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メディアを診る

商業者には絶対に読んでもらいたい

文:村橋 保春

『商人道』/『入りやすい店売れる店』

商人の基本を確認する

全国の商店街が衰退しているといわれて久しい。元気な商店街として取り上げられる商店街も、実際に現地に出向くと人がまばらで様子がおかしい。お店の人に聞いてみると、にぎやかなのはイベントを行ったときだけ。イベントの賑わいを根拠に元気な商店街といわれるけど、自分たちは決してそうは思えない。売上も、お客様の人数もずっと厳しい状況だからね。といった話を伺う。

確かに、少子高齢化が進み、小売販売額は減少傾向にある。郊外の大型店の影響も受けていると思う。しかし、商店街自身に問題はないのだろうか。

商業者、商人、商売人。商業の賑わいは、お店(店舗施設)、商品(商品政策)も重要な要素であるが、第一の要素は商業者ではないだろうか。いくらいい商品を仕入れ、きれいに陳列したところで、お客様のことを考えふさわしい商品を買っていただこうと考える商業者がいなければ、お客様は買ってくださらない。売れないことをお客様やライバルの店の責任と考える商業者は商業者でない。そろそろ、真の商業者による商店街の復活を考えていただきたい。

今回は2冊の本を紹介する。いずれもぜひ読んでいただきたい。商業者の方々には、絶対に読んでいただきたい。

一冊目は『商人道 商は笑にして勝なり』である。現在、品切れ重版未定である。しかし、インターネット等で中古商品の購入が可能である。

本の帯には「あきんどに常禄なし、稼ぐは一生のつとめなり」とある。このフレーズだけで、全てを語りつくしていると考える。商業者はどこそこのお店に客を取られたといって、経営の厳しさを話す。でも、少し考えてもらいたい。お客様はお店に縛り付けておくことができるだろうか。お客様は何より移り気である。ずっとお店に来ていただいていても、少し気に入らないことがあったり、より素敵なお店が見つけたりしたら、とんと立ち寄ってくださらなくなる。商業者に既得権は無い。つまり、あきんどに常禄は無い。そう考えると、商業者は常に工夫をしなければならない。日々の工夫に基づいて、こつこつ売上をあげなければならない。商業者にとって、稼ぐは一生のつとめなのである。商店街の関係者がこの商人の基本を思い出し、仕事の進め方を変えてもらえれば、状況はかなり改善されると考える。

本書は、これ以外にも商売の本質を突く名言が数多く載っている。例えば、「商人と屏風は曲がらねば立たぬ」、「商いは牛のよだれ」、「無慾萬両」、「知足安分」などなど。ぜひとも本書を手に入れて、これらの言葉をしっかり味わってもらいたい。

はやらないお店はお店に理由がある

以前、ラーメン店の店主と話す機会があった。近くに人気のラーメン店ができ、めっきり客が減ってしまった。これではいけないと、店内にお客様がいないときには、店頭に立って人の往来を見ていたという。店主が店頭に立っているときは一人としてお店に入ってきてくれるお客様がいなかった。さて、どんな風に店頭に立っていたのか伺うと、腕組みをして立っていたという。

店主は武道家を思わせる体格のいい人である。顔も迫力がある。そんな店主が店頭で腕を組み仁王立ちして、それをかいくぐり店内に入るお客様がいるだろうか。店主は大いに客数減少に貢献していたわけである。

これほどひどくは無いが、商店街のお店はお客様の目線で、どうすれば気軽に来店してくれるかについて考えているのか、疑わしく思うことが多い。これも商業の基本を見失っている代表例である。

今回紹介する2冊目の本は『入りやすい店売れる店』である。初版は1986年。ロングセラーとして売れ続けている。イラストも多く、すぐにお店で活用できる内容に富んでいる。この本に示されたヒントを、少しお店で実践するだけで必ず売上が上がるはずである。商店街の全部のお店で1冊ずつ買い、書かれたヒントを競って実践すれば、商店街は相当元気になるはずである。特効薬にもなるし、体質改善の漢方薬としても機能する。それほどすばらしい本である。

商人魂を思い出す

商業者に不足しているのは何であろうか。商人の本性、商人魂ではないだろうか。この魂は、『商人道』を読むとふつふつと湧きあがってくる。

商人魂を思い出した商業者は何から取り掛かればいいだろうか。それが『入りやすい店売れる店』である。できることから順番にやってみる。お店の変化に、自ら驚くことになると思う。

この2冊は、商業者の方々と話す機会があれば、必ず紹介している。ぜひ読んでほしい。お店を元気にする魔法の2冊である。

『商人道 商は笑にして勝なり』

『商人道 商は笑にして勝なり』

藤本 義一[著]
282ページ
定価:667円(税込)
日経ビジネス文庫刊 http://www.nikkeibook.com/business_top.php

『入りやすい店売れる店』

『入りやすい店売れる店』

馬渕 哲/南條 恵[著]
272ページ
定価:648円(税込)
日経ビジネス文庫刊 http://www.nikkeibook.com/business_top.php