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まちは市民の息遣いで変わる

文:村橋 保春

『富良野笑市民ライフ』

まちのポテンシャルが本書を作った

楽しい本である。どこから読んでもいいし、どこを読んでも肩が凝らない。一つ一つの文章は短く、リズム感がある。ただ読みやすいだけではない。多用される北海道弁は適度のフックとなって、読み手を文章にひきつける。

著者は、富良野市で活躍する青果会社の経営者であり、商工会議所で重責を担う。こうした洒脱な本をなぜ表すことが出来たのか。著者自身と富良野というまちに理由があると考える。

著者は富良野に生まれ、東京の大学に進み、30歳前半まで内地(北海道弁で北海道以外の国内をいう)で仕事をした。ふるさとを一度離れ、外からしっかりとふるさとを見て、ふるさとに戻ってきた。主観的、客観的の両方の視点を持つことが出来たわけである。

何事にも好奇心を持ち、出来ることは率先して関わろうとする姿勢は本書のそこかしこから読み取ることが出来る。会社経営のほかに、ふらの演劇工房、富良野塾、インターネット富良野、ラジオふらのなど、その活躍のフィールドはすこぶる広い。早い時期に富良野をテーマとするWEBサイト(サラダハウス)を立ち上げ、人気サイトとなっている。サイト上の文章は、読みやすさ、わかりやすさが求められる。本書の軽妙な文章は、サイト上で自己鍛錬した結果であろう。

富良野のまちは、まちづくりの関係者からうらやましがられる存在である。まちのイメージがいい。北海道のまちの多くは、全国的にも好ましいイメージで捉えられる。富良野はそうした北海道の中でも抜きんでて好ましいイメージで捉えられている。ドラマ『北の国から』の影響は大きい。作者の倉本 聰は数年置きに富良野を舞台とするドラマを作り、その都度多くのファンを魅了する。常に、富良野というまちのブランド性は高まっていく。

しかし、富良野のまちは単にドラマに負ぶさっているだけでなく、いろいろな努力、工夫を重ねている。富良野の野菜は京野菜と一位、二位を競い合うブランドにまで成長させている。美瑛をはじめとする隣接の自治体と連携して、スキー場やラベンダー畑など拡充を図っている。

本書は著者のパーソナリティと富良野というまちのポテンシャルの両者があって成り立ったといえる。まちの風物も、登場人物も、この小さな町にあふれんばかりに盛りだくさんである。それぞれが好ましく関係しあっている。こうしたまちのポテンシャルを、著者のパーソナリティが見逃すことなく掘り起こし、楽しく味付けしてまとめている。読んでいてクスリと笑ってしまった文章を、再度読んでも笑ってしまった。著者の術数に嵌ってしまった。

まさに富良野"笑"市民ライフなのである。

市民の意思がまちを変える

本書では、まちづくりを大上段に構えて語ってはいない。しかし、市民の元気な息遣いが伝わってくる。富良野は全国から注目されることで、市民は注目に恥ずかしくないまちにすべく努力し、その努力が再び全国から評価される。良循環に回っているといえる。

富良野では多くの市民がいろいろな場面でまちづくりを語り合っている。自らのまちを誇りに思い、昼間も、"夜な夜な"も、まちを素材にあちらこちらで風論談発、そうした中から新たな富良野のまちのあり方が見えてくる。

富良野では、観光地ばかりでなく、市街地にも観光客を引き入れようといろんな計画が考えられている。富良野の特産を、市民にも、観光客にも提供できる施設の構想も進んでいる。本書に登場する人たちが、富良野を愛し、富良野で活動する限り、もう一歩進んだ富良野を見ることが出来ると期待している。

市民の意思がまちを変える。そんな印象を、本書から感じる。

『富良野笑市民ライフ』

『富良野笑市民ライフ』

伏田 良[著]
224ページ
定価:1,000円(税込)
フォレスト出版刊 http://www.forestpub.co.jp/