか。

主要な6つの取組み

本書では、社会的責任に関連する活動の中で、主要な取組みを6つ挙げています。

      1.コーズ・プロモーション:社会的なコーズ(主張)に対して意識と関心を高めること
      2.コーズ・リレーテッド・マーケティング:製品の売上げを通してされる社会貢献
      3.ソーシャル・マーケティング:行動改革キャンペーンの支援
      4.コーポレート・フィランソロピー:コーズに対する直接的な寄付活動
      5.地域ボランティア:従業員は自らの時間と能力を提供している
      6.社会的責任に基づく事業の実践:コーズを支援するための自主的な事業活動と投資

これらの取組みの解説には、潜在的な課題やベネフィットといった説明のほか、50社以上の大手企業を対象にリサーチを行った豊富な事例が掲載されています。アメリカン・エクスプレス、サブウェイ、マイクロソフト等、なじみのある企業が多く、その活動内容も上記6つの取組みに分類されているため、各企業の方向性の違いも明確で興味深いといえます。

25のベストプラクティス

ここでは、「取り組むべき社会問題を選択するため」といった4つの目的別に、「自社が事業を行う地域社会において関心が高い問題を選択する」、「長期的に支援可能なコーズを提案する」等、25のベストプラクティスが示されています。わかりやすくシンプルに書かれているのでサラリと流してしまいがちですが、リサーチでのインタビューをもとにした得がたいアドバイスといえるでしょう。

「本書の目的は、企業の社会的責任に関する意思決定を助けること」と著者は述べています。企業の内部でその意思決定に携わる方はもちろん、企業からの支援を求めている非営利団体の方、あるいは企業を外部から支援する立場の方等、社会的取組みにかかわる人にとって画期的な書といえそうです。

『社会的責任のマーケティング』

『社会的責任のマーケティング』

フィリップ・コトラー、ナンシー・リー[著]/恩藏 直人[監訳]
A5判・376ページ
定価:3,570円(税込)
東洋経済新報社刊 http://www.toyokeizai.net/shop/books/